2011年5月12日木曜日

教員の離職率④

 これまでは,小学校教員の離職率をみてきましたが,今回は,他の学校の離職率も出してみようと思います。離職率とは,定年でもない,転職でもない,病気でもない,統計上「その他」というカテゴリーに括られた理由による離職者数が,教員全体のどれほどを占めるか,というものです。教員の脱学校兆候の量を測るために設定した指標です。

 私は,小学校,中学校,高等学校,および特別支援学校について,上記の意味での離職率を計算しました。文科省『学校教員統計調査』に掲載されている数字から,独自に出したものです。


 2006年度間の小学校の離職率は,既にみたように7.8‰です。しかし,中学校では9.2‰,高等学校では12.5‰,というように,学校段階を上がるほど率が高くなります。障害のある子どもの教育を行う特別支援学校の離職率は,小学校とほぼ同じです。

 高等学校の率が高いことが注目されます。はて,この水準は,長期的な推移に照らしても高いものなのでしょうか。前々回みたように,小学校の離職率については,そうではなかったのですが…


 上図は,学校段階別に離職率の推移をみたものです。3年おきになっているのは,上記の文科省調査が,3年おきの調査であることに由来します。

 図をみると,小学校と中学校のピークは1982年度ですが,高校の場合,この年に山がありません。当時は校内暴力の嵐が吹き荒れた頃であり,小・中学校と同様,高校も危機的な状況にあったと思うのですが,少し意外です。問題生徒はガンガン退学させる,というような措置をとっていたのでしょうか。ちなみに,公立の義務教育学校では,児童・生徒を退学させることはできません。

 1990年代半ば以降,どの学校でも離職率が伸びるのですが,それが最も顕著なのは高校です。1994年度の6.7‰から2006年度の12.5‰まで上昇しています。その結果,離職率の水準は,小<中<高,という形になっています。高校の場合,2006年度の離職率は,過去との対比でみても最高と判定されます。

 高校では,私立学校も少なくありませんが,近年の少子化傾向のなか,生徒が集まらず経営難に陥っている学校も存在することでしょう。リストラによる離職は,統計上は「その他」という理由に括られる,ということでしょうか。でも,高校教員の離職率を地域別に計算すると,私立学校がほとんどないような県の離職率が高い,というケースも見受けられます。

 次回は,各学校の離職率を属性別に明らかにしてみようと思います。