正規と非正規の格差是正を命じる判決が相次いでいるそうです。
https://www.bengo4.com/c_5/n_7509/
正規と非正規の格差がとびきり大きいのは「官」の世界,すなわち公務員でしょう。アラフォー公務員男女を正規と非正規に分け,ラフな年収分布を描くと,下図のようになります。産業大分類が「公務」に含まれる者で,警察官や教員等は含まれません。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?page=1&toukei=00200532&result_page=1
正規は年収500万以上が最多ですが,非正規は年収200万未満がほとんどです。とりわけ女性は悲惨で,年収200万に満たないワーキングプアが8割を超えています。「官製ワーキングプア」という言葉がありますが,その量がとても多いことが知られます。
これは全国のデータですが,差がどれほどかは県によって違っています。各県の関係者の参考に資するため,公務員の年収の正規・非正規格差を都道府県別に明らかにしてました。差が大きい女性に注目します。
下の表は,女性公務員の正規・非正規の年収分布です(全国)。年収階層区分は,原資料によります。
正規職員36万2800人,非正規職員22万6100人の年収分布です。女性公務員の約4割が非正規なのですね。
それはさておき分布をみると,正規の最頻階級は400万円台,非正規は100万円台前半となっています。これだけでも差が大きいのは明らかですが,中央値を出してみましょう。累積%から,中央値は黄色マークの階級に含まれることが分かります。
按分比例の考えを使って,正規と非正規の中央値は,以下のようにして出されます。
正規=400+{100×((50-36.6)/(56.4-36.6))}=467.6万円
非正規=100+{50×((50-37.1)/(64.4-37.1))}=123.6万円
正規は468万円,非正規は124万円なり。3.8倍の格差です。同じ公務員ですが,この格差はスゴイ。やっている仕事や就業時間の違いもあるでしょうが,「同一労働・同一賃金」の原則が徹底された場合の理想型から,大きく隔たっているといえるでしょう。
上述のように,女性公務員の4割は非正規です。ここまで非正規依存率が高いにもかかわらず,ここまでの正規・非正規差があるとは…。
非正規依存率4割,正規・非正規の年収中央値の格差3.8倍。これは全国の女性公務員の状況ですが,同じデータを都道府県別に出してみました。
黄色マークは,「正規/非正規」の年収倍率が4倍以上,女性公務員の非正規率が4割以上の数値です。
黄色マークが2つ付いている県は,埼玉,神奈川,愛知,福岡,長崎,熊本,鹿児島,となっています。正規・非正規の年収格差が大きく,かつ非正規依存率が高い県です。
とりわけ埼玉と福岡は,状況の点検が求められるでしょう。非正規が半分以上にもかかわらず,正規との差が4.3倍も開いている,郷里・鹿児島も要注意かな。
「同一労働・同一賃金」「正規・非正規の格差撤廃」がトレンドになっていますが,全産業の模範となるべき「官」,公務員の世界がこれでは,示しがつきますまい。