2016年8月27日土曜日

劣悪な労働条件による離職

 労働者の離職理由には,さまざまなものがあります。前に,ニューズウィーク記事にて,正社員の離職理由の内訳を年齢別に示した図を紹介したことがありますが,ライフステージごとの色が実に出ています。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2015/09/post-3920.php

 若者で最も多いのは,「労働条件が悪かった」という理由です。若者を使いつぶすブラック企業がはびこっている状況を思うと,さもありなん。今回は,この部分に焦点を当て,データをちょっと掘り下げてみようと思います。

 まず,この理由による離職者は,数でみてどれほどいるか。2012年の『就業構造基本調査』によると,2011年10月から2012年9月の1年間において,「労働条件が悪かった」という理由で離職した正規職員は28万9千人となっています(20~50代)。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm

 性別・年齢層別にみると,下図のようです。


 若者ほど多く,ピークは20代後半となっています。ブラック労働の餌食になるのは,やはり若者が多いようです。

 それにしても,劣悪な労働条件に耐えかねて離職する20代の正社員が,1年間で12万7千人もいることに驚かされます。私が住んでいる多摩市の人口に匹敵する規模です。

 あと一つ,地域別のデータにも驚愕させられます。劣悪な労働条件による若者の離職率が高い県はどこか。県別のデータを計算したところ,クリアーな地域性が出てきました。

 私が計算したのは,25~34歳男性有業者の離職率です。正社員だけの統計は県別には得られませんので,有業者全体としています。まあ男性ですので,大半が正社員とみてよいでしょう。

 2011年10月から2012年9月における,劣悪な労働条件による,25~34歳の男性有業者の離職者は10万6200人(①)。分母には,観察期間の始点の2011年10月時点の有業者数を充てたいのですが,それは得られないので,翌年(2012年)の10月時点のそれで代替します。その数,680万3600人(②)。

 よって離職率は,①/②=15.61‰となる次第です。(パーミル)とは,千人あたりという意味です。

 これは全国値ですが,同じ値を都道府県別に計算し,高い順に並べたランキングにすると,下表のようになります。


 劣悪な労働条件という理由による,若年男性の離職率です。トップは,わが郷里の鹿児島。2位は大阪で,3~6位は九州の県が続きます。九州,ヤバいですね。

 地域性が明瞭であることをお知りいただくため,上記のデータをマップにしましょう。3段階の階級を設け,各県を塗り分けてみました。


 南九州が濃い色になっていますが,このゾーンでは,ブラック労働に苦しむ若者が多いのか。

 こうした地域性が出る理由は思いつきませんが,ツイッターでこのマップを発信したところ,①男尊女卑の風潮と関連しているのではないか,②薩摩は琉球に対する搾取をしてきた歴史的経緯があるが,その土壌が今も生きているのではないか,といった意見が寄せられました。②などは,ユニークですね。
https://twitter.com/gwinjacket/status/768755339080589312

 今回のデータは,各地域の労働行政の参考にもなるかと思いますので,資料として提示しておきたいと思います。