ちょっと必要があって,昨年春の東大・京大合格者数のデータベースをつくったところです。それを使って,各県の公立高校と国私立高校から東大・京大合格者がどれほど出ているかを明らかにしました。また,その数をベースの高卒者で除して,合格者の出現率も出してみました。
公立が強いか,国私立が強いかは県によって違いますが,その事実を数値でご覧いただきたいと思います。
下の表は,上記写真の資料から計算した合格者数と,それを高卒者で除した出現率の一覧表です。出現率の分母として用いた高卒者数は,前年(2012年)5月時点の全日制高校3年の生徒数です(文科省『学校基本調査』)。県別の卒業生数を国公私別に得ることはできませんので,こうした措置をとりました。
出現率の最高値には黄色のマークをし,上位5位の数値は赤色にしました。
出現率をみると,奈良の国私立は強いですねえ。東大・京大の合格者出現率は73.3‰(7.3%),およそ14人に1人です。寄与しているのは,私立のT大寺学園高校でしょう。その次は兵庫の27.8‰。私立のN高校でしょうね。
公立高校の合格者出現率をみると,マックスは京都の10.0‰です。戦後長らく小学区制をとってきた伝統と関係があるのかしらん。
それぞれの県で公立が強いか,それとも国私立が強いかを比べると,前者が強い県が多いようです。47県のうち,28の県で公立高校からの合格者出現率のほうが高くなっています。
公立が強いか,国私立が強いかに依拠して,各県をタイプ分けしてみましょう。横軸に公立,縦軸に国私立からの合格者出現率をとった座標上に,47都道府県をプロットしてみました。
実線の斜線よりも下にある,つまりⅢのゾーンにあるのは,公立高校が強い県です(その典型は滋賀)。それ以外は国私立が強い県ですが,点線の斜線よりも上に位置するのは,国私立からの合格者出現率が公立よりも10ポイント以上高い,国私立の超優位県なり。
奈良,兵庫,京都,和歌山,広島,東京,および高知が該当しますが,いずれも名門の国私立高校を擁している県ですね。しかし,奈良の外れっぷりがスゴイこと。
最後に,上図の3タイプ(Ⅰ~Ⅲ)を地図上で表現してみましょう。Ⅰを黒色,Ⅱを灰色,Ⅲを白色として各県を塗り分けてみました。
多くが公立優位の県ですが,都市部では色つきの国私立優位の県が多くなっています。近畿では,黒色の国私立「超」優位の府県がほとんど。
どうでしょう。お遊びのような作業でしたが,上記の地図の模様があまりに濃くなると,公正に関わる問題が出てきます。有力大学の合格チャンスが,入学や在学に多額の費用を要する国私立高校の生徒に寡占される事態となり,低所得の家庭の子弟が不利を被るからです。
実のところ,これは深刻な問題であり,90年代の初頭に,国私立高校からの入学枠を人為的に制限しようという議論もなされたほどです。
上記の国私立の優位度マップは,昔に比したら色が濃くなってきていることでしょうし,今後もその趨勢が続かないとも限りません。低俗なデータと思われるかもしれませんが,各県の政策担当者の方に,絶えず目配りしていただきたい統計の一つです。
今月18日に発刊の『プレジデント・ファミリー』誌にて,この主張を書かせていただいた記事が載る予定です。興味ある方は,ご覧いただければと存じます。