2015年10月5日月曜日

社会タイプの国際比較

 国際社会調査プログラム(ISSP)は,特定の主題を設けて,毎年,各国の国民を対象とした興味深い調査を実施しています。
http://www.issp.org/index.php

 社会的不平等(social inequality)の意識調査はこれまで,1987年,1992年,1999年,そして2009年と,4回にわたって実施されてきています。最新の第4回の調査票を眺めていたところ,面白い設問を見つけましたので,その回答結果の国別比較をしてみようと思います。

 どういう設問かというと,社会の地位構造のモデル図を提示して,自分の国はどれに一番近いかを選んでもらう,というものです。社会は,収入や威信を異にする地位の序列構造からなっていますが,すぐ思いつく代表タイプは,下が厚く上にいくにつれ細くなっていく「ピラミッド型」,中間が厚い「中太り型」などでしょう。

 この調査では,以下の5タイプを提示して,自分の国はどれに最も近いと思うかを尋ねています。調査対象は,各国の18歳以上の国民です(一部の国は,16歳以上)。


 はて,それぞれの国の国民は,どのタイプを最も多く選択しているのでしょう。私は,選択率が最も高かったタイプに,それぞれの国(41か国)を仕分けてみました。下の表は,その結果です。選択率が高い順に,上から並べています。


 国民の主観的な選択結果ですが,それぞれの国がどういうタイプの社会かを知る手掛かりとなります。タイプAの選択率が最も高かった国は12,タイプBは19,タイプCは2,タイプDは7でした。逆ピラミッド型のタイプEが最も選ばれた国はありませんでした。

 タイプDは中間が厚く上と下が細い,平等度が高い社会ですが,北欧とオセアニアの国々が含まれています。デンマークでは,国民の6割ほどがこのタイプに最も近いと答えています。これらの国が,高税率,福祉先進国であることを思うと,さもありなんですね。

 タイプAは,一部のエリートと多数の底辺層に分化している社会です。独裁国家をイメージすればよいでしょうか。なるほど,ウクライナなど旧共産圏の国が多く名を連ねているのは,頷けます。

 隣のタイプBは,数的に最も多くなっています。下が厚く,上にいくにつれなだらか減っていく「ピラミッド型」。少数が多数の上に立つのですが,タイプAのように上と下がパッカリ分かれているのではなく,富や威信の配分の傾斜が緩やかであるのが特徴。小幅の社会移動(mobility)の可能性も開かれており,下の不満を抑える巧みな装置も備わっています。現存する多くの社会は,このタイプでしょうね。日本や主要国は,このタイプに収まっています。最後のタイプCは,このBの微変型です。

 以上は,最も高い選択率だけに着目した結果ですが,他の回答分布も気になるかと思います。たとえば日本は,全体の38.5%がタイプB(ピラミッド型)に最も近いと答えたわけですが,残りの61.5%の組成はどうなのでしょう。

 そこで,5つの選択肢の回答分布をグラフで示しておきます。


 デンマークやウクライナなどは,最多の選択率が半分以上を占めています。前者は平等型,後者は分極型というように,社会タイプの性格がはっきりと認識されているようです。

 対して日本は,回答が結構分散していますね。Aが11%,Bが39%,Cが26%,Dが20%,Eが4%,という内訳です。社会がどういう構造か見えにくい,それだけ,どういう方向に社会を変えていくかというコンセンサスが得にくい,ということでしょうか。認識の分布は当然,社会の各層によっても異なるでしょう。為政者と庶民で,回答分布がどう違うかも興味が持たれます。

 それを明らかにするには細かいクロス集計をしないといけませんが,本調査のローデータは,明後日大学でダウンロードしてきます。それでもって,作業してみることにしましょう。

 ISSPは前から使いたいと思っていたのですが,やっと使用法をマスターしました。『世界価値観調査』と並んで,国際比較分析をするための貴重なデータとなってくれそうです。

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