2019年2月20日水曜日

年収のジェンダー差の国際比較

 タナカキミアキが,チャンネルを移動するそうです。長年かけて育て上げた今のチャンネルを捨てると。相手との対話もせず,そういう極端な手段に出る。自信がないのでしょうね。

 私のことを色々言って下さっていますが,スルーしておきましょう。このブログを,あなたの話題で埋めるのは気持ち悪いのでね。

 本日,ニューズウィーク日本サイトにて,拙稿「年功賃金,男女格差……収入カーブから見える日本社会の歪み」が公開されています。年収の年齢カーブを国ごとに比べています。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/02/post-11728.php

 当該記事の図2を見ていただければ,日本のカーブの特異性がお分かりになるかと思います。年功賃金,高齢期になると急減する,そして凄まじいジェンダー格差…。初めてグラフを見る方は,言葉を失うかと思います。

 多くの国の収入曲線を描き込むとグチャグチャしますので,日本,韓国,アメリカ,スウェーデンの4国のグラフしか紹介していません。OECD「PIAAC 2012」の対象は25か国ですが,他の国はどうか,という関心もあるかと思います。とりわけ,日本のものすごいジェンダー差は,25か国の中でどうなのか,という疑問を持たれるでしょう。

 働き盛りの35~44歳に焦点を当てて,収入のジェンダー差の国際比較をやってみましょう。OECD「PIAAC 2012」では,有業者に年収を尋ね,有業者全体の中での相対階層に割り振っています。以下の表は,日本の男女の分布表です。リモートツールで出しましたので,粗い整数値になっていますがご容赦ください。


 同じアラフォーですが,男女では分布が全然違いますねえ。男性は高収入層ほど多いですが,女性はその逆です。男性は上位10%以内が28%と最多ですが,女性は下位10%未満が50%(半分!)です。

 言わずもがな,男性はバリバリ稼ぐフルタイム就業が大半であるのに対し,女性は家計補助のパート就業が多いためです。配偶者控除(150万円)のラインを意識した働き方をしている女性も多し。

 上表の分布をもとに,年収の相対値の中央値を出してみましょう。累積相対度数が50ジャストの値です。按分比例を使って割り出します。本ブログを長くご覧いただいている方は,もう慣れっこですよね。

男性:
 按分比=(50-45)/(72-45)=0.1852
 中央値=50+(25×0.1852)=77.8

女性:
 按分比=(50-0)/(50-0)=1.0000
 中央値=0+(10×1.0000)=10.0

 男性は77.8,女性は10.0という数値です。意味はお分かりですね。普通のアラフォー男性の稼ぎは上位20%,女性は下位10%,という具合です。この差は酷い…。

 他国では,こんなに大きな開きがあるのでしょうか。私は同じやり方で,25か国のアラフォー男女の年収相対値の中央値を計算しました。結果をグラフにしますが,どういう図法にするか。ここでの主眼はジェンダー差を可視化することですので,男女のドットの開きが分かる図にしましょう。


 男性と女性の差が大きい順に,25か国を配列しました。日本のジェンダー差がダントツではありませんか。

 われわれの感覚では,「子育て中で,稼ぎ過ぎないよう就業調整しているママが多いんだから当たり前だろ」ですが,われわれが見慣れている光景は,全然普遍的ではないのですね。それどころか,国際的な標準からすれば完全にアブノーマルです。異常です。

 右側をみると,東欧の旧共産圏ではジェンダー差が小さいようですが,国民皆労働の伝統があるためでしょうか。フランスも小さいですねえ。子育て中のママといえど,シッターを雇う,家事の手抜きをするなど,バリバリ働く社会です。

 自国の状況を普遍的だと思ってはいけません。国際比較をすると,本当に日本の特異性が浮かび上がることに驚きます。だからこそ,止められないのですが。これも,「ファクトフルネス」(ハンス・ロスリング)の実践の範疇に入ると,勝手に思っています。