2014年3月14日金曜日

理系専攻率の国際比較

 理系人材を増やすことの必要がいわれていますが,わが国では,教育期に理系分野を専攻した者の比率はどれくらいなのでしょう。その国際的な位置は? こういう基本的なことが明らかになっていないように思えます。

 OECDの国際成人学力調査(PIAAC2012)の質問紙調査では,最後に卒業した学校で専攻した学問分野を尋ねています。この設問への回答結果を国別に集計してみましょう。25~34歳の成人男女に焦点を当てます。

 私は,PIAAC2012のローデータを分析して,日本を含む22か国の回答分布を明らかにしました。下の図は,男性の回答分布です。無回答,無効回答は含めていません。
http://www.oecd.org/site/piaac/publicdataandanalysis.htm


 選択肢が9つもあるので図がゴチャゴチャしていますが,日本をみると,一般教養の比重が他国に比して大きいですね。多くが普通科高校の卒業者でしょうが,明瞭な専攻(major)を持たない者が多いのは,日本の特徴のようです(カナダ,エストニアも)。

 しかし,量的に最も多いのは機械工学を専攻した者であり,全体の3割を占めます。これは理系の代表格ですが,自然科学と農学も加えた「理系専攻率」を出すと39.2%,およそ4割です。

 この理系専攻の領分(赤枠)を他国と比べると,日本は少ないですね。最高のスロバキアでは65.5%,その次のチェコでは59.6%が理系専攻者です。いずれも東欧国ですが,社会状況が近似しているお隣の韓国も,わが国より理系専攻率がかなり高くなっています。他の先進国も然りです。

 以上は男性のデータですが,興味が持たれるのは女性です。理系を専攻した女性(リケジョ)の比率はどうなっているのでしょうか。

 横軸に男性,縦軸に女性の理系専攻率をとった座標上に,22か国を位置づけた図をつくってみました。理系専攻率とは,自然科学,機械工学,農学のいずれかを専攻した者の比率です。点線は,22か国の平均値を意味します。


 ほう。日本は,男女とも理系専攻率が最も低い社会であるようです。とくに女性の率はすこぶる低く,わずか7.8%です。お隣の韓国のリケジョ率は27.8%であり,大きく水を開けられています。しかし,韓国がリケジョ大国だとは知らんかった・・・。

 しかし,こういうデータをみると,「女子の脳は男子に比して理系向きにできていない」という生理説を疑いたくなりますねえ。やっぱ社会的なものなんですよ,ホント。

 ひとまず,わが国の国際的な位置が明らかになりましたが,政府がリケジョを躍起になって増やそうとしているのも,分かる気がします。それは大学も同じで,新潟大学の工学部などは,イケメンの写真入りの入学パンフを配布しているそうな。

 しかるに,2012年11月8日の記事でみたように,日本は女子生徒の理系志向そのものが最も低い社会でもあります。このことを汲むと,人生初期の人間形成(社会化)のジェンダー差に,われわれはもっと目を向けねばなりますまい。

 小・中学校の理科教育をみるとどうでしょう。村松泰子教授らが中学校2年生を対象に行った調査によると,理科でよい成績をとることを教師から期待されていると感じている生徒の割合は,女子よりも男子で高いそうです。教えられる内容が男女で異なることはあり得ませんが,こうした「見えざる」期待が存在しないか。

 また家庭において,女児が理系の道に進みたいと口にした時,保護者が歓迎しないような素振りを見せていないか。さらに,小学校の理科専科担当教員や中学校の理科教員の多くは男性ですが,このことが「女子は理系に行くべからず」というような「ジェンダー・メッセージ」となって,生徒に伝わっていないか。こういう疑いも出てきます。

 もともと日本は「ヒト」しか資源のない国ですが,少子高齢化が進行する中,この資本の重要性はますます高まってきます。人口の半分を占める女子の理系タレントが,人為的に潰されるような事態は避けねばなりません。

 今回みたのは成人男女の理系専攻率ですが,この国際統計は,わが国の教育への問題提起を多分に含んでいるものと私は考えます。

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