教員の死亡率は,どれほどなのでしょうか。激務の仕事なので,人口全体の死亡率よりも高いのではないかと思われますが,数字を出してみるとどうなのでしょう。
2010年度の文科省『学校教員統計調査』の中間報告によると,2009年度中に,死亡という理由で離職した小学校教員の数は219人だそうです。この年の5月1日時点の小学校の本務教員数は419,518人です。よって,2009年度間の小学校教員の死亡率は,1万人あたりにすると5.2人と算出されます。百分率にすると,0.05%ほどです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001016172
ちなみに,2009年中の20~59歳人口の死亡率は,1万人あたり16.5人です(厚労省『人口動態統計』より計算)。先の予想に反して,小学校教員の死亡率は,同年齢層の人口全体のそれよりも低くなっています。他の学校種の死亡率も,そうなのでしょうか。幼稚園から大学までの各学校種について,教員の死亡率を出してみました。2009年度間の統計です。
どの学校種の死亡率も,人口全体の死亡率(16.5)を下回っています。6月25日の記事で,教員の自殺率を出したのですが,自殺率も,人口全体の数字をかなり下回っていました。この記事をみて,「教職は本当に過酷なのか」という疑念を表明しておられる方がいます。それが当たっているかどうかはさておき,常識に挑戦するような,ユニークな見解が出てくるのは好ましいことです。
http://plaza.rakuten.co.jp/123manglove/diary/20110814/
ところで,学校種間で死亡率を比較すると,上級の学校ほど高いことが知られます。前回は,精神疾患による離職率を出したのですが,そこでは,下の学校ほど値が高い傾向がみられました。しかし,死亡率は,それとは真逆の傾向になっています。
様相を分かりやすくするため,精神疾患による離職率と,死亡による離職率(=死亡率)をグラフ化してみました。双方とも,2009年間の数字です。
高等学校以降になると,精神疾患の罹患率よりも,死亡率のほうが高くなります。大学では,後者は前者の6倍以上です。学術研究のような知的活動には,多大なストレスが伴うといいます。「研究者は早死にする」という趣旨の文章を,何かの本で読んだ覚えがあります。大学の先生なんてラクでいいよね,などと揶揄されることが多いのですが,研究者には,研究者なりの気苦労もあるのです。
教員の死亡率は,文科省の『学校教員統計』のバックナンバーをたどれば,過去からの時系列推移を明らかにすることが可能です。機会をみつけて,手がけてみようと思います。
2011年8月31日水曜日
2011年8月29日月曜日
精神疾患による教員の離職率
7月の末に公表された,2010年度の文科省『学校教員統計調査』の中間報告では,前年度(2009年度)間に離職した教員の数が明らかにされています。理由別の数字が載っているのですが,そのカテゴリーの区分が以前よりも詳しくなっていて,精神疾患を理由とした離職者の数も知ることができます。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001016172
上記サイトの教員異動調査の中に,「離職の理由別・離職教員数」という表がアップされています。この表から,各学校種について,精神疾患を理由とした離職者数をハンティングしました。下表のbです。これを,2009年5月1日時点の本務教員数(a)で除して,精神疾患を理由とした,教員の離職率を計算しました。aは,2009年度の文科省『学校基本調査』から得ています。
精神疾患の理由とした離職率は,幼稚園でダントツに高くなっています。1万人あたり20.7人,百分率にすると0.2%です。以後,階梯を上がるにつれて,離職率は減じていきます。
以前,理由不詳の離職者数を分子に充てた離職率を出したのですが,そこでは,上級の学校ほど,率が高い傾向がみられました。ですが,精神疾患という理由の離職に限定すると,離職率は,下の学校ほど高いようです。
幼い子どもを預かる幼稚園では,躾(しつけ)をしてほしい,もっと長時間預かってほしいなど,理不尽な要求を突きつける,モンスター・ペアレントの問題が,小・中学校にもまして大きいのかも知れません。核家族化,共働き化が進むなか,幼児をほったらかしにする親も増えていることでしょう。近年,教職の危機についてよく取り沙汰されますが,就学前の教育機関である幼稚園の困難に,もっと目を向ける必要もあるかと思います。
幼稚園から高等学校までの各学校種について,精神疾患による離職率を属性別に出すと,以下のようです。
性別では,男性よりも女性の率が高くなっています。精神疾患を患う確率は,どの学校段階においても,女性教員のほうが高いようです。学校の設置主体別にみると,公立校よりも私立校で離職率が高くなっています。小学校では,私立は公立の倍以上です。ブルジョア階層の子弟を受け入れる私立小学校では,保護者の要求もひときわ厳しい,ということでしょうか。
低年齢の幼児や児童を預かる学校の教員ほど,精神疾患を患う確率が高い,ということが明らかになりました。少子化で,子どもの数はどんどん減ってきています。教員1人が受け持つ子どもの数(PT比)も,昔に比べれば格段に少なくなっています。しかし,少なくなった顧客を,腫れものに触れるかのごとく,丁重に最大限の神経を使って扱わなければならない,教員の気苦労をお察しします。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001016172
上記サイトの教員異動調査の中に,「離職の理由別・離職教員数」という表がアップされています。この表から,各学校種について,精神疾患を理由とした離職者数をハンティングしました。下表のbです。これを,2009年5月1日時点の本務教員数(a)で除して,精神疾患を理由とした,教員の離職率を計算しました。aは,2009年度の文科省『学校基本調査』から得ています。
精神疾患の理由とした離職率は,幼稚園でダントツに高くなっています。1万人あたり20.7人,百分率にすると0.2%です。以後,階梯を上がるにつれて,離職率は減じていきます。
以前,理由不詳の離職者数を分子に充てた離職率を出したのですが,そこでは,上級の学校ほど,率が高い傾向がみられました。ですが,精神疾患という理由の離職に限定すると,離職率は,下の学校ほど高いようです。
幼い子どもを預かる幼稚園では,躾(しつけ)をしてほしい,もっと長時間預かってほしいなど,理不尽な要求を突きつける,モンスター・ペアレントの問題が,小・中学校にもまして大きいのかも知れません。核家族化,共働き化が進むなか,幼児をほったらかしにする親も増えていることでしょう。近年,教職の危機についてよく取り沙汰されますが,就学前の教育機関である幼稚園の困難に,もっと目を向ける必要もあるかと思います。
幼稚園から高等学校までの各学校種について,精神疾患による離職率を属性別に出すと,以下のようです。
性別では,男性よりも女性の率が高くなっています。精神疾患を患う確率は,どの学校段階においても,女性教員のほうが高いようです。学校の設置主体別にみると,公立校よりも私立校で離職率が高くなっています。小学校では,私立は公立の倍以上です。ブルジョア階層の子弟を受け入れる私立小学校では,保護者の要求もひときわ厳しい,ということでしょうか。
低年齢の幼児や児童を預かる学校の教員ほど,精神疾患を患う確率が高い,ということが明らかになりました。少子化で,子どもの数はどんどん減ってきています。教員1人が受け持つ子どもの数(PT比)も,昔に比べれば格段に少なくなっています。しかし,少なくなった顧客を,腫れものに触れるかのごとく,丁重に最大限の神経を使って扱わなければならない,教員の気苦労をお察しします。
2011年8月27日土曜日
教免取得者の教職志望
2009年度(2009年4月~2010年3月)の大学等卒業者で,小学校の教員免許状を取得したのは18,937人です。2010年度(2010年4月採用)の小学校教員採用試験の新卒受験者は,15,005人です。単純に考えると,2009年度の小学校教員免許取得者のうち,小学校の教壇に立つことを志して採用試験に挑んだ者の比率は79.2%となります。およそ8割です。
裏返すと,残りの約2割の者は,免許を取得しつつも,教員を志望しないということで,試験を受験しなかったことになります。この中には,大学院で専修免許を取得してから試験に臨もうという者も含まれるでしょうが,大半が,いわゆる「ペーパー・ティーチャー」の予備軍であると考えてよいと思います。
このような人種が増えることは,あまり歓迎できたものではありません。少なくとも,学校現場では,そのような見方が強いようです。教員免許の取得には,2~3週間の教育実習が必須ですが,実習生の指導をボランティアで引きうける(引き受けさせられる),現場の先生方が,上記の数字をみたら,どのように思うでしょうか。憤りを感じる方もおられることでしょう。
7月17日の記事でも申しましたが,採用試験を受験することを,実習生受け入れの条件にしている学校が多いと聞きます。中には,念書を書かせる学校もあるそうです。教職を志望しない者の実習指導に,多大な労力を割かなければならない謂われはありません。現場の先生方のお気持ち,お察しします。*私が言えたことではないのですが…
さて,小学校の免許取得者の採用試験受験率は,2009年度の卒業者では79.2%なのですが,この値は過去からどう推移してきたのでしょうか。私は,1984年度の卒業者から,この指標の推移を跡づけてみました。資料は,文部省(文部科学省)『教育委員会月報』(第一法規)のバックナンバーです。1996年度の卒業者のみ,数字が見つからなかったので,ペンディングにしています。
上表によると,免許取得者は減ってきています。少子化による需要減少を見越して,教職課程の定員が削られていることによるものでしょう。併行して,試験の受験者も減じてきています。後者を前者で除した試験受験率は,1984年度卒業者では88.8%でしたが,それは1999年度の63.1%まで下降します。その後は上昇に転じ,2009年度の79.2%に至っています。
今世紀以降,受験率が高まっているのは,教職課程への当局の指導が強まっているためでしょう。2006年7月の中教審答申「今後の教員養成・免許制度の在り方について」は,教育実習の改善・充実に関連して,「課程認定大学は,教員を志す者としてふさわしい学生を,責任を持って実習校に送り出すことが必要である」とし,「実習開始後に学生の教育実習に臨む姿勢や資質能力に問題が生じた場合には,課程認定大学は速やかに個別指導を行うことはもとより,実習の中止も含め,適切な対応に努めることが必要である」と指摘しています。こうした状況のなか,「ただ免許だけ…」という学生は,相当淘汰されていることと推察されます。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/06071910/008.htm
上記の統計は,小学校の免許取得者のものですが,中学校や高校の免許取得者についてはどうでしょう。各学校種の免許取得者の試験受験率をグラフにしました。下図をご覧ください。
中学校や高校では,免許取得者の採用試験受験率はかなり低くなっています。2009年度でいうと,中学校は36.1%,高校は13.7%です。逆にいうと,中学では73.9%,高校では86.3%の者が「ペーパー・ティ―チャー」予備軍です。
中高では,専修免許を取ってから試験を受験する傾向が強いので,こういう結果になっている面もあると思いますが,この数字はいかがなものかという気もします。現場の先生方は,どのような感想をお持ちになるでしょうか。高校に実習生が5人来たとしたら,そのうちの4人は,腹の底では「試験は受験しまい」と考えているわけです。
中高の教員免許は,現在,ほとんどの大学で取得することができます。2009年度の免許取得者は中学校が47,739人,高校が61,990人です。小学校に比して,かなり多いです。その分,安易な考えで教職課程を履修する学生も少なくない,ということなのでしょう。
免許を取ったが試験は受験しなかった「ペーパー・ティーチャー」予備軍は,2009年度の場合,小・中・高すべて合わせて87,936人です。ここ数年,毎年,8~9万人ほどの「ペーパー・ティーチャー」予備軍が輩出されています。教育投資に見合った収益回収という点からすると,どういう判断が下されるでしょうか。
現在,莫大な投資をして育成した博士号取得人材が無職のまま留置かれるという,無職博士問題が深刻になっています。ペーパー・ティーチャー問題という,社会問題が構築される日も来るかもしれません。
裏返すと,残りの約2割の者は,免許を取得しつつも,教員を志望しないということで,試験を受験しなかったことになります。この中には,大学院で専修免許を取得してから試験に臨もうという者も含まれるでしょうが,大半が,いわゆる「ペーパー・ティーチャー」の予備軍であると考えてよいと思います。
このような人種が増えることは,あまり歓迎できたものではありません。少なくとも,学校現場では,そのような見方が強いようです。教員免許の取得には,2~3週間の教育実習が必須ですが,実習生の指導をボランティアで引きうける(引き受けさせられる),現場の先生方が,上記の数字をみたら,どのように思うでしょうか。憤りを感じる方もおられることでしょう。
7月17日の記事でも申しましたが,採用試験を受験することを,実習生受け入れの条件にしている学校が多いと聞きます。中には,念書を書かせる学校もあるそうです。教職を志望しない者の実習指導に,多大な労力を割かなければならない謂われはありません。現場の先生方のお気持ち,お察しします。*私が言えたことではないのですが…
さて,小学校の免許取得者の採用試験受験率は,2009年度の卒業者では79.2%なのですが,この値は過去からどう推移してきたのでしょうか。私は,1984年度の卒業者から,この指標の推移を跡づけてみました。資料は,文部省(文部科学省)『教育委員会月報』(第一法規)のバックナンバーです。1996年度の卒業者のみ,数字が見つからなかったので,ペンディングにしています。
上表によると,免許取得者は減ってきています。少子化による需要減少を見越して,教職課程の定員が削られていることによるものでしょう。併行して,試験の受験者も減じてきています。後者を前者で除した試験受験率は,1984年度卒業者では88.8%でしたが,それは1999年度の63.1%まで下降します。その後は上昇に転じ,2009年度の79.2%に至っています。
今世紀以降,受験率が高まっているのは,教職課程への当局の指導が強まっているためでしょう。2006年7月の中教審答申「今後の教員養成・免許制度の在り方について」は,教育実習の改善・充実に関連して,「課程認定大学は,教員を志す者としてふさわしい学生を,責任を持って実習校に送り出すことが必要である」とし,「実習開始後に学生の教育実習に臨む姿勢や資質能力に問題が生じた場合には,課程認定大学は速やかに個別指導を行うことはもとより,実習の中止も含め,適切な対応に努めることが必要である」と指摘しています。こうした状況のなか,「ただ免許だけ…」という学生は,相当淘汰されていることと推察されます。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/06071910/008.htm
上記の統計は,小学校の免許取得者のものですが,中学校や高校の免許取得者についてはどうでしょう。各学校種の免許取得者の試験受験率をグラフにしました。下図をご覧ください。
中学校や高校では,免許取得者の採用試験受験率はかなり低くなっています。2009年度でいうと,中学校は36.1%,高校は13.7%です。逆にいうと,中学では73.9%,高校では86.3%の者が「ペーパー・ティ―チャー」予備軍です。
中高では,専修免許を取ってから試験を受験する傾向が強いので,こういう結果になっている面もあると思いますが,この数字はいかがなものかという気もします。現場の先生方は,どのような感想をお持ちになるでしょうか。高校に実習生が5人来たとしたら,そのうちの4人は,腹の底では「試験は受験しまい」と考えているわけです。
中高の教員免許は,現在,ほとんどの大学で取得することができます。2009年度の免許取得者は中学校が47,739人,高校が61,990人です。小学校に比して,かなり多いです。その分,安易な考えで教職課程を履修する学生も少なくない,ということなのでしょう。
免許を取ったが試験は受験しなかった「ペーパー・ティーチャー」予備軍は,2009年度の場合,小・中・高すべて合わせて87,936人です。ここ数年,毎年,8~9万人ほどの「ペーパー・ティーチャー」予備軍が輩出されています。教育投資に見合った収益回収という点からすると,どういう判断が下されるでしょうか。
現在,莫大な投資をして育成した博士号取得人材が無職のまま留置かれるという,無職博士問題が深刻になっています。ペーパー・ティーチャー問題という,社会問題が構築される日も来るかもしれません。
2011年8月25日木曜日
気候と肥満
東京都内49市区の統計でみると,生活保護世帯率が高い地域ほど,肥満児出現率が高い傾向にあります(1月12日の記事を参照)。貧困家庭における食生活の乱れや,ジャンクフードへの依存というようなことが考えられます。
このように,子どもの肥満は社会的要因と結びついているのですが,自然的・風土的要因とも関連していることを示唆する統計があります。
文部科学省の『学校保健統計』から,子どもに占める肥満傾向児の比率を県別に知ることができます。ここでいう肥満傾向児とは,「身長別標準体重から肥満度を求め,肥満度が20%以上の者」だそうです。最新の2010年度調査によると,10歳児の場合,この意味での肥満児の比率は9.3%となっています。この比率を県別に出し,地図化すると,以下のようです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001029865&cycode=0
最大値は北海道の14.7%,最小値は鳥取の6.1%です。両地域では,率に倍以上の差があります。このような差の大きさもさることながら,もっと注目されるのは,高率地域が,東北や北海道といった北国に偏在していることです。
このことは,気候と肥満児出現率が関連していることを意味します。具体的にいうと,寒い地域ほど肥満児が多い,ということです。事実,上記の県別の肥満児出現率は,各県の平均気温と負の相関関係にあります。下図をご覧ください。相関係数は-0.432で,1%水準で有意です。
このデータをどう解釈したものでしょう。講義の受講生に,秋田出身の学生がいたので尋ねたところ,ご飯がおいしいからじゃないですか,という返答でした。とくに秋田では,イカの塩辛など,辛いものが美味いのだそうで,その分,ご飯もススムのだとのこと。ユニークな見解です。
しかし,寒冷な気候との相関を考えると,雪に閉ざされた冬場の運動不足という要因が大きいのではないでしょうか。先の学生によると,冬場では子どもは外で遊べないばかりか,登下校も,保護者の車で送迎してもらうのだそうです。
気候と肥満の結びつきの度合いが,低学年の児童ほど大きいことを考えると,なるほどと思います。6~14歳の各年齢について,肥満児出現率を県別に出し,平均気温との相関をとってみると,低年齢ほど,相関係数の絶対値が高い傾向にあります。
肥満児率の地域差が大きいのも,低年齢の児童です。6歳では,最高の青森と最低の京都では,実に4倍を超える開きがあります。そうした差を規定する要因として,気候のような自然要因が大きい,ということです。低年齢の児童は,家族の庇護に依存する度合いが高いことによるものでしょう。雪の日に,車で送迎してもらう頻度も,低年齢の児童のほうが高いことと思われます。
子どもの肥満化の問題は,当局も認識しているところであり,それへの対策として,食育の充実というようなことがいわれています。しかし,お上の政策文書をみると,肥満の要因として決して小さくない,社会的要因(貧困)や自然的要因(気候)に触れられていないことが気がかりです。
寒冷な気候という自然条件を克服するための手がかりは,2番目の相関図の中に含まれています。当該の図によると,山形と長野は,平均気温は同じくらいですが,肥満児率が大きく異なっています。この差は何に由来するのか。長野県の教育実践の中身が注目されるところです。
このように,子どもの肥満は社会的要因と結びついているのですが,自然的・風土的要因とも関連していることを示唆する統計があります。
文部科学省の『学校保健統計』から,子どもに占める肥満傾向児の比率を県別に知ることができます。ここでいう肥満傾向児とは,「身長別標準体重から肥満度を求め,肥満度が20%以上の者」だそうです。最新の2010年度調査によると,10歳児の場合,この意味での肥満児の比率は9.3%となっています。この比率を県別に出し,地図化すると,以下のようです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001029865&cycode=0
最大値は北海道の14.7%,最小値は鳥取の6.1%です。両地域では,率に倍以上の差があります。このような差の大きさもさることながら,もっと注目されるのは,高率地域が,東北や北海道といった北国に偏在していることです。
このことは,気候と肥満児出現率が関連していることを意味します。具体的にいうと,寒い地域ほど肥満児が多い,ということです。事実,上記の県別の肥満児出現率は,各県の平均気温と負の相関関係にあります。下図をご覧ください。相関係数は-0.432で,1%水準で有意です。
このデータをどう解釈したものでしょう。講義の受講生に,秋田出身の学生がいたので尋ねたところ,ご飯がおいしいからじゃないですか,という返答でした。とくに秋田では,イカの塩辛など,辛いものが美味いのだそうで,その分,ご飯もススムのだとのこと。ユニークな見解です。
しかし,寒冷な気候との相関を考えると,雪に閉ざされた冬場の運動不足という要因が大きいのではないでしょうか。先の学生によると,冬場では子どもは外で遊べないばかりか,登下校も,保護者の車で送迎してもらうのだそうです。
気候と肥満の結びつきの度合いが,低学年の児童ほど大きいことを考えると,なるほどと思います。6~14歳の各年齢について,肥満児出現率を県別に出し,平均気温との相関をとってみると,低年齢ほど,相関係数の絶対値が高い傾向にあります。
肥満児率の地域差が大きいのも,低年齢の児童です。6歳では,最高の青森と最低の京都では,実に4倍を超える開きがあります。そうした差を規定する要因として,気候のような自然要因が大きい,ということです。低年齢の児童は,家族の庇護に依存する度合いが高いことによるものでしょう。雪の日に,車で送迎してもらう頻度も,低年齢の児童のほうが高いことと思われます。
子どもの肥満化の問題は,当局も認識しているところであり,それへの対策として,食育の充実というようなことがいわれています。しかし,お上の政策文書をみると,肥満の要因として決して小さくない,社会的要因(貧困)や自然的要因(気候)に触れられていないことが気がかりです。
寒冷な気候という自然条件を克服するための手がかりは,2番目の相関図の中に含まれています。当該の図によると,山形と長野は,平均気温は同じくらいですが,肥満児率が大きく異なっています。この差は何に由来するのか。長野県の教育実践の中身が注目されるところです。
2011年8月23日火曜日
子どもの1日(日曜日)
前回の続きです。今回は,日曜日の各時間帯において,子ども(10~14歳)がどういう行動をとっているかをみてみましょう。
資料源は,2006年の総務省『社会生活基本調査』です。2006年の「10月14日から10月22日までの9日間」のうちの日曜日について,対象者がどういう行動をとったかを,15分刻みの細かい時間帯別に明らかにしています。
前回の平日のものと,図の模様がかなり違うことにお気づきかと思います。当たり前ですが,起床時間が遅くなっているようです。朝の8:00になっても,3割ほどの子どもが眠っています。11:00の状況をみると,スポーツをしている子どもが約2割と最多になっています。部活動や,地域のスポーツクラブに通っている子どもたちでしょう。
15:00になると,趣味や何らかの交際をして過ごす子が多いようです。今ぐらいの時間(20:00近辺)では,テレビ等を観ている者が4割をも占めています。いかにも,休日らしい過ごし方ですね。
ただ,テレビ視聴については,国際学力調査のTIMSS2007の結果から,次のことがいわれています。わが国の子どもは,「宿題をする時間が短く,テレビやビデオを見る時間が長く,家の手伝いをする時間が短い」そうです。下記サイトの「TIMSS2007のポイント」というPDFファイルをご覧ください。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/sonota/07032813.htm
なるほど,休日の夜間における「テレビ視聴」の領分の大きさを考えると,さもありなんという感じです。手伝い(雑事)や学習をしている子は,そう多くはありません。
しかるに,子どもは大人の鏡です。子どもに範を示すべき大人は,1日をどう過ごしているのでしょうか。回を改めて,大人についても同じ統計図をつくって,ご覧に入れようと思います。
資料源は,2006年の総務省『社会生活基本調査』です。2006年の「10月14日から10月22日までの9日間」のうちの日曜日について,対象者がどういう行動をとったかを,15分刻みの細かい時間帯別に明らかにしています。
前回の平日のものと,図の模様がかなり違うことにお気づきかと思います。当たり前ですが,起床時間が遅くなっているようです。朝の8:00になっても,3割ほどの子どもが眠っています。11:00の状況をみると,スポーツをしている子どもが約2割と最多になっています。部活動や,地域のスポーツクラブに通っている子どもたちでしょう。
15:00になると,趣味や何らかの交際をして過ごす子が多いようです。今ぐらいの時間(20:00近辺)では,テレビ等を観ている者が4割をも占めています。いかにも,休日らしい過ごし方ですね。
ただ,テレビ視聴については,国際学力調査のTIMSS2007の結果から,次のことがいわれています。わが国の子どもは,「宿題をする時間が短く,テレビやビデオを見る時間が長く,家の手伝いをする時間が短い」そうです。下記サイトの「TIMSS2007のポイント」というPDFファイルをご覧ください。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/sonota/07032813.htm
なるほど,休日の夜間における「テレビ視聴」の領分の大きさを考えると,さもありなんという感じです。手伝い(雑事)や学習をしている子は,そう多くはありません。
しかるに,子どもは大人の鏡です。子どもに範を示すべき大人は,1日をどう過ごしているのでしょうか。回を改めて,大人についても同じ統計図をつくって,ご覧に入れようと思います。
2011年8月22日月曜日
子どもの1日(平日)
現在,夜の8時(20時)過ぎですが,この時間では,子どもは何をしているのでしょうか。テレビを観る,のんびり風呂に入る,宿題をやる…さまざまでしょう。
総務省の『社会生活基本調査』は,1日(24時間)を15分刻みの96の時間帯に分け,それぞれの時間帯において,対象者がどのような行動をとっているかを調べています。最新の2006年の調査結果から,子どもの1日の過ごし方をのぞかせていただきましょう。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001027246&cycode=0
ここでいう子どもとは,10~14歳の小・中学生です。2006年の「10月14日から22日までの連続する9日間のうち,連続する2日間」の生活行動を調査したとあります。2日間とあるのは,曜日の種類を変えるためです。
平日の「20:00~20:15」の時間帯の生活行動をみると,対象者の27.5%がテレビ等を視聴しているとのことです。次に多いのは「食事」で13.0%,その次は「休養・くつろぎ」で12.9%となっています。なるほど,今頃の時間帯では,子どもたちは,1日の疲れをいやすべく,のんびりしているようですね。
では,96の時間帯をすべてつなぎ合わせて,子どもの1日の生活行動の流れを観察してみましょう。下図は,それぞれの時間帯のおいて,対象者がどのような行動をとっているかを図示したものです。
当然ですが,深夜の時間帯では,ほとんどすべての子どもが眠っています。10:00では,学校での勉強(学業)が最多になります。夕方の17:00では,スポーツが2割弱を占めます。クラブや部活に励む子どもたちでしょう。夜の20:00では,先ほど述べたように,テレビや休養が多くなります。
就寝時間ですが,「23:00~23:15」では,77.4%の子どもしか床に就いていません。眠っている子が9割を超えるのは,「23:45~0:00」の時間帯になってからです。本調査の対象が,10~14歳の子どもであることを考えると,就寝時間がやや遅いのではないかとも思います。
では,23:00を過ぎてから,睡眠以外にどのような行動が多いかというと,趣味(娯楽)や休養といったものです。学習に勤しんでいる子もいます。忙しいのですねえ。
次回は,日曜日の図をご覧に入れようと思います。
総務省の『社会生活基本調査』は,1日(24時間)を15分刻みの96の時間帯に分け,それぞれの時間帯において,対象者がどのような行動をとっているかを調べています。最新の2006年の調査結果から,子どもの1日の過ごし方をのぞかせていただきましょう。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001027246&cycode=0
ここでいう子どもとは,10~14歳の小・中学生です。2006年の「10月14日から22日までの連続する9日間のうち,連続する2日間」の生活行動を調査したとあります。2日間とあるのは,曜日の種類を変えるためです。
平日の「20:00~20:15」の時間帯の生活行動をみると,対象者の27.5%がテレビ等を視聴しているとのことです。次に多いのは「食事」で13.0%,その次は「休養・くつろぎ」で12.9%となっています。なるほど,今頃の時間帯では,子どもたちは,1日の疲れをいやすべく,のんびりしているようですね。
では,96の時間帯をすべてつなぎ合わせて,子どもの1日の生活行動の流れを観察してみましょう。下図は,それぞれの時間帯のおいて,対象者がどのような行動をとっているかを図示したものです。
当然ですが,深夜の時間帯では,ほとんどすべての子どもが眠っています。10:00では,学校での勉強(学業)が最多になります。夕方の17:00では,スポーツが2割弱を占めます。クラブや部活に励む子どもたちでしょう。夜の20:00では,先ほど述べたように,テレビや休養が多くなります。
就寝時間ですが,「23:00~23:15」では,77.4%の子どもしか床に就いていません。眠っている子が9割を超えるのは,「23:45~0:00」の時間帯になってからです。本調査の対象が,10~14歳の子どもであることを考えると,就寝時間がやや遅いのではないかとも思います。
では,23:00を過ぎてから,睡眠以外にどのような行動が多いかというと,趣味(娯楽)や休養といったものです。学習に勤しんでいる子もいます。忙しいのですねえ。
次回は,日曜日の図をご覧に入れようと思います。
2011年8月21日日曜日
教員採用試験の合格者
教員採用試験の一次試験の結果が,ぼちぼち発表されているようです。合格された方は,おめでとうございます。私の卒論ゼミ生で,再トライ組が数名いるのですが,彼らはどうなったことやら…
しかるに,最近は人物重視の方針から,一次試験は多く通して,二次試験でバンバン落とすことが多いと聞きます。「勝って兜の緒を締めよ」という格言があります。最初の関門を通過された方は,気を引き締めて,次の関門(面接等)に臨んでいただきたいと思います。
東京都の場合,この夏(2012年度採用)の試験への応募者は21,061人だったそうです。採用見込者は3,135人だそうですから,想定倍率は6.7倍となります。採用見込み者数が増加したため,昨年よりも倍率は下がったとのことですが,激戦であることに変わりはありません。青森のような,採用数が少ない県では,もっとそうでしょう。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2011/06/20l69300.htm
こうした難関を突破し,晴れて教壇に立つことになるのは,どういう人なのでしょうか。5月29日の記事では,小学校教員採用試験の合格者の外的な属性を分析しました。今回は,他の学校種についても同じ分析をしようと思います。
年次がやや古くなりますが,2010年度の小学校教員採用試験の最終合格者(採用者)は12,284人だったそうです。このうち,教員養成系大学出身者が4,501人と41.0%を占めています。このグループは,受験者では33.7%しか占めません。よって,このグループからは,通常期待されるよりも,1.22倍多く採用者が出ていることになります(41.0/33.7=1.22)。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1300242.htm
採用者中の比率を,受験者中の比率で除した値を,採用者輩出率と命名しましょう。小学校教員採用試験の採用者輩出率を,性別,学歴別,および新卒・既卒別に出すと,下の表のようになります。
性別では,採用者輩出率は,男性よりも女性で高くなっています。学歴別では,教員養成系大学出身者が最も健闘しているようです。新卒か既卒では,新卒グループの有利さが目立っています。新卒者は受験者では29.4%しか占めませんが,採用者では38.4%を占有しています。民間企業と同様,教育委員会も,新卒者を好んで採るということでしょうか。まさかねえ…
上記は,小学校の統計ですが,中学校,高等学校,および特別支援学校についても,同じ統計をつくってみましょう。時代変化の様相も把握するため,1980年度試験と2010度試験の数字を比較してみます。各グループの採用者輩出率は,この30年間でどう変わったのでしょうか。1980年度試験の統計は,文部省『教育委員会月報』(第一法規)の1980年8月号より得ました。
注目していただきたい数字をゴチにしています。性別でみると,1980年度試験では,男性が優位でした。しかし,2010年度試験では,それがひっくり返っています。
学歴別でみると,1980年度試験では,教員養成系大学出身者の優位性が明らかでした。このグループの採用者輩出率は,中学校では1.96,高等学校では2.07にも達していました。2010年度試験でも,このグループの相対的優位性が保たれていますが,以前ほどではありません。また,昔は,大学院修了者の採用者輩出率が高かったことも注目されます。当時はまだ院卒者が少なかった頃ですから,それだけ重宝された,ということでしょうか。
最後に,新卒か既卒かでみると,小学校と特別支援学校(1980年度は特殊教育諸学校)では新卒優位,中学校と高等学校では既卒優位となっています。これは,試験の難易度を反映したものと思われます。倍率が高い中学校や高等学校の試験を一発で突破するのは,なかなか難しい,ということでしょう。
この中でとくにコメントを添えたいのは,学歴別の動向についてです。最近では,昔に比べて,どのグループからも均質に採用者が輩出される傾向にあります。教員の出自が多様化するという意味において,好ましいことだと思います。わが国の教員養成は,開放性の原則に依拠していますが,その趣旨が生かされることにもなるでしょう。
近年では,民間企業での実務経験者を教員として採用する向きもあると聞きます。こうした社会人が採用者に占めるシェアはどれほどか,また,それはどう変化してきたかも,機会をみつけて明らかにしてみようと思っています。
しかるに,最近は人物重視の方針から,一次試験は多く通して,二次試験でバンバン落とすことが多いと聞きます。「勝って兜の緒を締めよ」という格言があります。最初の関門を通過された方は,気を引き締めて,次の関門(面接等)に臨んでいただきたいと思います。
東京都の場合,この夏(2012年度採用)の試験への応募者は21,061人だったそうです。採用見込者は3,135人だそうですから,想定倍率は6.7倍となります。採用見込み者数が増加したため,昨年よりも倍率は下がったとのことですが,激戦であることに変わりはありません。青森のような,採用数が少ない県では,もっとそうでしょう。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2011/06/20l69300.htm
こうした難関を突破し,晴れて教壇に立つことになるのは,どういう人なのでしょうか。5月29日の記事では,小学校教員採用試験の合格者の外的な属性を分析しました。今回は,他の学校種についても同じ分析をしようと思います。
年次がやや古くなりますが,2010年度の小学校教員採用試験の最終合格者(採用者)は12,284人だったそうです。このうち,教員養成系大学出身者が4,501人と41.0%を占めています。このグループは,受験者では33.7%しか占めません。よって,このグループからは,通常期待されるよりも,1.22倍多く採用者が出ていることになります(41.0/33.7=1.22)。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1300242.htm
採用者中の比率を,受験者中の比率で除した値を,採用者輩出率と命名しましょう。小学校教員採用試験の採用者輩出率を,性別,学歴別,および新卒・既卒別に出すと,下の表のようになります。
性別では,採用者輩出率は,男性よりも女性で高くなっています。学歴別では,教員養成系大学出身者が最も健闘しているようです。新卒か既卒では,新卒グループの有利さが目立っています。新卒者は受験者では29.4%しか占めませんが,採用者では38.4%を占有しています。民間企業と同様,教育委員会も,新卒者を好んで採るということでしょうか。まさかねえ…
上記は,小学校の統計ですが,中学校,高等学校,および特別支援学校についても,同じ統計をつくってみましょう。時代変化の様相も把握するため,1980年度試験と2010度試験の数字を比較してみます。各グループの採用者輩出率は,この30年間でどう変わったのでしょうか。1980年度試験の統計は,文部省『教育委員会月報』(第一法規)の1980年8月号より得ました。
注目していただきたい数字をゴチにしています。性別でみると,1980年度試験では,男性が優位でした。しかし,2010年度試験では,それがひっくり返っています。
学歴別でみると,1980年度試験では,教員養成系大学出身者の優位性が明らかでした。このグループの採用者輩出率は,中学校では1.96,高等学校では2.07にも達していました。2010年度試験でも,このグループの相対的優位性が保たれていますが,以前ほどではありません。また,昔は,大学院修了者の採用者輩出率が高かったことも注目されます。当時はまだ院卒者が少なかった頃ですから,それだけ重宝された,ということでしょうか。
最後に,新卒か既卒かでみると,小学校と特別支援学校(1980年度は特殊教育諸学校)では新卒優位,中学校と高等学校では既卒優位となっています。これは,試験の難易度を反映したものと思われます。倍率が高い中学校や高等学校の試験を一発で突破するのは,なかなか難しい,ということでしょう。
この中でとくにコメントを添えたいのは,学歴別の動向についてです。最近では,昔に比べて,どのグループからも均質に採用者が輩出される傾向にあります。教員の出自が多様化するという意味において,好ましいことだと思います。わが国の教員養成は,開放性の原則に依拠していますが,その趣旨が生かされることにもなるでしょう。
近年では,民間企業での実務経験者を教員として採用する向きもあると聞きます。こうした社会人が採用者に占めるシェアはどれほどか,また,それはどう変化してきたかも,機会をみつけて明らかにしてみようと思っています。
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