2015年4月19日日曜日

1976年生まれ世代の居住地分布の変化

 昨日,高校の同窓会名簿が届きました。私の母校,鹿児島県立甲南高等学校の卒業生名簿です。


 私は1995年春の卒業生ですが,該当箇所をみると,懐かしい名前が載っています。住所をみると,鹿児島県内在住者が多いですが,東京,大阪,愛知などの大都市に出ている者も結構います。私もその一人です。

 確か,クラスの3分の2くらいが県外の大学に進んだように記憶していますが,どれくらいが卒業後,地元に帰ってきているのかな,という疑問を持ちました。そこで,「国勢調査」の時系列データを接合させて,私の世代の居住地分布がどう変わったかを,5年間隔で明らかにしてみました。用いたのは,都道府県単位の統計です。

 私の世代(1976年生まれ)は1990年に14歳,95年に19歳になります。後者は,大学進学などの移動が起きた後になりますので,前者の数をして,流出入前の初期人口とみなすことにしましょう。私の郷里の鹿児島でいうと,その数,26990人です。

 それから20年後の2010年には,われわれの世代は34歳になっていますが,同年の鹿児島の34歳人口は19858人です。上記の14歳時点よりかなり減ってますね。26.4%の流出率です。私も,この分の中に含まれます。

 他の県はどうでしょうか。47都道府県について,14歳時点(1990年)と34歳時点(2010年)の人口量を照合してみました。


 右端の増加率をみると,ほとんどがマイナスです。流出人口が戻ってこないままでいる県が多い,ということです。郷里の鹿児島も,その程度が著しい県と判断されます。同じ九州の長崎などは,この20年間にかけて,同世代人口が3分の1も減じています。

 その分を,東京などの大都市が吸収しているわけです。東京の増加率は55%,1.5倍以上の増です。私も,鹿児島のaから東京のbに移った人間ですが。

 さて,郷里から流出した人間がどれほどUターンしているかですが,この数値をみる限り,あまり戻ってはいないようです。いやこれでも,大学卒業後の23歳あたりでかなり戻った結果なのでしょうか。観測ポイントを増やしてみましょう。19歳時(95年),24歳時(00年),29歳時(05年)の人口量も加味し,変化をより詳細に明らかにしてみました。

 下の表は,初期値(14歳時点の人口)を100とした指数の推移です。


 わが郷里をみると,19歳以降は,指数の値が対して変わっていないですね。つまり,18歳時点で出て行った人口がほとんど帰ってきていない,ということです。地元に仕事がないからか,大都市の魅力に取りつかれて帰りたくないのか。あるいは,山内太地さんがいうように,地元の中学時代のスクールカーストに再び取り込まれるのが嫌なのか・・・。
https://twitter.com/yamauchitaiji/status/574005672288722944

 すぐ下の沖縄は,20代後半以降,少し帰ってきているようです。本土と文化が異なる面があるので,この県はUターン率が高いということを,何かの本で読んだ覚えがあります。新天地を求めて,大都市からのIターンする者も多いでしょうが。

 赤字の3都県の推移をグラフにすると,下図のようになります。


 郷里の鹿児島は,19歳以降はほぼフラットです。上述のような理由ゆえか,やはりUターンはなかなか難しいのだなあ。なおずっと地元に留まっている者からすれば,18歳の時点を逃すと,新天地に向けての流出のチャンスがほとんどない,ということをも意味します。これは,ライフコースの硬直性という問題に関わるでしょうか。

 ただ県によっていくつかのタイプがあり,たとえば長野などは,18歳時点の流出人口が大学卒業後に戻ってくる傾向が,相対的に強いようです(19歳:70.7 → 24歳:88.0)。静岡,福井,鳥取なども,このタイプに含まれます。もちろん,Uターン,Jターン,Iターンの組成がどうなっているのかは分かりませんが。

 上に掲げた指数表から,もっといろんなタイプが検出できるかもしれません。興味ある方は,ご自身の県の指数をグラフにしてみてください。

 今回は私の世代の検討でしたが,より上(下)の世代ではどうなっているか,さらにはジェンダーの差も興味深いところです。おそらく,地方からの流出組は男子のほうが多いのでは。これなんかも,面白そうです。