2012年5月6日日曜日

子どもの日にちなんで

昨日(5月5日)は,子どもの日でした。そのためか,県別の子どもの幸福度指数を明らかにした2月18日の記事の閲覧頻度が急に上がっています。「はて?」と思い,暦をふと見たところ,ああそうだったと気づいた次第です。

 子どもの日・・・。申すまでもなく,社会は子どもと大人から成るのですが,両者の構成は昔に比べて著しく変化してきています。子どもの年齢的な定義はいろいろありますが,ひとまず20歳未満と広くとることにしましょう。この意味での子どもが,全人口の何%ほどいるかご存知ですか。

 遅ればせながら,子どもの日にちなんで,子どもの量に関する統計数値をみてみましょう。ただ,「2010年現在の値は*%です」というだけでは,何のリアリティも伝わりません。わが国の現在値を,時代軸と空間軸で相対視してみようと思います。

 まずは時代軸。わが国の年齢別の人口統計は,1884年(明治17年)のものから知ることができます。私は,20歳未満の「子ども」とそれ以外の「大人」の構成の変化を,おおよそ5年刻みでたどってみました。2060年までの将来予測のデータも加味しています。2005年までは総務省統計局の「長期統計系列」,2010年以降は国立社会保障・人口問題研究所の将来人口予測(中位推計)の統計を参照しました。
http://www.stat.go.jp/data/chouki/02.htm
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/sh2401smm.html


 上記グラフの始点の1884年では,子ども4:大人6という組成でした。子ども人口比率は明治・大正期にかけてゆるやかに上昇し,1940年(昭和15年)には46.9%とピークを迎えます。半数近くが,20歳未満の子どもだったわけです。余談ですが,この年は私の母の生年です。

 戦前の日本は,石を投げればほぼ半分の確率で子どもに当たる社会でした。しかるに,戦後にかけて状況はドラスティックに変わります。

 子ども人口比率は,1950年以降,明らかな「右下がり」傾向に転じます。1950年では45.7%だったのが,四半世紀後の1975年には31.4%になり,世紀の変わり目の2000年には20.5%,ほぼ2割にまで減りました。この半世紀間で,子ども人口比率は半分以下に減ったことが知られます。

 戦後の高度経済成長により,日本は豊かになりました。寿命が延びる一方で,子どもは少なく産んで大事に育てようという気風が高まりました。死ぬ者が減るとともに,産まれる者も減ったわけです。「多産多死」の社会から,「少産少死」の社会に変わったといえましょう。

 2010年(平成22年)現在の子ども人口は,実数にして約2,300万人,総人口に占める比率は17.9%です。今後,この比率はさらに低下することが見込まれており,2060年には12.7%になるであろうと予測されています。今から半世紀後の日本では,大人が人口のほぼ9割を占める社会になっているわけです。「少子高齢化」,恐るべし。

 次に空間軸です,2010年現在の日本の子ども人口比率(17.9%)を,世界の他国と比較してみます。総務省統計局『世界の統計2012』から,世界の54か国(日本含む)の年齢別人口を知ることができます。私は,この54か国の子ども人口比率を計算しました。用いたのは,下記サイトの表2-7の統計です。
http://www.stat.go.jp/data/sekai/02.htm

 各国の子どもの絶対数に関心をお持ちの方もおられると思うので,分子と分母のロー・データも提示いたします。単位は千人です。


 右端の子ども人口比率をご覧ください。まず日本の値(17.9%)の位置を指摘すると,54か国中最下位です。わが国は,世界の主要国の中で最も少子化が進んだ社会であることが知られます。

 子ども人口率が2割を切る数字は青色にしましたが,イタリア,ギリシャ,スペイン,およびドイツといった,多くは南欧の社会において,わが国と同じくらい少子化が進行しているようです。

 反対に,子ども人口比率が高い社会は如何。54か国中の最大値は,アフリカのタンザニアの54.7%です。この国では,大人よりも子ども(20歳未満)が多いことになります。寿命が短く,かつ出生率が高い「多産多死」型の社会であるが故でしょう。

 子ども率が50%を超えるのは,タンザニアのほか,パキスタン,エチオピア,そしてナイジェリア。40%以上の数値(赤色)は,アジアやアフリカ圏に多く分布しています。

 今更声を大にして言うことではありませんが,現在のわが国は,少子高齢化が著しく進んだ社会であることが分かりました。このような社会変化に見合った,各種の制度構築が求められるところです。文科省では,「超高齢社会における生涯学習の在り方に関する検討会」という組織を設け,今後ますます増大していく大人をも射程に入れた教育システムの在り方を審議している模様です。
http://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/koureisha/1311363.htm

 結構なことだと思います。量的にますますやせ細っていく子どもに対し,多くの大人(教育関係者,評論家・・・)がハイエナのごとく群がってばかりのような状況は,好ましいとはいえますまい。人口構成の変化による子どもの発達の歪み,子どもに対する眼差し「過剰」の社会がはらむ問題については,3月12日の記事をご覧いただければと存じます。