2011年5月20日金曜日

高等教育機関の休学率

 前回は,大学生の休学率についてみました。休学する学生が全学生に占める率は,年々上がってきていることを知りました。2010年の値は9.7‰(≒1%)という水準でした。

 今回は,大学院,短期大学,そして高等専門学校といった他の高等教育機関についても,同じく休学率を出してみようと思います。休学率とは,その年の5月1日時点の休学者の数が,同時点の全学生数に占める比率のことです。分子,分母とも,文科省の『学校基本調査(高等教育機関編)』より得ています。


 前回と同様,1967年(昭和42年)からの率の推移をとってみました。これをみると,大学院の休学率がダントツで高いことが分かります。前回みた大学の休学率の比ではありません。2010年の大学院の休学率は43.2‰で,大学生の値(9.7‰)の4倍以上です。

 大学院の休学率は,1990年代以降,急上昇しています。1991年に開始された大学院重点化政策により,院生が激増するのと歩を合わせるがごとく,休学率も高まってきています。

 ここでいう大学院の休学率は,修士課程と博士課程をひっくるめたものですが(2003年以降は専門職大学院も含む),休学率は,博士課程で高くなっています。2010年の率を出すと,修士課程は23.6‰,博士課程は92.1‰,専門職大学院は33.1‰,です。

 博士課程では,最短の年数(3年or4年)で学位論文を認めるのはなかなか困難です。最短の年数を超えた場合,学費の節約のため,休学という戦略をとる学生も多いことでしょう。私の先輩にも,そういう人がいました。事実,2010年の博士課程の休学者6,853人のうち,3年次以上の者が86%(5,895人)を占めています(最短年限超過者は,最高学年の者としてカウントされます)。

 博士課程の休学率を,性別と設置主体別にみると,下表のようになります。最新の2010年のものです。


 男子よりも女子で高くなっています。国公私別では,私<公<国,という傾向が明瞭です。国立大学では10.7%,つまり1割が休学生です。私立の率が低いのは,先ほど述べた学費節約の戦略が使えないためでしょうか。

 大学院の休学率が高いであろうことは,前から予想していましたが,他の高等教育機関に比して,これほどまでの差があることは,私にとって発見でした。