2016年1月8日金曜日

労働者の過不足DI

 人手不足が叫ばれるようになって久しいですが,その程度を可視的に測る指標があります。タイトルに記した,労働者過不足DIというものです。

 労働者が不足の事業所割合から,過剰の事業所割合を差し引いて出されます。厚労省が3か月おきに実施している『労働経済動向調査』では,常用労働者30人以上の民間事業所に対し,労働者の過不足状況を尋ね,このDI指数も算出されています。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/43-1.html

 最新の2015年11月調査によると,常用労働者が不足していると答えた事業所は41%,過剰と答えた事業所は3%です。よって過不足DIは,前者から後者を引いて38ポイントとなります。近年の人手不足の状況が「見える化」されますねえ。

 時系列推移をたどると,近年の特徴がはっきりします。下図は,1999年2月から2015年11月までのDI指数の推移をグラフにしたものです。


 1999年はどの月もマイナスになっていますが,これは,労働者が不足の事業所よりも過剰の事業所が多いこと,つまり「人余り」の状況を意味します。

 97年に山一証券が倒産,翌年に経済状況が急激に悪化し(98年問題),自殺者が年間3万人を突破。その余波があった頃です。私は99年に大学を卒業しましたが,当時の状況の厳しさは肌身をもって知っています。われわれの世代が,ついてない「ロスジェネ」といわれる所以です。

 その後は団塊世代の定年退職もあり,DIはプラスに転じます。2009年に再びマイナスになっていますが,これは前年のリーマンショックの影響でしょう。

 しかしその後は,人手不足の企業が増える一方で,2015年11月の過不足DIは過去最高の38ポイントに達しています。団塊世代の退職はもっと前でしたが,震災復興やオリンピックに伴う建設需要,高齢化による介護需要などが高まっているためです。

 次に,2015年11月の過不足DIを産業別にみてみましょう。人手不足が激しいのは,どの産業か。言わずとも知れたことですが,データを出してみましょう。常用労働者という括りは広すぎるので,正社員とパート労働者に分けてみます。

 横軸に正社員,縦軸にパート労働者の過不足DIをとった座標上に,14の産業を配置すると,下図のようになります。点線は,全産業のDI値を意味します。


 右下にあるのは,正社員の不足が著しい産業です。医療・福祉や建設は,このゾーンにあります。人は欲しいが,相応のスキルのある人でないと困る。建設業なら,クレーンを動かせる人が欲しいと。「求める人がこない」タイプです。

 左上は,パート労働者の不足にあえいでいる産業。飲食や小売業(コンビニなど)は,このタイプです。資格やスキルがなくてもこなせるが,「人がこない」タイプ。最近,こうした産業のパートには,外国人が増えてきています。2015年の『国勢調査』から分かる,就業者の外国人比率はどうなっているか,見ものです。

 運輸・郵便業は,正社員とパートの双方の不足が著しいと。トラックやバス運転手の不足は,よく指摘されるところです。

 正社員とパートの過不足DIを全産業でみると,今年以降は,前者のほうが高くなっています。人手不足は,ただ人が来ないというのではないく。即戦力となる人を採れない問題であると。それだけに,教育の職業的レリバンス強化の必要を感じます。高校段階における,工業科や福祉科の拡充など。これらの学科の正社員就職率が高いのは,昨年の12月27日の記事でみました。

 といっても,時代の要請に即応する知識やスキルほど,状況の変化に弱い面もあります。産業界から歓迎される即戦力と同時に,汎用性の高い一般知識・スキルも身に付けさせる。それと,生涯にわたって学び続けるという構えも。この按配をどうとるか。普通教育と専門教育が同居する,中等教育の一番難しいところです。

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