2016年1月24日日曜日

新規採用教員の社会人比率の変化

 1月19日のニューズウィーク記事にて,中学校教員の社会人経験の国際比較をしました。OECDの国際教員調査(TALIS 2013)のローデータから作ったデータですが,こういう統計は珍しいからか,見てくださる方が多いようです。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/01/post-4389.php

 分かったのは,日本の教員の社会人経験(教育職以外の職の経験)が,国際的にみて少ないことです。その逆がアメリカ。この大国では,中学校教員の3人に1人が社会人経験10年超で,教員経験より社会人経験のほうが長い者も,同じくらいいます。

 アメリカでは職業移動の機会が開かれていますが,こういうお国柄が出ていますね。確かに,この国の教員に前職を尋ねると,「コック」とか「運転手」とかいう答えがポンポン返ってくるといいます。学校が実社会の縮図に近いようです。生徒に対する進路指導も,さぞリアリティのあるものでしょう。

 対して日本では,社会人経験ゼロの教員が8割。平均経験年数はわずか0.8年(アメリカは8.0年)。デューイ流にいうと,学校が「陸の孤島」になっているような事態です。

 これは国際比較の知見ですが,今度は時代比較によって,日本の「今」を性格づけてみましょう。公立学校の新規採用教員に占める,社会人経験者比率の推移をたどってみます。

 文科省の『学校教員統計調査』では,調査年の前年度間の新規採用教員数を集計し,採用前の状況とのクロスもとっています。最新の2013年調査によると,前年の2012年度の公立小学校新規採用教員(本務教員)は17223人で,そのうち採用前の状況が「民間企業」というカテゴリーの者は275人となっています。よって,社会人比率は後者を前者で除して,1.60%となります。中学校は2.23%,高等学校は3.52%です。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kyouin/1268573.htm

 少ないのは予想通りですが,この値は時系列的にみてどう変わっているのか。上記資料のバックナンバーに当たって分子・分母の数値を採取し,70年代半ば以降の推移を整理してみました。今は,文科省統計のバックナンバーは軒並みネット公開されていますので,とても便利。いちいち図書館に出向き,あの分厚い冊子をくくる必要はありません。

 結果は,下表にまとめました。本調査は3年おきの実施ですので,3年間隔の統計になっています。1979年度は,公開されているPDFの数値が判別不能でしたので,ペンディングにしています。


 最下段の社会人比率をみると,2012年度は校種を問わず,観察期間中で最低となっています。小・中のピークは2006年度,高校は2003年度であることから,ここ数年の減少が著しいことが知られます。

 上表は,本務教員としての採用者のデータです。教員の非正規化が進んでいますが,民間経験者を本務教員ではなく,非正規(臨時)で雇う動きが強まっているのでしょうか。詳しい事情は分かりかねますが,「おや」という傾向です。

 近年,生徒の職場体験学習やインターシップを推奨したり,保護者や地域住民の意向を学校運営に取り入れる実践(学校運営協議会)がされたりしていますが,教員集団と外部社会の敷居は高くなっている,ということでしょうか。

 まあ,大阪市の民間人校長の不祥事続発などもあり,やみくもな社会人登用には慎重論も出るでしょう。ニューズウィーク記事の最後に書きましたが,日本のデータで,社会人経験ありの教員とそうでない教員を比較すると,職業満足度や職務上の有能感は前者のほうが高くなっています(有意差はなし)。

 進路指導などでは,両群のパフォーマンスの差はもっと大きいと思われます。こういう比較研究は,寡聞にして存じません。こういうデータも,学校に外の風を入れるのを支持する,エビデンスとなるでしょう。今後の重要な課題だと思います。

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