2014年3月29日土曜日

20万人の博士,今どこで何を?

 小保方さんのコピペ疑惑が浮上していますが,学部学生の卒論でいうと,最近ではコピペを通り越して,論文を「代筆」してもらう輩もいるとのこと。

 そうした需要に応える業者も存在するようであり,「卒論代行」という語でググると,業者のサイトがわんさと出てきます。

 いくつかの社のサイトを覗いてみると,「スタッフには有名大学の博士課程修了者(博士号取得者)が多数」とあります。定職のない無職博士がやむを得ずやっているケースも多いと思われます。

 とある記事によると,代行による「卒論の完成度はかなり高いらしい。執筆するのは修士号取得者や博士号取得者というからだ。大学の研究室には,年収200万円台のポスドク(非常勤研究員)が腐るほどいるから,人材には事欠かない」のだそうです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140327-00000011-nkgendai-life

 代行料金の相場は「1字=10円」ですので,2万字の卒論1本仕立てたら20万円,業者が半分持っていくとしても10万円。自分のスキルを活かしてこんなに稼げるのですから,無職博士なら誰もが手を出したくなる闇ビジネスといえるでしょう。

 しかし,国税で育成した知的資源がこんなところに流れているのだとしたら,それこそ大問題です。「少子化 → 学部学生減少 → 大学院生増加で補填 → 無職博士増加 → 専業非常勤講師・卒論代行博士増加 → 大学崩壊」。こんな因果連関も想起されます。

 1990年代以降の大学院重点化政策により,博士号所得者は増加してきています。毎年の『学校基本調査』には,3月の博士課程修了生数とそのうちの単位取得満期退学者数が掲載されていますが,前者から後者を差し引いた数が博士号学位取得者と考えられます。1993年以降の数字を跡づけてみました。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm


 1993年の学位取得者は4477人でしたが,20年を経た2013年では11878人となっています。最近では,年間の1万人超の博士が出ているのですね。

 ちなみに,この20年間に輩出された博士号学位取得者の数を累積すると,20万1614人となります。国の政策によって生み出された知的資源ですが,この20万人の博士が今どこで何をしているのか。大変気になるところです。

 なお,専攻別の学位取得者の数は,以下のように推移しています。先ほどと同じやり方で割り出したものです。参考資料として提示いたしましょう。


 専攻別にみると,文系の専攻で増加率が大きくなっています。2013年の数が1993年の何倍になったかをみると,人文科学は7.7倍,社会科学は6.7倍,私が出た教育は5.9倍です。この20年間に出た,これら3専攻の博士の総数は19553人なり。

 この約2万人の文系博士のうち,定職のない者はどれほどか,やむにやまれず卒論代行のスタッフに堕ちている者は何%ほどか。興味が持たれます。

 いやゴシップ的な興味ではなく,公的な調査によって明らかにされねばならないことでしょう。博士とは,国税で育成した知的資源。これらの資源が社会のどこでどう活かされているか。国としては,説明責任があるのではないかと思うのです。

 言わずもがな,知的人材の「チカラ」が負の方向に向いたら大変なことになります。しかし,卒論代行博士の存在に示されるように,その兆候は出てきています。そのうち,博士向けの闇ビジネスみたいな市場も出現するかもしれません。

 莫大な資源を投じて,社会を覆しかねない危険因子を育成する。これほど馬鹿げたことはありますまい。

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