2012年3月7日水曜日

教員のパフォーマンス指数(授業)

子どもの「がんばり度」は,学力テストや体力テストの結果などを使って計測できるのですが,教員の「がんばり度」を測る指標(measure)はないものかと,前から思っていました。

 子どもの場合,一定水準の学力や体力をつけるというように,期待されている役割が明確なのですが,教員に期待される役割とは何でしょう。

 まず,教えることのプロとして,知識や技術が子どもに確実に伝わるような,分かりやすい,工夫された授業を行うことが求められます。また,日々の業務遂行に際しては,上司や同僚,さらには外部の諸主体(教育委員会,保護者・・・)と連携・協力することも要請されます。教育が高度に組織化・体系化されている今日,個々の教員の身勝手な「個人プレー」は歓迎されません。あと一点,専門職としての教員は絶えず研修に励む必要があります。このことは,教育基本法や教育公務員特例法において,明確に法定されています。

 私は,(1)授業,(2)連携・協力,そして(3)研修という3つの観点から,教員の役割遂行(パフォーマンス)の度合いを計測する指数を構成してみようと考えました。教員とは,公立の義務教育学校(小・中学校)の教員とします。なお,教員といっても地域によって状況は異なるでしょうから,指数を県別に計算し,比較してみます。

 今回は,1番目の「授業」の観点から,各県の公立小・中学校の教員のパフォーマンスを観察してみようと思います。

 文科省の『全国学力・学習状況調査』では,対象となった学校に対し,日々の授業実践について尋ねています。授業に関連する設問は多いのですが,私は,以下の6つの設問への回答に注目しました。

①:児童(生徒)の様々な考えを引きだしたり,思考を深めたりするような発問や指導をしていますか。
②:児童(生徒)の発言や活動の時間を確保して授業を進めていますか。
③:国語の指導として,補充的な学習の指導を行いましたか。
④:国語の指導として,発展的な学習の指導を行いましたか。
⑤:算数(数学)の指導として,補充的な学習の指導を行いましたか。
⑥:算数(数学)の指導として,発展的な学習の指導を行いましたか。

 ③~⑥の補充的ないしは発展的な指導は,個に応じた指導の一環として,学習指導要領の上でも推奨されているものです(たとえば,小学校学習指導要領総則第4の2の6)。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syo/sou.htm

 調査対象となった公立の小・中学校のうち,これらの各問いに対し,最も強い肯定の回答(「よく行った」)を寄せた学校の比率を計算しました。使ったのは,2009年度調査のデータです。2010年度調査のデータが最新ですが,全学校を対象とした悉皆調査である2009年度調査の結果を用いることとしました。
http://www.nier.go.jp/09chousakekkahoukoku/index.htm

 上記の6つの設問に対し,「よく行った」と答えた学校の比率(以下,実施率)を都道府県別に明らかにしました。単位は%です。下表に,全国値と,47都道府県中の最大値と最小値を示します。


 各学校の自己評価の結果ですが,授業の工夫の実施率は,県によってかなり異なるようです。②の「自主性を重んじる指導」の実施率は,岐阜と沖縄では40ポイント近くも違います。③~⑥の補充的・発展的な指導の実施率は,軒並み滋賀で低いようですが,当県では,それぞれの学校の自己評価が厳しかった,ということでしょうか。

 では,6つの実施率を合成して,授業面での教員のパフォーマンスを測る指数を構成してみましょう。各県の①~⑥の実施率を,47都道府県中の順位に基づいて,1~10点の点数に換算します。

 1~5位=10点,6~10位=9点,11~15位=8点,16~20位=7点,21~25位=6点,26~30位=5点,31~35位=4点,36~40位=3点,41~45位=2点,46~47位=1点,とします。

 6つのスコアの平均値をもって,授業面での教員のパフォーマンス指数といたしましょう。私が在住している東京の場合,実施率の順位は,①が20位,②が39位,③が29位,④が6位,⑤が21位,⑥が2位,です。よってスコアは順に,7,3,5,9,6,10,となります。6つのスコアを平均して,東京のパフォーマンス指数は,6.67と算出されます。

 下表は,6つのスコア値と,それらを平均したパフォーマンス指数の県別一覧表です。最大値には黄色,最小値には青色をつけました。また,指数が7.00以上の場合は赤色にしました。


 右端の指数をみると,最も高いのは茨城,最も低いのは滋賀です。茨城の10.00は,考えられ得る値の最大値です。全項目の実施率が5位以内にランクインしているので,このような結果になっています。

 一方,滋賀は,考えられ得る値の最小値(1.00)を記録しています。うーん,やはり,調査対象となった各学校の自己評価が厳しかった,ということなのかなあ。

 なお,指数が7.00を超えるのは,11県です。茨城,栃木,群馬,新潟,石川,福井,広島,山口,高知,大分,そして鹿児島です。これらの県は,授業面における教員のパフォーマンスが比較的良好であると判断されます。*あくまで自己評価の結果ということを申し添えなければいけませんが。

 最後に,右端の指数に基づいて,各県を色分けした地図を掲載しておきましょう。4未満,4台,5台,6台,および7以上という5段階を設けました。


 指数が高い白色の県は,北関東や北陸などに分布しています。一方,近畿県の多くは黒色です。北陸は白色・・・子どもの学力水準と関連していそうです。福井は,学力テストの上位の常連県です。授業の工夫の実施頻度が高い→子どもの学力アップ,という因果関係は分かりやすいところです。

 子どもの県別の学力水準は,昨年の6月12日の記事で明らかにしています。早速,両者の相関分析をしてみたいのですが,教員のパフォーマンス指数のほうを,もう少しブラッシュアップしてからにしましょう。

 次回は,「連携・協力」の側面から,各県の教員のパフォーマンス指数を出してみようと存じます。

2012年3月6日火曜日

2011年度・教員採用試験の競争率

文部科学省より,2011年度の教員採用試験(2010年夏実施)の競争率が公表されています。競争率とは,受験者数を採用者数で除した値です。小学校では,受験者が57,817人,採用者が12,883人ですから,競争率は4.5倍と算出されます。4.5人に1人が採用された,ということです。

 私が学部4年だった年(1998年)の夏に実施された,小学校試験の競争率は12倍でした。団塊世代教員の大量退職という事情もあってか,競争率はずいぶん下がったものです。しかし,難関であることに変わりありますまい。合格された皆さまの尋常ならざるご努力に,敬意を表します。

 しかるに,これは全国の数字です。当然,自治体によって試験の競争率は大きく異なるでしょう。昨年の2月1日の記事では,2009年度試験の都道府県別の競争率を出したのですが,2011年度試験の地域別の結果はどうだったのでしょうか。また,この記事では,公立学校全体の競争率しか明らかにしませんでしたが,学校種ごとの競争率を県別に計算するとどうでしょう。

 私は,小学校,中学校,高等学校,および特別支援学校の4学校種について,2011年度試験の競争率を都道府県別に明らかにしました。計算に使った,受験者数と採用者数は,下記の文科省サイトの表2から採取しました。PDFファイルでアップされている表です。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1314470.htm

 下表は,その一覧です。指定都市の分は,当該市がある県の分に含めています。たとえば札幌市の受験者数,採用者数は,北海道の計算の分に組み入れています。千葉,東京,富山,そして石川の4都県は,中学校と高校の間に区分を設けていないそうです。福井に至っては,学校種による区分そのものを設けていないそうです。

 あと一点,特別支援学校の競争率がペンディングになっている6県は,特別支援学校の試験を小・中・高と合同で実施している県であることを申し添えます。


 さて,競争率の一覧表をみてみましょう。黄色は全県の最大値,青色は最小値です。まず小学校をみると,岩手の32.4倍から富山の2.6倍まで,非常に大きな地域差があります。前者では32人に1人,後者では3人に1人です。

 岩手の小学校試験は超難関ですね。具体的な数を示すと,受験者511人のうち,採用の栄冠を勝ち取ったのはたったの16人です。

 次に,中高の欄をみると,小学校よりも全般的に競争率が高いようです。2ケタの数字もちらほらみられます。2月6日の記事で紹介しましたが,私の卒論ゼミの教え子が,東京の中高社会の試験を突破しました。東京の中高の競争率は8.3倍。社会の場合,もっと激戦だったことでしょう。彼もがんばったのだなあ。おめでとう!

 特別支援学校の競争率は,ほとんどの県で,他の学校種よりも低いようです。穴場といわれたりしますが,障害のある子どもを教育する学校であるので,通常学校とは違った困難な条件もあると思われます。精神疾患による教員の休職率が,特別支援学校で最も高いことは,2月19日の記事でみた通りです。こういうことも影響しているのかしらん。

 最後に,受験者数,採用者数とも最も多い,小学校試験の競争率を地図化しておきましょう。下図は,2.0の区分を設けて,各県を塗り分けたものです。黒色は,競争率が10倍を超える地域です。


 競争率が高い,黒色や赤色の地域は,北東北と南九州に多く分布しています。大雑把にいうと,中央から遠ざかるほど,色が濃くなる傾向があります。地方では,教員採用試験は激戦なのですね。

 一方,東京や大阪のような大都市県は,白色です。東京の小学校試験の競争率は3.7倍。優秀な人材を獲得できないという危機感からか,東京都教育委員会は,地方の学生を呼び寄せるバスツアーを毎年企画している模様です。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr111107.htm

 競争率が高い地域では,それだけ優秀な人材が集まり,教員のパフォーマンスもよいのでしょうか。また,離職率も低いのでしょうか。競争率が低く,比較的簡単に教員になれる県では,その逆なのでしょうか。

 間もなく,2010年の文科省『学校教員統計調査』の結果が公表されると思います。この資料から,若年教員の離職率を県別に出すことが可能です。この指標と,採用試験の競争率がどういう相関関係にあるのかが興味深いです。手がけてみたい分析課題です。

2012年3月5日月曜日

年齢層別の就業状態

一昔前,「東京で石を投げれば大学生に当たる」といわれていました。現在,都会でランダムに石を放り投げた場合,どういう人間に命中するでしょうか。このご時世です。皆,浮かない顔をして歩いています。不安定就労や失業中というような,おめでたくない状態にある方にヒットする確率も高いと思われます。そういう方はイライラがつのっているでしょうから,何をされるか分かりません。恐ろしや。

 2010年の総務省『国勢調査』の産業等基本集計結果から,15歳以上の国民の労働力状態や就業形態の内訳を知ることができます。現在,22の県の分が公表されていますが,この中で最も都市性が高い(全国の縮図に近い)と考えられる栃木県のデータを使って,国民の素状を観察してみましょう。

 2010年10月1日時点における,栃木県の15歳以上人口は約172万人だそうです。この172万人のうち,就業者が何人,失業者が何人,家事従事者が何人というような,労働力状態の統計は,下記サイトの表2-1から得ることができます。また,就業者の就業形態の内訳(正規,派遣,バイト・・・)は,表3から知ることができます。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001037602&cycode=0

 これらの統計を用いて,就業状態という観点からした,172万人の組成を明らかにしました。下図をご覧ください。


 「正規」から「家族従業等」までの4カテゴリーが就業者,それ以外(不詳除く)が非就業者ということになります。最も多いのは,正規雇用の就業者です。およそ3人に1人。次に多いには,「派遣・バイト」と「その他」です。「その他」とは,就業も通学も家事もしていない者です。職をリタイアした高齢者が大半ですが,若者もいます。若者の場合,俗にいうニートに近い輩であると解されます。

 家事従事者も全体の15%ほどいます。ほとんどが女性です。なお,全体の3.8%,およそ26人に1人が,足繁く求職活動を行っている失業者です。

 これは,15歳以上人口全体の傾向ですが,各カテゴリーの組成は,年齢層によって大きく異なるでしょう。私は,5歳刻みの年齢階層ごとに,同じ統計をつくってみました。男性と女性に分けて,結果を人口ピラミッド図の形で示します。目盛の単位は千人です。*就業状態の人口ピラミッドは,昨年の7月26日の記事でもつくったのですが,今回のものは,カテゴリーの区分が細かい,精密度の高いものであることを申し添えます。


 人口ピラミッドの形は,真ん中より少し上の層が厚い「つぼ型」です。全国的な傾向と同じです。当然ですが,低年齢層では「通学」,高齢層では「その他」の領分が大きくなっています。

 さて,生産年齢段階の色分けをみると,女性では家事(オレンジ色)や派遣・バイト(赤色),男性では正規雇用(青色)のシェアが広いようです。就業者の雇用形態の非正規化,不安定化が問題になっていますが,それはとりわけ女性で顕著です。女性では,20~50代の就業者のうち,派遣・バイト(赤色)が占める比率は47.4%にも達します。ほぼ半分です。

 ところで,ロスジェネといわれる私の世代はどうなのでしょう。上図でいう「35~39歳」の層ですが,第2次ベビーブーマーに該当するので,他の世代に比べて人数が多くなっています。男性は7万9千人,女性は7万2千人です。

 この層に拡大鏡をあててみましょう。下表に,各カテゴリーの人数と,全体に占める構成比(%)を整理しました。


 ロスジェネ世代の女性では,派遣・バイト従事者が最も多くなっています。全体の3割です。この世代の女性集団に石を投げた場合,不安定就労者に当たる確率が最も高いわけです。専業主婦ではありません。

 男性でも,派遣・バイトと失業を合わせると12.1%,それにニートも加えると14.0%です。およそ7分の1の確率で,この手の輩に石が命中することになります。

 私は大学非常勤講師ですので,上表のカテゴリーでいうと,まぎれもなく「派遣・バイト」に含まれます。6.4%,16人に1人の枠に入っているのか・・・。自分の位置を知ることができました。

 『国勢調査』の産業等基本集計の全国結果が公表されるのは,4月の下旬だそうです。その時になったら,全国についても,同じ統計をつくってみるつもりです。また,首都の東京のピラミッドも描いてみる予定です。大都市の場合,また違った模様になることが予想されます。

2012年3月4日日曜日

教員の女性比(時代比較,国際比較)

2010年12月27日に,男女共同参画基本計画(第3次)が策定されました。本計画は,「政策・方針決定過程への女性の参画の拡大」を図るべく,「2020年までに,指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%になるよう期待し,各分野の取組を推進」すると明言しています。
http://www.gender.go.jp/main_contents/category/houritu_keikaku.html#kihonkeikaku

 このことを受けてでしょうか。大学教員の公募文書をみると,「女性の積極的な応募を期待します」,「業績が同等と認められる場合は,女性を採用します」というような文言をよく目にするようになりました。女性を雇った場合,給与の補助も出るとか。研究者の女性比率を高めようという,当局の強い意欲を感じます。

 今回は,子どもを教え導く存在たる教員に,女性がどれほどいるかをみてみようと思います。そんなの文科省の白書に載ってるじゃん,といわれるかもしれませんが,ここでは,長期的な時系列推移を明らかにします。また,国際比較も手掛けてみます。わが国の教員の女性比率の現状を,時代軸と空間軸の双方から相対視してみようという試みです。

 まずは時代比較から。私は,各学校種の本務教員の女性比率が,1950年(昭和25年)以降,どのように変化してきたのかを調べました。資料は,文科省の『学校基本調査』です。以前は,図書館に出向き,各年度版の資料から数字を採取し,それらをつなぎ合わせなければいけませんでした。しかし,現在はネット時代。官庁統計のデータは,e-Stat(政府統計の総合窓口)で軒並み閲覧することができます。

 教員数のような基本的なデータについては,長期的な推移をまとめた表がアップされています。そこから必要な数字(全教員数,女性教員数)をエクセルにコピペし,割り算をするだけで,直ちに目標を達成することができました。元データの入力作業も不要。便利な時代になったものです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001015843&cycode=0

 最初に,初等・中等教育機関(幼稚園,小学校,中学校,高等学校,特別支援学校)の教員の女性比を跡づけてみます。各学校種の女性比の折れ線を一つのグラフにまとめることも考えましたが,それだと見づらいので,学校種ごとに,男女の組成の変化が分かる面グラフをつくりました。


 カッコ内の数字は,始点(1950年)と終点(2011年)の女性比の値です。小学校でいうと,この60年間で,女性教員の比率が49.0%から62.8%まで高まったことを示唆します。

 幼稚園の教員は,いつの時代でも,9割以上が女性です。教員の最も多くを占める小学校教員は,今でこそ女性比が6割以上ですが,戦後初期の頃は半分程度だったのですね。中学校や高校のような中等教育機関でも,教員の女性比は伸びていますが,初等教育段階に比べると,その水準は低いようです。高校教員の女性比率は,3割にも届きません。

 障害のある子どもを教育する特別支援学校は,2006年までのデータは,盲学校・聾学校・養護学校のものであることに留意ください。特別支援学校教員の女性比は,この期間中に,4割から6割に増えています。5つの学校種の中では,女性比の伸びが最も大きいようです。

 次に,短大と大学という,高等教育機関の教員の女性比率を観察しましょう。研究者の女性比を高めようという取組が盛んですが,その効果は如何。


 短大では,女性教員の比率が高いようです。現在では,半分を超えています。しかし,大学は今でも2割ほどです。それでも,昔に比べて女性比が高まっていることは,注目してよいでしょう。1950年では,大学教員の女性比はたったの5.6%でした。大学教員の女性比の伸び幅は,全学校種で最も大きいことも付記しておきます。

 グラフをよく見ると,短大,大学とも,1990年代以降の女性比の伸びが顕著です。大学でいうと,1990年の女性比は9.2%でしたが,2011年では20.6%になっています。この20年間で,女性比が倍増したわけです。この期間中の男女共同参画の取組の効果と評してよいと思います。

 とはいえ,絶対水準でいうと,わが国の大学教員の女性比は2割ほどです。5人に1人。これは,他国と比べてどうなのでしょう。また,前に戻りますが,高校教員の女性比(約3割)の国際的な位置も気になります。

 OECDの"Education at a Glance 2010"から,主要国における,高校と高等教育機関の教員の女性比率を知ることができます(下記サイトのIndicator D7)。高等教育機関(Tertiay education)とは,日本でいうと,大学,短大,そして高専に相当すると思われます。大学だけのデータは,ペンディングになっている国が多かったので,高等教育機関の教員の女性比を比較することにしました。
http://www.oecd.org/document/52/0,3343,en_2649_39263238_45897844_1_1_1_1,00.html#d

 上記の資料から,わが国を含む30か国について,高校と高等教育機関の女性教員比率を得ました。下図は,横軸に高校教員,縦軸に高等教育機関の女性教員比率をとった座標上に,30か国を位置づけたものです。点線は,30か国の平均値です。


 悲しいかな,わが国はかなり孤立した位置にあります。高校教員の女性比26.4%,高等教育機関の教員の女性比18.5%という水準は,国際的にみて,明らかに低いと判断されます。

 わが国と対極の位置にあるのがロシアです。この国では,高校教員の8割,高等教育機関の教員の半分以上が女性です。ほか,フィンランドやスロバキアなど,北欧・東欧の国が,図の右上に位置しています。上級の学校において,女性教員の進出が進んでいる国と評されます。

 うーん。政府が,女性研究者の比率を高めることに躍起になるのも無理からぬことでしょう。世の中には,男女が半々ずついます。にもかかわらず,研究者の世界では,男性4:女性1という有様。わが国の現状を異常と判断するのに,国際比較の統計を持ち出すまでもなかったかもしれません。

 放置していては状況が一向に改善しないので,お上が人為的な施策に乗り出している,ということでしょう。はて,男女共同参画基本計画が「指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%」とすることを目指している2020年のわが国は,上図のマトリクスでは,どのような位置を占めるでしょうか。韓国あたりでしょうか。少なくとも,仲間はずれの位置を脱し,他国の群れの中には入ってほしいものです。

2012年3月3日土曜日

30代後半の男性未婚者の状態

私は,35歳の未婚者です。「35歳の壁」とはよく聞く言葉ですが,「35歳過ぎると結婚はほぼ不可能」という論もあり,話題を呼んでいる模様です。
http://www.j-cast.com/2011/12/30117585.html

 2010年の『国勢調査』によると,35~39歳の未婚者は2,818,690人だそうです。同年齢の人口に占める比率は28.8%,およそ3割,3人に1人です。はて,30代の後半にもなって,なぜ独身のままでいるのでしょうか。仕事が楽しくてしょうがなく,家庭という足かせに縛られたくない,という人もいるでしょう。しかるに大半が,結婚したくてもそれが叶わない人ではないでしょうか。

 必死に婚活をしているものの,お見合いパーティーなどに行けば,真っ先に投げかけられる質問は「お仕事は?」でしょう(とくに男性)。それに対し,「ハケン」や「バイト」などと答えようものなら,かなりの確率で会話がフリーズすると推測されます。

 私は大学講師ですが,「非常勤」という3字を間に挟んだら,おそらく同じ結果になると思われます。水月昭道さんの『ホームレス博士』(光文社新書,2010年)は,婚活中の女性に対し,大学講師と名乗る博士に気をつけろ,という警告を発しています(42~45頁)。大学講師でも,常勤(専任)講師と非常勤講師では大違い。この本を読んで,警戒心を抱いている女性も少なくないことでしょう。

 私は,自分と同じ30代後半の未婚男性に,どういう状態の人が多いのかを知りたくなりました。事例研究的に,何人かにインタビューをしたにしても,プライドというのがあるでしょうから,本当のことはなかなか言いますまい。それよりも,マクロな統計によって,俯瞰的に眺めたほうがよいかと思います。

 2010年の『国勢調査』の産業等基本集計結果から,対象者の就労状態を配偶関係別に知ることができます。現在,産業等基本集計の結果が公表されているのは22の県の分ですが,前回と同様,栃木県のデータを使います。22の県の中で,最も都市性が高いと考えられるからです。

 下記サイトの表2-2より,30代後半の未婚男性について,就業者が何人,失業者が何人,家事従事者が何人,という統計を採取できます。また表3から,就業者の「従業上の地位」の内訳(正規,ハケン,バイト・・・)を把握することが可能です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001037602&cycode=0

 これらの統計を使って,栃木県の30代後半の未婚男性の状態をあぶり出してみました。なお,未婚者の特徴を検出するため,同性・同年齢の有配偶者の状態と比較してみます。下表をご覧ください。


 35~39歳の未婚男性は2万8千人,有配偶者は4万7千人ですが,その内訳はかなり違っています。まず正規雇用者の比率ですが,未婚者は55.6%,有配偶者は77.8%です。20ポイント以上もの差があります。その分,未婚者では,ハケンやパート・バイトといった不安定就労の比重が高くなっています。

 違っているのは,就業者の内訳だけではありません。求職活動をしつつも職に就けていない失業者の比率も異なっています。未婚者は11.9%,有配偶者は1.8%です。また,求職活動をせず,かといって家事も通学もしていない非就業者(≒ニート)も,未婚者で多いようです。未婚者のニート率は,有配偶者の14倍にもなります。

 乱暴に括ると,未婚者のうち約4割の者(正規雇用,業主等を除く)が,婚活の場で肩身の狭い思いをせざるを得ない状態に置かれているようです。むろん,残りの6割の者でも,そういう輩は少なくないことでしょう。正社員といっても,ピンからキリまでですし。いずれにせよ,非自発的な理由で未婚状態にとどまっている者が多いことをうかがわせる統計です。

 ついでに,未婚者の学歴構成もみてみましょう。学歴は,女性が結婚相手に求める「3高条件」の一つです。はて,30代後半の未婚男性の学歴構成は如何。先ほどと同様,有配偶者と比較してみます。下表は,上記サイトの表10-1から作成したものです。学校卒業者の統計ですので,前掲の表の合計値とは一致しないことに留意ください。


 いかがでしょう。高卒以下の者の比率は,未婚者が56.2%,有配偶者が49.8%で,前者のほうが高くなっています。一方,大卒者の比重は,有配偶者のほうが高くなっています。予想的中といいますか,未婚者の方が学歴構成は低いようです。

 むーん。結婚とは,相思相愛の男女の合意に基づく行為ですが,その相思相愛の感情すら,諸々の社会的な条件に規定されている現実を突き付けられたようで,やや複雑な思いがします。

 映画『コクリコ坂から』の主人公(松崎海)の母親は,医者の家庭の生まれで,自身も大学助教授という,当時の女性としてはバリバリのエリートです。しかるに,彼女が結婚相手に選んだのは,澤村雄一郎という一介の船乗りでした。当然,実家から猛反対されるのですが,最後は「駆け落ち」という手段によって強引に一緒になり,海,空,そして陸という3人の子を授かります。

 長女の海にしても,恋心を抱いているのは,風間俊という,こちらも船乗り労働者の子弟です。こういう型破り?な恋愛が描かれているところに,この作品の魅力を感じるのは,私だけでしょうか。すみません。この映画を汚すような発言ととられるのであれば,お詫びします。

 えーと,当初の関心は,自分と同性・同年齢の未婚者の状態がどういうものかを知ることでした。やはり,非自発的な意味合いでの未婚者が多いのだろうな,という感想を持ちました。愚痴がこぼれそうなので,この辺りで止めにします。

2012年3月2日金曜日

年齢別の在学・就業状況

総務省『国勢調査報告』(2010年)の産業等基本集計の結果が,ぼちぼち公表されているようです。現在,集計が完了した22の県の結果が公表されています。

 産業等基本集計(以前の用語では第二次基本集計)では,対象者の在学学校や最終学歴について明らかにされています。教育社会学者にすれば,ヨダレの出そうな内容が盛りだくさんです(失敬!)。

 今回は,このデータを使って,子ども・若者の年齢別の在学状況ないしは就業状況を細かくみてみようと思います。学校化が進んでいる今日,20歳を過ぎても学校に通っている者が少なくないでしょう。低年齢層では,幼稚園や保育所に在籍している幼児が多くなっていることと思われます。「0歳保育」という言葉があるように,生後すぐに保育所に入れられる乳児もいます。

 なお,子どもの世界の「学校化」の様相に加えて,若者の就労状況がどのようなものかにも関心が持たれます。かつては,20歳,少なくとも25歳を過ぎれば,大半の者が就業していたのでしょうが,今日ではどうなのかしらん。このご時世です。働きたくても職にありつけない失業者や,求職活動から下りてしまったニートのような人種もいることと思います。

 子ども・若者の1歳刻みの人口ピラミッドを,在学している学校種や就業状態で塗り分けてみると,どういう模様になるでしょうか。

 先に言いましたように,産業等基本集計の結果が公表されているのは,22の県です。いずれも地方県ですが,この中で比較的都市性が高いと考えられる栃木県のデータを使うこととしました。下記サイトの表13-1から,同県の0~29歳人口の在学学校種を,1歳刻みで知ることができます。15歳以上の就業状況の統計は,表1-1の労働力状態の集計表から得ました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001037602&cycode=0

 これらのデータを使って,20代までの在学・就業状況の人口ピラミッドを描いてみると,下図のようになります。「その他・不詳」は,全人口から残りのカテゴリーの総和を差し引いた値です。


 少子化が進んでいるので,低年齢層ほど人口が少なくなっています。その低年齢層ですが,学齢前の段階をみると,幼稚園や保育所に在籍している幼児が多いようです,生後間もない0歳でも,保育所在所児が5.4%います。幼稚園・保育所在籍率は,1歳が23.8%,3歳が65.9%,5歳が93.8%です。乳幼児期の「施設化」が進行していることが知られます。

 6歳から15歳までの学齢期は,義務教育学校(小・中学校)の在学者で埋め尽くされています。しかし,小・中学校の在学者と全人口が完全に一致するわけではありません。10歳でいうと,両者の差分として59人が検出されます。10歳人口の0.3%に相当します。調査の回答漏れかもしれませんが,不就学児ということも考えられます。

 その上の16歳,17歳では,高校生が多くを占めます。19歳になると,大学や短大の在学者が半分ほどを占めています。高校進学率95%超,大学進学率50%超となった社会の状況を反映しています。東京のような都市部では,高等教育機関の学生のウェイトはもっと大きいことでしょう。

 大学を卒業する22歳では,就業者(主に仕事)の比率が最も高くなります。就業者率は,22歳は56.7%,25歳は71.9%,29歳は68.3%です。29歳になって就業者率が下がるのは,女性の結婚退職というような要因が考えられます。事実,家事従事者の比率が20代後半にかけて増しているのが明らかです。

 なお,一番右端の「その他・不詳」というカテゴリーですが,学齢前の幼児の場合は,自宅で保育を受けている者のことです。しかし,15歳や20歳を超えた若者となると,教育も受けていない,仕事もしていない,いわゆるニートに近い輩であると思われます。

 その比率をとると,22歳では8.4%,25歳では10.5%,29歳では12.7%です。約1割。同一の世代を追跡したデータではありませんが,年齢を上がるほど,この層の比重が高まっていくというのはやや気がかりです。もっとも,調査への回答を拒んだ者もこの中に含まれますが。

 最後に,子ども・若者の世界における,在学者の比重を可視化しておきます。幼稚園から大学・大学院までの在学(在園)者を「在学者」,それ以外を「非在学者」とし,両者の組成図をつくってみました。


 在学者(青色)と非在学者(赤色)の領分が,ちょうど半々というところでしょうか。しかし,下は2歳,上は21歳において,在学者率が3割を超えるというのは,今日的な特徴といえましょう。

 「三丁目の夕日」(1958年)や「コクリコ坂から」(1963年)の時代では,10代後半になると,在学者の比率が6割ほどまで減少すると思われます。学齢前でいうと,幼稚園や保育所に通う子どもはごくわずかでした(昨年の2月26日の記事を参照)。いずれにせよ,昔の統計を使って同じ図を描いたら,模様は全く違ったものになるでしょう。

 幼児期の「施設化」,児童期・青年期の「学校化」の進行は,多くの子ども・青年に教育の機会が開かれたことと表裏です。その意味で,上図のような模様は,他の社会に誇れるものといえるかもしれません。

 ですが,好むと好まざるとに関係なく,上級学校への進学を社会的に強制される問題や,子ども・青年の実生活からの乖離という問題も看過し得ないところです。また,最高レベルの教育を受けた人材が社会の中に活躍の場を見出せない状況も顕在化してきています。上図をみると,25歳以上でも青色の領分が少しありますが,多くが大学院博士課程の在学者でしょう。彼らの行く末については,懸念が持たれるところです。

 今後,在学者の領分がますます広がっていくのか,あるいは,上記のような諸問題が深刻化し,それに歯止めがかかるのか。この点についての判断には,もう少し時間が要るようです。

 今回は栃木県のデータを分析しましたが,公表され次第,東京や全県についても,同様の統計図をつくってみようと思います。

2012年3月1日木曜日

予備校生の減少

予備校とは,現役の高校生や浪人生を対象として,大学受験のための準備教育を行う機関です。制度上は,各種学校に含まれます。この予備校ですが,大学全入時代の到来により,顧客はさぞ減っていることでしょう。

 大学や短大の学生数のデータは,新聞や文科省の白書などでよく目にするのですが,予備校の生徒がどれほどいるか,またどのように推移してきたか,ということはあまり明らかにされていないようです。興味を持ったので,当局の資料に当たって調べてみました。

 文科省『学校基本調査(初等中等教育機関・専修学校・各種学校編)』の「各種学校」の章に,「課程別修業年限別生徒数」という表があります。この表に,予備校の生徒数が掲載されています。2011年度版の資料によると,同年5月1日時点における予備校生の数は24,060人となっています。主要な顧客である18歳人口が約120万人であることを思うと,いかにも少ない印象を持ちます。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001037159&cycode=0

 おそらく,減少に減少を経て,2万4千人という水準に至っているのだと思います。上記資料の各年度版をつなぎ合わせて,予備校生数の推移をとだってみました。下図は,それをグラフ化したものです。


 1970年(昭和45年)から現在までの,約40年間の推移が描かれています。これによると,ピークは1977年の23万3千人だったようです。昨年の3月29日の記事でみたように,この頃は,受験競争が激しかった頃です。大学受験者のおよそ3割が不合格になっていました。それだけ浪人生も多く,予備校への需要も多かったことと思います。

 しかし,そうした「ウハウハ」の時代も長くは続きません。1980年代の半ば頃から生徒数が減少し,90年代以降,その速度がさらに高まっています。1990年では14万2千人だったのが,2000年には4万9千人になり,2011年の2万4千人に至っています。ピークの1977年を基準とすると,予備校生の数はおよそ10分の1にまで減ったことになります。

 理由については,申すまでもありますまい。18歳人口の減少,浪人生の減少によるものです。大学入学者に占める浪人経由者の比重が減じていることは,昨年の5月22日の記事で指摘した通りです。

 しかるに,主要な顧客である浪人生においても,予備校離れが進んでいるのではないでしょうか。2011年4月の大学入学者のうち,浪人経由者は81,228人です(文科省『学校基本調査・高等教育機関編』)。前年(2010年)の5月1日時点の予備校生は24,559人です。ごく単純に考えると,2011年春の浪人入学者のうち,予備校に依存していた者は約3割ということになります。

 この尺度は,浪人生の予備校依存度を測るものとして使えるでしょう。私は,1900年,2000年,そして2011年春の浪人経由の大学入学生について,この指標を計算してみました。


 1990年では,浪人経由者の多くが予備校通いをしていたと推測されますが,時を経るにつれ,予備校依存度がガクン,ガクンと落ちてきます。正確ではありませんが,浪人生の予備校離れをうかがわせる統計です。

 大学に入りやすくなってきているので,「宅浪(タクロウ)」を選ぶ浪人生も増えていることでしょう。近年の不況も,それを後押ししていることと思います。

 大学や短大と同様,予備校も大変ですね。そういえば,首都圏大学非常勤講師組合の機関紙『控え室』の第81号に,予備校講師の悲惨を綴ったエッセイが載っていました(雇い止め,給与減少のスパイラル・・・)。大学非常勤だけでは足りず,予備校講師も兼任して糊口をしのいでいる無職博士も多いことでしょう。彼らの稼ぎ口はやせ細っていくばかりです。
http://hijokin.web.fc2.com/

 とはいえ,予備校という各種学校は,大学などと比べたら,ある程度の柔軟性を備えています。大学受験者だけでなく,公務員試験受験者などもターゲットに据えることが可能です。大手の河合塾などは,かなり手広くやっている模様です。
http://www.kawai-juku.ac.jp/

 最初の統計グラフをもう一度みてほしいのですが,予備校生の数は,2008年以降微増しています。それぞれの予備校の柔軟な経営戦略が効をなしているのかもしれません。

 塚田守教授の『予備校生のソシオロジー-一年の予備校生活-』(大学教育出版,1999年)は,予備校が内在している社会化効果を扱った研究です。これは大学受験者を対象とした研究ですが,公務員受験者を対象に据えてみても,面白いと思います。

 たとえば,新規採用教員を対象として,予備校経験者とそうでない者とで,資質や実践的力量に差があるかどうか,という問題を追究してみたらどうでしょう。予備校は,大学と並んで,教員養成の重要な一翼を担っているとも考えられます。ダブル・スクールをしている学生さんも多いようですし。

 話が脱線しましたが,予備校が秘めている柔軟性,潜在的可能性に注目したいと思います。激変の時代といわれる今日,各種学校は,正規の学校(一条学校)にはない利点を備えている,といえるかもしれません。