2016年6月29日水曜日

寿命の量と質

 『週刊東洋経済』の最新号にて,健康格差の特集が組まれています。この問題には関心があるので,キンドルで買っちゃいました。600円と,紙冊子よりちょっと安くなっています。

 今は雑誌も電子化されており,便利になったものです。雑誌は薄いので,すぐどこかに紛れ込んでしまうのですが,キンドルなら保存にも便利です。

 いろいろ興味深いデータが提示されていますが,私が最も関心を持ったのは,県別の寿命のデータです。「別に珍しくないじゃん」と思われるかもしれませんが,よく使われる平均寿命(0歳時点の平均余命)に加えて,健康寿命という指標も比較されています。

 健康寿命とは,介護などを受けず,字のごとく健康に生きられる期間のことです。紹介されている県別のデータをみると,平均寿命が最も長い,つまり日本一の長寿県は長野ですが,この県の健康寿命は18位と,順位はあまり高くありません。

 寿命が長くとも,身体が不自由な状態で過ごす期間が長い,ということになります。適切な言い方か分かりませんが,寿命の量(長さ)だけでなく,質も併せて観察する必要性を感じます。

 寿命の質を測る指標として,「健康寿命/平均寿命」というのはどうでしょう。言葉でいうと,人生全体のうち,健康な状態で生きられる期間は何%かです。ひとまず,健康期間率とでも呼んでおきましょう。

 私は47都道府県について,寿命の量を表す平均寿命と同時に,質の面の指標として,この健康期間率(健康寿命/平均寿命)を計算してみました。平均寿命は2010年,健康寿命は2013年のデータです。前者は厚労省『都道府県別生命表』,後者は厚労省の専門研究会の資料から得ました。

 下表は,47都道府県の平均寿命(a),健康寿命(b),健康期間率(b/a)の一覧表です。黄色マークは最高値,青色マークは最低値,赤字は上位5位を示唆します。地域差の大きい,男性のデータです。


 平均寿命の最高値は長野の80.9歳,最低値は青森の77.3歳です。健康寿命はそれとは異なり,マックスは山梨の72.5歳,最低は徳島の69.9歳となっています。上位(赤字)の分布をみても,平均寿命と健康寿命は順位構造が違っていることが分かります。

 両者の食い違いは,右端の健康期間率,健康で生きられる期間の割合の差となって表れています。山梨と長野を比べると,平均寿命は長野のほうが長いですが,寿命の質の指標の健康期間率は,その反対です。

 上表のデータを使って,寿命の量と質の関係を可視化してみましょう。下図は,横軸に平均寿命,縦軸に健康期間率をとった座標上に,47都道府県を配置したグラフです。


 ほう。寿命の長さと質は,相反する関係,逆相関の関係にあるようですね。相関係数は-0.528で,1%水準で有意です。

 右下の長野,滋賀,京都などは,長生きできるが,寝たきり等の状態で過ごす期間も相対的に長いと。左上の青森や秋田は,寿命は短いが「ポックリ」逝ける県ということになるでしょうか。

 東北県は,飲酒や喫煙の率が比較的高いのですが,寿命が短いのは,こういうことによるかもしれません。

 去年の2月に他界された亡き恩師は,ヘビースモーカーでした。私がD1のとき,奥さんにうるさく言われたとかで,禁煙されていたのですが,半年ももたないでまたスパスパ・・・。飲み会で,生意気な院生どもがそれを糾弾すると,「長生きなんてしたって,しょうがないよ」と笑っておられました。結果的にそうなったのですが(70歳で逝去),悔いはなかったであろうと,末期の心境を勝手に察しています。

 多くの方がそうでしょうが,私は,不健康な状態で生き長らえたくはないです。ポックリ逝きたい。上記のグラフでいうと,左上の社会も悪くないかな,と思います。「ポックリ」のレベルを測る指標として,健康寿命を総寿命で除した「健康期間率」というものを考えてみた次第です。

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