2012年1月9日月曜日

両親の状態と非行③

前回は,性別と学校段階によって,両親の状態が非行に及ぼす影響がどう違うかをみました。今回は,性別と年齢を組み合わせた属性ごとのデータをお見せします。

 年少者ほど,家庭環境と非行の関連が強いことは,前回明らかにした通りです。しかるに,年少者といっても,男子と女子とでは,様相が異なるかもしれません。男女を比べると,女子の年少児童において,親がいないことのインパクトが強いように感じます。

 男女に分けて,各年齢の非行少年の両親の状態をみてみましょう。前回と同じく,「両親ありの者」,「父なし母ありの者」,および「母なし父ありの者」の3カテゴリーでみることとします。「両親なしの者」と「両親の状態が不明な者」は数が少ないので,計算から除きます。下表は,2010年中に検挙・補導された非行少年の統計です。警察庁『犯罪統計書-平成22年の犯罪-』より作成しました。
http://www.npa.go.jp/archive/toukei/keiki/h22/h22hanzaitoukei.htm


 その年齢でみても,両親ありの者が多いのは当然ですが,その比重は,年長少年ほど大きいようです,男子でいうと,両親ありの者の比率は,19歳では71.8%ですが,10歳では60.1%です。逆にいうと,年少の非行少年では,母ないしは父がいない者が相対的に多いことになります。

 10歳の女子の非行少年では,全体の9.8%(約1割)が父子家庭の者です。子どもがいる全世帯の中で父子家庭は1.5%しか占めないことを考慮すると(2010年の『国勢調査報告』),10歳の女子では,父子家庭から非行少年が出る確率は,通常期待されるよりも6.54倍多いことになります。9.8/1.5≒6.54です。

 非行少年中の構成比を,子がいる全世帯中の構成比で除した値を,非行少年輩出率と命名します。この値が高いほど,当該のカテゴリーから非行少年が出る確率が高いことが示唆されます。なお,子がいる世帯(母集団)の構成は,通常家庭が90.3%,母子家庭が8.1%,父子家庭が1.5%,であることを申し添えます。

 3カテゴリーの非行少年輩出率を,両性の各年齢について出してみましょう。下図は,結果をグラフ化したものです。


 男女とも,どの年齢でみても,通常家庭からの非行少年輩出率は1.0を下回っています。性や年齢を問わず,両親ありの家庭から非行少年が出る確率は,通常期待されるよりも低い,ということです。

 その分,母子家庭や父子家庭の数字が高くなっています。母子家庭からの非行少年輩出率は,男子では加齢とともに一貫して減ります。女子では,13歳にピークを迎えた後,急減します。母子家庭であることと非行の関連は,年少の児童ほど強いようです。その傾向は,どちらかといえば女子ほど顕著です。

 しかし,父子家庭であることの影響は,男女で明らかに違っています。女子では,10歳できわめて高い値を示した後は,ジグザグしながらも,おおよそ減少の傾向です。対して男子では,波打ちながらも18歳まで値が上昇するのです。

 前回,上級の学校ほど,父子家庭であることと非行の関連は弱まる傾向をみたのですが,今回の男子のデータがそれと異なっているのは,学校に行っていない有職少年と無職少年も混じっているためと思われます。

 全ての非行少年を考慮すると,父子家庭であることと非行の関連には,明確な性差が看取されます。核家族において,家族内の緊張を和らげる表出的機能を果たすのは母親であると指摘したのは,T.パーソンズですが,進学や就職といった重大な転機を迎える時期に,こうした機能を果たす母親が不在であることが,とくに男子にとって痛手になる,ということでしょうか。

 それは女子でも同じだといわれるでしょうが,同性の親を激しく嫌悪するエディプス・コンプレックスを思春期まで引きずるのではないか,という推測において,男女の差を説明できないこともありません。

 家庭環境と非行の関連の性差を説明する定説は,私が調べた限り,ないようです。推測をだらだらと述べるのは避け,前回と今回の解析から,①家庭の形態面での特性と非行の関連は,年少者や女子で比較的大きいこと,②母子家庭であることよりも父子家庭であることのインパクトが大きいこと,が分かったことを記録しておきます。

 今気づいたのですが,②については,父子家庭への公的援助が,母子家庭へのそれに比べて貧弱であることも関係しているかもしれません。

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