2010年度の公立小学校教員採用試験の競争率は,東京の場合,3.5倍でした。一方,東北の青森では25.2倍と大変高くなっています。受験者25人につき,1人しか採用されなかったことになります。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1300242.htm
青森の競争率が高いことの要因は何でしょうか。民間に比して,教員の給与の相対水準が高いため,受験者が殺到するからでしょうか。それとも,採用者数が少ないためでしょうか。答えは,後者です。上記の試験における当県の採用者数はたったの23人です。東京の1,628人とは大違いです。
青森と東京の児童数の差を勘案しても,この差は大きいものと判断されます。新規採用教員数に,なぜこれほどまでの差が生まれるのでしょうか。それは,青森では辞める教員が少なく,東京ではそれが非常に多いからです。下図は,2007年10月1日現在における,公立小学校教員の年齢構成をみたものです。文科省『平成19年度・学校教員統計調査』より作成しました。
東京では,50代以上の高年層が多く,青森では,40代あたりの中年層が多いことが明白です。最頻値(Mode)の年齢は,赤色で塗っています。東京は57歳,青森は40歳です。東京では,団塊世代の教員が多く,青森ではそれが少ないことがうかがわれます。
この統計は2007年のものですが,それから3年後の2010年には,図の57歳あたりの教員が辞めたことになります。東京では,最も膨らんだ部分です。地方の学生を対象としたバスツアーのような企画を組まなければならない,東京の事情も分かるような気がします。
新規採用教員の量に,このような開きが出ている結果,両都県では,若年教員の比重が著しく異なっています。20代教員の比率は,青森では3.0%,東京では20.2%です。東京では5人に1人が20代ですが,青森では33人に1人という具合です。
青森の若年教員は,高倍率の試験を勝ち抜いた精鋭部隊といえるでしょう。でも,組織の末端に回される各種の雑務を,少ない人間でこなさなければならないことのストレスは小さくないものと思います。
一方の東京では,そうしたストレスはあまりないでしょうが,大量採用世代ということでの,質の低下というような問題があるのかもしれません。都教委も,この問題を認識しているのでしょうか。東京の採用試験では,教員研修に関する事項が毎年出題されています。
世代という外的属性によって,教員の職務遂行のパフォーマンスや,不適応の多寡がどのように異なるかは,大変興味ある問題です。私は,教員の離職率という指標を使って,この問題に計量的にアプローチすることができないかと思案しています。