今朝の朝日新聞に,「大学生,奨学金よりバイト頼み 卒業後の返済大変」と題する記事が載っています。
http://www.asahi.com/articles/ASJ4M2H4CJ4MUTIL002.html?iref=comtop_list_edu_n01
高等教育段階となると,どの国でも奨学金制度が設けられていますが,わが国のそれは,よく知られているように「実質ローン」。返済義務のある借金です。
よって,卒業後の返済負担を考え,利用を控え,無茶なバイトに従事すると。「奨学金が結婚の足かせに」「奨学金を借りている人との交際を親に禁じられる」という話を聞きますが,奨学金という借金が,後々のライフイベントに負の影響を及ぼすのは確かです。
奨学金というと聞こえはいいですが,これでは,利用を躊躇するのも分かろうというものです。奨学金の機能不全。なぜこういう病理が起きているかといえば,国が教育のカネを使ってないからでしょう。
昨年の11月26日の記事でみたように,教育への公的支出額の対GDP比は,日本は3.5%で,OECD加盟国の中で最下位です。これが教育費の高騰をもたらし,教育機会の不平等,さらには出生率の低下を引き起こしているといえます。データを示すまでもなく,夫婦が出産をためらう最大の理由は「教育費が高いこと」です(厚労省『出生動向基本調査』2010年)。
はて,教育費支出の対GDP比は,各国の出生率とどう関連しているか。こういう基本的なデータをまだ作っていませんでした。総務省『世界の統計2015』から,国別の合計特殊出生率(女性が生涯に生む子どもの平均数)を拾い,上記の記事のデータと絡めてみました。
下に掲げるのは,双方の数値が得られた30か国の散布図です。
攪乱はありますが,教育費支出が多い社会ほど,出生率が高いという,うっすらとした傾向がみられます。相関係数は+0.439で,30というデータ数を考慮すると,5%水準で有意です。
しかしここで注視すべきは,相関云々ではなく,2つのクラスターが析出されることでしょう。教育にカネを使い,出生率が高い社会と,その逆の社会です。日本は,後者に含まれてしまっています。
しかしまあ,割れるものですね。「日本は子どもが少ないので,教育費支出が少ないのは当たり前だ」といわれますが,それを口上にして,事態を放置していてよいはずはありません。まずます少子化が進み,社会の維持・存続が脅かされることになります。
一昨日の5日は「子どもの日」で,子どもの数が過去最低というデータが各紙で報じられました。それもいいですが,上記のような統計的事実にも注意する必要があるかと思います。