2016年6月3日金曜日

自尊心格差

 国立青少年教育振興機構『青少年の体験活動等に関する実態調査』(2014年度)のローデータが公開されました。資格申請すれば,エクセルファイルでDLできます。
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/107/

 調査対象は小学校4~6年生,中学校2年生,高校2年生です。小学生については保護者調査も実施し,家庭環境や育児方針についても尋ねています。

 最新の2014年度調査の目玉は,家庭の年収を訊いていることです(保護者調査票,問14)。これを子どもの勉学嗜好や自己意識とクロスしてみると,面白い。子どもの発達の社会的規定性が,リアルに明らかになります。

 昨日,早速ローデータをDLし,いくつかの設問とクロスしてみたのですが,「おお」という傾向が出てきました。それは,自尊心との関連です。「今の自分が好きだ」という項目に対する4段階の回答を求めるものですが,小学生の回答分布を,家庭の年収群ごとにみると下図のようになります。


 各群とも,十分なサンプルサイズです。グラフによると,年収が高い家庭ほど,「自分を好き」と考える子どもが多い傾向にあります。「とても思う」という強い肯定の割合は,年収200万未満の貧困家庭では20.1%ですが,年収1200万超の富裕層では倍の40.4%となっています。

 日本の子どもの自尊心が低いのはよく知られていますが,家庭の年収とこうも明瞭に関連しているとは。家庭環境とリンクした,自尊心格差なる現象があることがうかがえます。

 自尊心(self-esteem)というのは,他者から認められる経験を積むことで育まれますが,それがどれほど得られるかは家庭環境で異なる面はあるでしょう。勉強や運動の出来も,家庭の経済水準と関連しています(学力格差,体力格差)。よって褒められる経験の量が違い,上記のような自尊心格差となって表れる。こういう事態も想起されます。

 家族病理の影響も考えられます。生活苦(貧困)は虐待やDVなどを生じせしめる条件になり得ますが,こういったトラブルに遭遇した子どもの自尊心が低いことは,よく指摘されるところです。虐待を受けた子どもは自尊心を剥奪され,「褒める」指導が通用しなくなる。
http://mainichi.jp/articles/20151024/ddf/041/040/008000c

 想像をめぐらすとキリがありませんが,日本の子どもの場合,やはり学校の成績が自尊心の基盤になっていることは否めないでしょう。それは,学年を上がるほど,家庭の年収と自尊心の関連がクリアーになることから知られます。

 「今の自分が好きだ」という項目に「とても思う」と回答した児童の割合が,家庭の年収階層に応じてどう変化するか。小学校4年生と6年生を比べると,様相は異なるのです。


 4年生では関連がクリアーではないですが,6年生になると,富裕層の家庭の子どもほど自尊心が高いという傾向が明瞭になります。

 上図の傾向は,「高年収→高学力(成績)→高自尊心」という因果経路の表現かと思います。中学生,高校生になったら,右上がりの傾斜はもっと強くなると予想されます。

 学力の相対テストにさらされる機会が多くなり,かつその出来が将来の進路に影響する。こういう社会では,年齢が上がるにつれて,青少年の自尊心の基盤が成績に矮小化されてしまうのは,無理からぬこと。他国でも,こういう傾向があるのか,ぜひ知りたいものです。

 子どもの興味・関心は,年齢を上がるほど分化してきます。よって普通に考えると,年齢を上がるにつれて自尊心の基盤は多様化していくはずですが,現実にはその逆になっている。

 小学校高学年や中学生にもなれば,「こういうことをしたい,こういう道に行きたい」と表明する子どもも増えてきます。いささか突飛なものでも,「そんなことができて何になる」などと頭ごなしに否定しないで,それを伸ばしていく構えも持ちたいものです。

 嫌がる子を無理に大学に行かせ,当人が大卒ニートになった時,それに気づく親御さんが多いのでしょうね。

 自尊心は,人として生きていくための基盤になるものですが,それまでもが社会階層に規定されるというのは,憂うべき事実です。

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