2012年1月16日月曜日

死因に占める自殺の比重

今日は,1限の「社会数学」の授業を終えて,もう帰ってきました。お昼ごはんを食べたところですが,うーん,眠いなあ。正月以来,昼夜逆転の生活だったのが,今日は朝一で出かけたので。でも,ここで昼寝したらいけません。目覚ましに,ブログでも書こうと思います。

 今日の社会数学では,「現代日本社会の健康診断」という課題を出しました。社会がどれほど病んでいるかを測る指標を各人で8個考え,それらの長期的な推移に基づいて,現代日本社会の健康診断を行っていただこう,というものです。

 個人の病気を測る指標としては,体温や血糖値などがありますが,相手が社会の場合,どういったものを思いつきますか。犯罪率,自殺率,失業率,離婚率,災害死亡率,1人あたりの有害物質排出量,政府の歳入額に占める公債比率・・・。いろいろあります。

 学生さんには,自分が考えた指標の計算に必要な数字を,総務省統計局HPの「長期統計系列」から採取し,エクセルで計算する作業を課しました。犯罪率の場合,犯罪認知件数(分子)と人口(分母)の時系列データをハントし,前者を後者で除す,という具合です。
http://www.stat.go.jp/data/chouki/index.htm

 ある学生さんは,1950年以降の自殺者数のデータをハントしました。「ああ,それを人口で割って,自殺率を出すのだな」と思って後ろから眺めていたのですが,当人が分母として採取したのは,死亡者数です。つまり,自殺という死因が全死因に対して占める比重を出すのを意図していたようです。

 さあ,どういう結果が出たものかとディスプレイをのぞいてみると,1950年が1.8%,1980年が2.8%,最新の2010年が2.5%,です。ほんのわずか。時系列的に変化なし。

 「先生,あまり変わりませんね。自殺が増えているから,死因に占める自殺の割合も上がっているのかと思ったんですけど」
 「じゃあ,若者に限定して出してみれば。最近,シューカツで失敗して自殺する大学生が増えてるっていうぜ」

 20代前半の自殺者数と死亡者数をエクセルにコピペし,後者に占める前者の比率を出してもらいました。下表のような結果が出ました。5年刻みの数字を示します。


 当該の学生さんが驚いたのは当然ですが,私も思わず「おー」という歓声を上げました(不謹慎!)。衛生状態や医療技術の向上により,若者の死亡者数は減少の一途をたどっていますが,自殺者数は1990年代半ば以降増えています。結果,全死因に占める自殺のウェイトが高まっています。2010年では49.8%,20代前半の死因の半分が自殺です。

 このことは,昨年の12月13日の記事で紹介した,年齢別の死因の組成図からも分かることです。しかし,それが今日的な特徴であることは,私にとっても発見でした。

 では,他の年齢層ではどうでしょう。私は,5歳刻みの各年齢層について,自殺者が全死亡者に占める比率を計算しました。1950年以降の5年刻みの数字を明らかにしました。例の社会地図方式によって,結果を上から俯瞰してみます。分子の自殺者数の出所は,厚労省の『人口動態統計』です。


 ご覧ください。今世紀以降,20代の若者の箇所に黒色の膿(うみ)が広がっています。黒色は,死因全体に占める自殺の比率が40%を超える,ということです。死因に占める自殺の比重は,どの年齢層でも高まっているようであり,高率ゾーンが下に垂れてきていることも注目されます。

 自殺者数をベースの人口で除した自殺率の社会地図を描くと,高齢層の部分が濃くなりますが,死因に占める自殺のウェイトという点でみると,違った側面がみえてきます。

 いやあ,今回は学生さんに教えられました。「教えること=学ぶこと」とは,こういうのをいうんだろうなあ。多謝。

2012年1月14日土曜日

幕間:私の散歩道

地図で確認いただければ分かると思いますが,私が住んでいる多摩市連光寺3丁目は,自然が豊かな地域です。天気のいい日の散歩は,心を癒してくれます。都立桜ヶ丘公園の「ゆうひの丘」に出かけましょう。


 自宅近くの通りです。一般道のほか,木の散歩道も設けられています(右側)。車が来ないので,こちらを歩きましょう。


 木の上を歩くので,タンタンと足音がなります。ずーっと進んでいきます。


 公園に着きました。平日の夕方で,かつ寒いせいか,人はいないようです。


 ゆうひの丘展望台です。右下の石に,「ゆうひの丘」と刻まれているのがお分かりでしょうか。


 眼下の景色をちょっとアップしてみます。方角としては,北西の立川方面を眺望していることになります。多摩川にかかっている奥のほうの橋は,京王線の鉄橋です。

 想像がつくと思いますが,夜景はまた格別です。京王線の電車が光の矢となって多摩川を渡っていきます。都内でも有数の夜景スポットとして名高いようです。

 夜景も紹介したいのですが,夜はあまり来たくないのだよなあ。だって,カップルが多いのだもの。「すみませーん。写真撮ってください」攻撃もウザイし・・・。ひとまず,下記のサイトでもご覧くださいまし。
http://yakei-mn.com/yakei/tokyo/yuuhinooka

 寒いので,そろそろ帰りましょう。私の自宅から「ゆうひの丘」まで,歩いて5分ほどです。短いコースですが,癒されます。今は木の葉がすっかり落ちていますが,春は桜,秋は紅葉が見事なのです。シーズンになったら,写真をお見せします。また,他の散歩道にもお付き合いいただければと存じます。

2012年1月9日月曜日

両親の状態と非行③

前回は,性別と学校段階によって,両親の状態が非行に及ぼす影響がどう違うかをみました。今回は,性別と年齢を組み合わせた属性ごとのデータをお見せします。

 年少者ほど,家庭環境と非行の関連が強いことは,前回明らかにした通りです。しかるに,年少者といっても,男子と女子とでは,様相が異なるかもしれません。男女を比べると,女子の年少児童において,親がいないことのインパクトが強いように感じます。

 男女に分けて,各年齢の非行少年の両親の状態をみてみましょう。前回と同じく,「両親ありの者」,「父なし母ありの者」,および「母なし父ありの者」の3カテゴリーでみることとします。「両親なしの者」と「両親の状態が不明な者」は数が少ないので,計算から除きます。下表は,2010年中に検挙・補導された非行少年の統計です。警察庁『犯罪統計書-平成22年の犯罪-』より作成しました。
http://www.npa.go.jp/archive/toukei/keiki/h22/h22hanzaitoukei.htm


 その年齢でみても,両親ありの者が多いのは当然ですが,その比重は,年長少年ほど大きいようです,男子でいうと,両親ありの者の比率は,19歳では71.8%ですが,10歳では60.1%です。逆にいうと,年少の非行少年では,母ないしは父がいない者が相対的に多いことになります。

 10歳の女子の非行少年では,全体の9.8%(約1割)が父子家庭の者です。子どもがいる全世帯の中で父子家庭は1.5%しか占めないことを考慮すると(2010年の『国勢調査報告』),10歳の女子では,父子家庭から非行少年が出る確率は,通常期待されるよりも6.54倍多いことになります。9.8/1.5≒6.54です。

 非行少年中の構成比を,子がいる全世帯中の構成比で除した値を,非行少年輩出率と命名します。この値が高いほど,当該のカテゴリーから非行少年が出る確率が高いことが示唆されます。なお,子がいる世帯(母集団)の構成は,通常家庭が90.3%,母子家庭が8.1%,父子家庭が1.5%,であることを申し添えます。

 3カテゴリーの非行少年輩出率を,両性の各年齢について出してみましょう。下図は,結果をグラフ化したものです。


 男女とも,どの年齢でみても,通常家庭からの非行少年輩出率は1.0を下回っています。性や年齢を問わず,両親ありの家庭から非行少年が出る確率は,通常期待されるよりも低い,ということです。

 その分,母子家庭や父子家庭の数字が高くなっています。母子家庭からの非行少年輩出率は,男子では加齢とともに一貫して減ります。女子では,13歳にピークを迎えた後,急減します。母子家庭であることと非行の関連は,年少の児童ほど強いようです。その傾向は,どちらかといえば女子ほど顕著です。

 しかし,父子家庭であることの影響は,男女で明らかに違っています。女子では,10歳できわめて高い値を示した後は,ジグザグしながらも,おおよそ減少の傾向です。対して男子では,波打ちながらも18歳まで値が上昇するのです。

 前回,上級の学校ほど,父子家庭であることと非行の関連は弱まる傾向をみたのですが,今回の男子のデータがそれと異なっているのは,学校に行っていない有職少年と無職少年も混じっているためと思われます。

 全ての非行少年を考慮すると,父子家庭であることと非行の関連には,明確な性差が看取されます。核家族において,家族内の緊張を和らげる表出的機能を果たすのは母親であると指摘したのは,T.パーソンズですが,進学や就職といった重大な転機を迎える時期に,こうした機能を果たす母親が不在であることが,とくに男子にとって痛手になる,ということでしょうか。

 それは女子でも同じだといわれるでしょうが,同性の親を激しく嫌悪するエディプス・コンプレックスを思春期まで引きずるのではないか,という推測において,男女の差を説明できないこともありません。

 家庭環境と非行の関連の性差を説明する定説は,私が調べた限り,ないようです。推測をだらだらと述べるのは避け,前回と今回の解析から,①家庭の形態面での特性と非行の関連は,年少者や女子で比較的大きいこと,②母子家庭であることよりも父子家庭であることのインパクトが大きいこと,が分かったことを記録しておきます。

 今気づいたのですが,②については,父子家庭への公的援助が,母子家庭へのそれに比べて貧弱であることも関係しているかもしれません。

2012年1月7日土曜日

両親の状態と非行②

前回は,両親の状態によって,非行少年の出現率がどう異なるのかを明らかにしました。2010年の非行少年の数を世帯数で除した出現率は,両親ありの者<父なしの者<母なしの者,という傾向がみられました。なお,この差は,凶悪犯や粗暴犯のような,シリアス度の高い罪種ほど顕著であることも知りました。

 今回は,両親の状態による非行者出現率の差が,子どもの性別や発達段階に応じてどう違うのかをみてみようと思います。父ないしは母がいないことが非行を促進する度合いが高いのは,男子でしょうか,それとも女子でしょうか。また,年少者と年長者ではどうでしょう。

 まずは,2010年中に検挙・補導された非行少年の両親の状態がどういうものかを観察することから始めましょう。前回同様,「両親ありの者」,「父なし母ありの者」,および「母なし父ありの者」という3カテゴリーでみることにします。

 下の表は,非行少年の性別や在学学校種ごとに,これら3カテゴリーの構成比を計算したものです。統計のソースは,警察庁『犯罪統計書-平成22年の犯罪-』です。厳密には,この3グループの他に,「両親なしの者」,「両親の状態が不明な者」がいるのですが,これらはほんの微々たる量ですので,計算から除外することとします。


 どの属性でみても,通常家庭の者が最も多くなっていますが,このグループの比率は,男子よりも女子,年長者よりも年少者で小さいようです。逆にいえば,女子や年少の非行少年では,母子家庭ないしは父子家庭の者が相対的に多いことになります。

 上記の構成比のデータを,母集団のそれと照らし合わせてみましょう。前回みたように,2010年における,子ども(20歳未満)がいる世帯の構成は,両親ありの世帯が90.3%,母子世帯が8.1%,父子世帯が1.5%,です(総務省『国勢調査報告』)。

 非行少年の出身家庭の構成は,社会全体の世帯構成から大きく隔たっています。上表にみるように,男子の非行少年では父子家庭の者が6.7%を占めますが,社会全体では,父子家庭は全体の1.5%しか占めません。

 つまり,男子でいうと,父子家庭からは,通常期待されるよりも4.39倍多く非行少年が出ていることになります(6.7/1.5≒4.39)。非行少年中の構成比を,子どもがいる世帯(母集団)中の構成比で除した値を,非行少年輩出率と呼ぶこととします。

 両親の状態による非行少年輩出率の差が,男子と女子,年少者と年長者でどう違うかが,ここでの関心事です。


 性別でいうと,両親の状態による非行少年輩出率の差は,男子よりも女子で大きいようです。女子では,通常家庭の値は0.67ですが,母子家庭になると4.00に跳ね上がります。男子の増加幅は,これよりも緩やかです(0.72→3.48)。でも,父子家庭になると,非行者輩出率は男女でほぼ等しくなります。

 次に学校段階別でみると,通常家庭と母子家庭の断絶は,小・中学生で大きいことが知られます。高校以降は,直線の傾斜が相対的に緩やかです。大学生になると,非行少年の出る確率は,両親の状態とあまり関係しなくなります。大学生(18,19歳)は半ば大人で,親の庇護から離れている者が多いからでしょう。

 大局的にいうと,非行少年の出る確率が両親の状態に規定される度合いが高いのは,男子よりも女子,年長者よりも年少者であるようです。

 自我が未熟な年少少年において,家庭環境の影響が大きいことは首肯できます。男女の違いについては,解釈がなかなか難しいのですが,女子は母子家庭,男子は父子家庭であることのダメージが相対的に大きいことからして,異性の親がいないことのインパクトがうかがれます。

 異性の親をめぐる競争相手として,同性の親を激しく嫌悪するエディプス・コンプレックスを指摘したのはフロイトですが,それを引きずってしまうのでしょうか。家庭環境と非行の関連が性によってどう異なるかという問題について,何か説明はないものかと,いろいろ探査したのですが,これがないのです。未開拓なテーマなのかしらん。

 次回は,家庭環境と非行の関連が,性と年齢を組み合わせた属性によってどう異なるかを明らかにしようと思います。

2012年1月5日木曜日

両親の状態と非行①

非行の原因として,家庭環境の問題が大きいことは,よく指摘されるところです。少年非行のテキストを開くと必ず,「家庭環境と非行」という類の章(chapter)が設けられています。

 家庭環境と非行の関連は,多様な側面から考察しなければならないのですが,ここでは,両親の状態がどうかという,外的な形態面に焦点を当てようと思います。両親がいる者と,父母のいずれかがいない者とで,非行を犯す確率がどれほど違うか,という問題を立ててみます。

 警察庁が毎年発刊している『犯罪統計書』には,警察に検挙・補導された少年の数が,両親の状態別に掲載されています。*14歳以上の犯罪少年の場合は「検挙」,14歳未満の触法少年の場合は「補導」といいます。

 2010年の資料によると,同年中に検挙・補導された非行少年は103,573人です。両親の状態の構成をみると,①「両親あり」の者が65,791人,②「母あり父なし」の者が29,843人,③「父あり母なし」の者が6,893人,④「両親なし」の者が835人,⑤「不明」の者が211人,となっています。
http://www.npa.go.jp/archive/toukei/keiki/h22/h22hanzaitoukei.htm

 ①が全体の63.5%と多くを占めています。しかし,少年全体(母集団)でみても「両親あり」という者が大半でしょうから,当然といえば当然です。各グループから非行少年が出る確率を明らかにするには,それぞれのグループの非行者数を母数で除した出現率を計算する必要があります。

 2010年の『国勢調査報告』によると,20歳未満の子どもがいる母子世帯(他の世帯員がいる世帯を含む)は1,081,699世帯だそうです。20歳未満の子どもがいる父子世帯は204,192世帯です。これらは,②と③の母数として使えます。①については,20歳未満の子どもがいる全世帯数(13,306,961世帯)からこれらを差し引いて得られる,12,021,070世帯を母数として充てることとします。

 ④の「両親なし」のグループについても,非行者出現率を出したいのですが,このグループの母数は明らかにしようがないので,見送ることとします。では,①から③の各グループについて,非行者数を母数(世帯数)で除した,非行者出現率を計算してみましょう。


 結果は,上表のようになりました。通常家庭<母子家庭<父子家庭,という構造になっています。母子家庭は通常家庭の5.0倍,父子家庭は6.2倍です。両親の状態により,非行を犯す確率が異なるであろうことは予想されることですが,これほどの差があるとは。また,父がいないことよりも,母がいないことのほうのダメージが大きいことも,私にとっては発見です。

 次に,罪種ごとの数字を出してみましょう。一口に非行といっても,いろいろな罪種があります。グループ間の差が大きいのは,どの罪種でしょうか。昨年の10月30日の記事では,どういうタイプの高校に行っているか,高校に行っているか否かの差をみたのですが,凶悪犯のようなシリアスな罪種ほど,グループ間の差が大きい傾向が観察されました。両親の状態別にみても,こういう傾向がみられるかしらん。

 下表は,各グループの罪種ごとの検挙・補導人員数を,上表の母数で除した出現率を整理したものです。


 非行の多くは万引きのようなコソ泥ですので,出現率の絶対水準は,窃盗犯で高くなっています。その次が粗暴犯(暴行,傷害,脅迫,恐喝)です。グループ間の差の構造は,どの罪種でみても,先ほどみた全体のものと同じになっています。通常家庭<母子家庭<父子家庭,です。

 では,差の規模はどうでしょう。マジョリティーの窃盗犯の場合,通常家庭からの出現率を1.0とした指数を出すと,母子家庭は4.9,父子家庭は6.1です。他の罪種についても同じ処理をし,結果を図示すると,下図のようになります。


 各グループの値を結んだ線の傾斜がきついほど,差が大きいことを意味します。図をみると,両親の状態の影響は,粗暴犯や凶悪犯で相対的に大きいようです。粗暴犯は,通常家庭と母子(父子)家庭の断絶が明確です。凶悪犯(殺人,強盗,強姦,放火)の出現率は,通常→母子→父子,というように直線的に増える傾向です。父子家庭から凶悪犯少年が出る確率は,通常家庭の8.2倍にもなります。

 巷でよくいわれることではありますが,非行少年の出現率は,罪種を問わず,家庭環境(両親の状態)と関連しているようです。

 ところで,今回みた3グループの世帯数の構成は,通常家庭が90.3%,母子家庭が8.1%,父子家庭が1.5%,です。父子家庭は相当のマイノリティーです。わが国では,夫婦が離婚した場合,母親が子を引き取るケースが圧倒的に多いので,このような構造になっています。しかるに,量的には少ないこの父子家庭から,非行少年が出る確率が最も高くなっています。

 親の一方がいないといっても,母がいないことと父がいないことでは,非行に対するインパクトが異なることがうかがわれます。この点について,何か説明はないものかと,手元の犯罪社会学や非行関連の文献にあたってみたのですが,残念ながら言及はありませんでした。

 もう少し,細かい数字をいじってから考えるほうがよいでしょうか。次回は,両親の状態と非行の関連の様相が,子どもの性別や発達段階によってどう異なるかをみてみようと思います。

2012年1月3日火曜日

県別の年賀葉書引き受け数

今日が正月休みの最終日という方が多いと思いますが,いかがお過ごしでしょうか。私は昨日,近場の居酒屋で一杯やりながら,有川浩さんの『阪急電車』(幻冬舎文庫,2010年)を読みました。酒場で読む本としては,先行きを楽しみながら読める,ライト・ノーベルがよいでしょう。話し相手がいるようで,酒もススミます。
http://www.gentosha.co.jp/news/top/2007/12/post_55.php

 さて,前回の続きです。ケータイやパソコンなどによる年賀メールにやや押されている年賀状ですが,その利用頻度が地域別にどう違うかを明らかにしようと思います。前回は,日本郵便の支社ごとの統計を出したのですが,もっと細かい,都道府県別のデータもあることに気づきました。

 旧日本郵政公社のサイトに,県別の年賀葉書引き受け数をまとめた統計表がアップされています。下記サイトの「都道府県等別引受内国郵便物数」の「14.年賀葉書」をクリックすると,エクセル形式のデータが出てきます。1996年度から2006年度までのものです。やや古いですが,このデータを分析してみましょう。
http://www.japanpost.jp/toukei/2006/yu06.html

 1996年度と2006年度における,県別の年賀葉書引き受け数は以下のようです。各県の人口一人あたりの数も計算しました。


 全国的には,この10年間にかけて,年賀葉書の引き受け数は36億枚から30億枚へと減っています。しかし,県別にみると傾向は一様ではなく,引き受け枚数が増えている県も見受けられます。岐阜と滋賀です。滋賀では,4,200万枚から2億2,200万枚へと5倍になっています。これはいかに。

 右欄の人口一人当たりの引受枚数をみると,年賀葉書の利用頻度の地域差を正確に測ることができます。黄色は最大値,青色は最小値です。1996年度,2006年度とも,最も低いのは沖縄です。「ゆいまーる」の当県では,対面での挨拶が多いのでしょうか。最大値は,1996年度は北海道でしたが,2006年度では滋賀となっています。2006年度の滋賀は,県民一人あたり160枚です。ダントツの高さです。これは,何か特殊事情があるのでしょう。

 俯瞰してみると,この10年間において,年賀葉書の引き受け枚数の地域差が拡大していることも知られます。右欄の一人当たり引受枚数の標準偏差(S.D)を出すと,1996年度は5.0でしたが,2006年度は22.0にまでなっています。

 こうした分極化傾向は,地図でみると,もっとクリアーです。下図は,人口一人当たりの引き受け枚数を地図化したものです。この10年間の変化に注目してください。


 1996年度では一様に濃い色で塗りつぶされていますが,2006年度では,色が濃い県と薄い県とに分かれてきています。傾向としては,西高東低であるような感じがします。

 2011年度の地図を描けるとしたら,どういう模様になるでしょう。地域差の規模は,もっと大きくなっているでしょうか。年賀状の利用頻度は,地域住民の連帯度を計測する指標(measure)として使えるかもしれません。

2012年1月1日日曜日

年賀葉書の発行枚数

年が明けました。みなさま,晴れやかな新年を迎えられたことと存じます。

 さて,元旦の楽しみといえば,年賀状の枚数をカウントすることでしょう。郵便屋さんのバイクの音が聞こえるや否や,玄関を飛び出して,ポストをカパ。そこには,輪ゴムで括られた葉書の束が鎮座しています。「あれっ。今年は思ったより少ないな(多いな)」,「あの人から来てる」・・・。元旦の午前中は,ツイッターなどで,このようなつぶやきが多いのではないかしらん。

 でも,年賀葉書とは別のツールを使って,新年の挨拶を済ませる人もいることと思います。ある大学の先生はあまりに多忙で,膨大な数の年賀状を認めるヒマがないので,一斉メールの形で済ませているとか。パソコンや携帯電話が普及している今日,年賀「状」から年賀「メール」に乗り換える人が増えるのは,しごく自然な成り行きです。

 日本郵政の発表によると,2011年度に発行された2012年用の年賀葉書の枚数は36.7億枚だそうです。2001年度発行の2002年用葉書の発行枚数は40.2億枚でした。この10年間で,およそ1割の減です。この期間中,上記の情報機器の普及率が上がったことと無関係ではないでしょう。

 年賀葉書の発行枚数の変化を,もっと長期的なスパンでみてみましょう。1950年度(1951年用)から2011年度(2012年用)までの発行枚数の推移を跡づけてみます。資料は,旧日本郵政公社と日本郵政の発表資料です。1950年度から2006年度までの発行枚数は,下記サイトの時系列データから知ることができます。2007年度以降は,日本郵政のホームページの「お知らせ」から知ることができます。
http://www.japanpost.jp/toukei/2006/yu06.html

 なお,1995年以降のパソコン・携帯電話の保有率(世帯単位)も併せて観察します。資料は,総務省の『通信利用動向調査』です。


 年賀葉書の発行枚数は,戦後間もない1950年度では4億枚(国民一人当たり4.8枚)でした。その後,時代と共に発行枚数は増え,2003年度には44.6億枚に達します。国民一人当たり34.9枚です。しかし,それ以降は減少に転じ,2011年度の36.7億枚に至っています。

 近年の年賀葉書の発行数の減少は,情報機器の普及と関連していることと思われます。図にみるように,1990年代後半以降,パソコンと携帯電話の世帯保有率はうなぎ昇りに上昇しています。1995年では,パソコンの保有率16.3%,ケータイの保有率10.6%であったのが,2010年では,順に83.4%,93.2%にまで高まっているのです。

 今後,年賀葉書の発行数はどうなるかは定かでありませんが,社会の情報化の進展により,新年の挨拶の形式が多様化していくことは間違いないでしょう。しかるに,このような社会的状況を共有しながらも,旧来の慣行にこだわる方もいます。

 試みに,年賀葉書の利用頻度の地域差を明らかにしてみましょう。日本郵便の速報資料から,2012年の「年賀郵便物元旦配達物数」を知ることができます。年賀郵便物のほとんどは,年賀葉書とみてよいでしょう。日本郵便の支社ごとの数字を整理すると,下表のようです。この数字は配達物数であるので,先ほどみた年賀葉書の発行枚数とは大きく異なることに留意ください。
http://www.post.japanpost.jp/whats_new/2012/0101_01.html


 各支社の配達数を管轄地域の人口で除して,人口一人当たりの配達数を計算しました。この指標をみると,最も数が多いのは北陸で,一人当たり20.9枚です。最も少ない沖縄(6.5枚)の3倍を超えています。すごい差です。

 「ゆいまーる」に象徴される沖縄は,地域住民の交流度が高いと思うのですが,対面(face to face)での挨拶が多い,ということでしょうか。信越や九州の値が低いのも,このような事情なのでしょうか。なお,東北や関東(茨城,栃木,群馬,埼玉,千葉)の値が低いのは,昨年の震災の影響かと思います。

 ひとまず,このようなデータが出たことをご報告いたします。明日も明後日も,追加の賀状が届くことと思います。そうした個々人のやり取りを集積すると,今回みたような数字になることをお知りいただければ,と存じます。

 では,みなさま,よいお正月をお過ごしください。