2016年6月21日火曜日

若者の親同居率の国際比較

 一昨日のキャリコネニュースの記事によると,世界中で親と同居する若者が増えているそうです。
http://blogos.com/outline/180054/

 提示されているデータによると,日本の20~34歳の親同居率は48.9%にもなるとのこと(2012年)。親同居の学生が多い20代前半を含むという理由もあるでしょうが,若者の親同居率が半分近くにまで高まっているとは驚きです。

 私はこういう記事に接すると,自分でもデータを計算したくなります。手元にある『世界価値観調査』のローデータを使って,最近の若者の親同居率を国別に出してみました。

 用いたのは,2010~14年に実施された第6回調査のデータです。上記の記事では,20~34歳の親同居率が紹介されていますが,わが国の場合,20代前半は親同居の学生が多いと思いますので,一段上がって25~39歳の数値を出すことにしました。
http://www.worldvaluessurvey.org/WVSOnline.jsp

 下表は,当該年齢の親同居率のランキング表です。25~39歳の対象者のうち,「親と同居しているか?」という問いに,「イエス」と答えた者の比率です。


 日本は43.8%となっています。一段下の20~34歳でみたら,上記のキャリコネ記事にあるように48.9%くらいになるでしょうね。

 日本は58か国中13位であり,値がもっと高い国もあります。インド,タイ,チュニジア,台湾では6割超えです。上位には,アジアや北アフリカの諸国が多いですねえ。家の存続に重きを置く社会です。

 シンガポールは国土が非常に狭いので,離家して居を構えるのが難しいのでしょうか。インドは国土が広いものの人口が非常に多いので,こちらも若者の離家が容易ではないのかもしれません。北アフリカの諸国は,遊牧など,家族ぐるみの産業が多いためでしょう。

 表の右下に目を転じると,若者の親同居率最下位はスウェーデンとなっています。たった4.9%です。この国では,同性婚や未婚で子を持つことよりも,親との同居が忌み嫌われます。
https://twitter.com/tmaita77/status/737612394831040512

 アメリカやドイツも低いですね。欧米では,成人したら親元を離れるのが当然といわれますが,データでもそれが表れています。

 しかるに冒頭の記事がいうように,近年は世界中で若者の親同居率が高まっているのも事実。さしもの欧米でも,率がアップしているそうです。「成人したら親元を離れる!」という文化はそう変わるものではないので,若者の精神的未熟云々ではなく,経済的な事情ゆえであると思われます。

 それが最も顕著なのは,おそらく日本でしょう。90年代以降,日本は深刻な不況に見舞われていますが,その影響を最も強く被っているのは若者です。自立が困難なほど,若者の経済状況は大きく悪化しています。前にニューズウィーク記事で書きましたが,若者のワーキングプア率も全国的に上がってきています。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2015/10/post-4005_2.php

 いつまでも親に甘えたいなどという,精神的未熟ゆえではなく,経済的理由で実家を出たくても出れない,居を構えられない,というのが現実でしょう。住宅政策に力を入れていないわが国では,なおのことです。

 それは,親同居者と非同居者で,幸福度の意識の比較をしてみるとよく分かります。日本の25~39歳のサンプルを親同居者と非同居者に分け,幸福度の回答分布(4段階)をとると,下図のようになります。


 男女で分けましたが,双方とも,親同居者よりも非同居者の幸福度が高いようです。男性では,「とても幸福」の比率が同居群では19.7%ですが,非同居群では41.0%と,倍以上の差があります。カイ二乗検定の結果,男性では1%水準で分布に有意差ありと判断されます。*女性は有意差なし。

 4本の帯をみると,親同居の男性の幸福度が低いですね。家事の加勢もできない,男性パラサイトに対する風当たりは強くなるのでしょうか。私は18歳のとき実家を出ましたが,「オトコが家にいても,飯を食うだけだ」と言われたのをよく覚えています。

 一見,お気楽そうに見えるパラサイトくんも,「自活できるのなら,すぐにでも出ていきたい」と思っているのではないでしょうか。1999年の山田教授の『パラサイト・シングル』(ちくま新書)では,親元でリッチな生活を楽しむパラサイト・シングルが描かれていましたが,最近の親同居者のすがたは,それとは隔たっているように思います。

 まずは,生活の基盤となる「」を持てるよう,公的な支援が必要でしょう。よくいわれることですが,日本はそれがあまりにも弱い。藤田孝典さんの『貧困世代』(講談社新書)の160ページでは,住宅支援に力を入れている国ほど世帯形成率が高いという,鮮やかな散布図が紹介されています。

 移住してきた若い夫婦に,自治体所有の空き家を提供する自治体が増えていると聞きます。住資本の世代転移を,積極的に進めていきたいものです。

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