2018年3月6日火曜日

郷里に帰らなくなる若者?

 都会に出た若者の何%がUターンするか? 地方創生が言われる中,誰もが関心を持ってい問いだと思うのですが,これに答えてくれるデータが見当たりません。

 何とか捻り出せないものか。『国勢調査』の人口移動統計を丹念にサーチし,県別のUターン率を試算する方法を思いついたのですが,分子に外国人が入ってしまうことに気づき,これも断念。
https://twitter.com/tmaita77/status/970625185169645568

 年齢別の県間移動者数は,人口総数のもので,日本人に限定した数値が得られません。惜しい,あと一歩なのに…。外国人が入るのを承知で率を出す手もありますが,若年層では外国人は結構な数になりますので,県によってはおかしな数値が出ちゃいます。

 しかるに,Uターン率とは違いますが,出て行った若者がどれほど戻ってくるか(こなくなるか)をうかがい知る,簡便な方法があります。高校卒業時の大移動が起きる前の人口と,大学卒業後の人口を対比することです。

 そうですねえ。15歳人口と,10年後の25歳人口を照合してみましょうか。私より1つ上の1975年生まれ世代だと,1990年に15歳(A),2000年に25歳(B)となります。私の郷里の鹿児島でいうと,Aは2万7603人,Bは2万146人です(日本人に限る)。差し引き7457人の減。やはり減りますね。

 BをAで割ると0.73であり,進学や就職による県外流出で,同世代の人口が3割近く減ったことが知られます。大学等を出た後に戻ってくる人が多ければ事態はもっとマシなのでしょうが,厳しい現実が見えてきます。

 これは鹿児島の75年生まれ世代のケースですが,より最近の世代では如何。最新の『国勢調査』は2015年のものですが,この年に25歳になるのは1990年生まれ世代なので,この世代を取り上げましょう。当該世代の場合,2005年の15歳と2015年の25歳を比べます。

 以下に掲げるのは,両世代の東京・鹿児島のケースです。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?page=1&toukei=00200521&result_page=1


 鹿児島の「25歳/15歳」比は,75年生まれ世代では0.73ですが,90年生まれ世代では0.63に下がっています。

 最近の世代のほうが,ダメージが大きいですね。ア)出ていく人の増加,イ)帰ってくる人の減少,という2要素のどっちが強まっているかは分かりませんが,事態が深刻化している様が見て取れます。

 対して東京はというと,こちらは大学等進学時と就職時に若者がドカッと入ってきますので,15歳に比して25歳人口は大きく膨れ上がりますが,最近の世代ほどその度合いが強まっています。90年生まれでは,1.6倍の増です。

 こちらも,ア)地方から出てくる人の増加,イ)帰っていく人の減少,の2要素に分けられますが,大都会の吸引力が増しているのは確かなようです。

 地方創生とは逆の方向に動いているようですが,他県はどうでしょう。47都道府県について,同じやり方で,2つの世代の「25歳/15歳」比をとってみました。


 赤字は1.0を超える県,つまり15歳時より25歳時の人口が増えている県ですが,当然,大都市に限られます。90年生まれ世代でいうと,首都圏の1都3県,愛知,京都,大阪です。

 東北の中枢の宮城は,75年生まれ世代では1.0を超えてましたが,90年生まれ世代では,他の地方県と同じく,減少タイプになっています。2011年の大震災の影響もあるかもしれません。中国・九州の中枢の広島・福岡も,進学・就職の移動で人口が減る型なのですね。

 注目すべきは2つの世代の違いですが,比が上がっているのは7県だけで,残りの40県では下がっています。変化の絶対値が0.1を超える県には不等号をつけましたが,宮城以外の東北県,山梨,長野,高知,鹿児島では,状況の深刻化が大きいことがうかがわれます。

 逆に比を大きく伸ばしているのは東京だけ。ひとり勝ち常態の進行でしょうか。

 同一世代の15歳と25歳の人口量を比べただけですので,出ていく人の増加,戻ってくる人の減少の影響を仕分けできませんが,後者の影響も侮れません。都会に出た若者が戻ってこない傾向が強まっているのではないかと。

 75年生まれ世代は,世紀の変わり目の氷河期に大学を出た真正のロスジェネですので,都会での就職が叶わず,実家にパラサイトすべくUターンした人が多かったのかもしれませんが…。

 都市での若者の増加,地方での減少をもたらすのは,進学と就職という2時点における人口移動(mobility)です。これを抑えるためになされているのは,①安価な公立大学設置,②都内23区の私大定員抑制,③地元に帰ってくることを条件にした奨学金,④地元就職者の奨学金返済支援,⑤上京者に対するキャリア教育,というものです。

 ①と②は流出抑制,③~⑤は還流促進に関わります。私としては,18歳時の移動抑制よりも,都会に出た若者のUターン促進に力点を置くべきかと思います。

 大学の原初形態は,教わりたい教師のもとに若者が積極的に移動し,各地に学びの共同体ができたことですので。移動とはすなわち文化交流で,これを抑えるのではなく,都会で学んだことを,郷里の発展に活かすよう仕向けるべきかと思います。

 そのための施策として③~⑤があるのですが,奨学金をエサに若者の人生を管理・統制するのはいただけませんが,当面は,こういう強硬策もやむを得ないでしょう。それと,郷里への愛着を高める「郷土教育」の充実を,幼少期より図りたいもの。育むべきは,「ムラを捨てる学力」ではなく,「ムラを育てる学力」です。

1 件のコメント:

  1. ③~⑤の施策ですが、そもそも地方に職がないのが問題ではないのでしょうか。政府各機関をはじめ、民間企業などが地方に分散、移転する取り組みがもっとあっていいと思います。

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