2017年6月16日金曜日

フリーの著述家のサバイブ率

 前回は,フリーの著述家・芸術家の数が増えていることを明らかにしました。いわゆる「フリーランス」の増加傾向ですが,この道はなかなか厳しいということも申しました。

 それを可視化したいのですが,フリーランスの場合,離職率などはありません。そもそも組織に雇われてないのですから,そういう統計は作りようがありません。しからば,この業界の淘汰の様を「見える化」できないかというと,そうではありません。世代の統計をつなぎ合わせるという手があります。

 下表は,フリーの著述家・記者・編集者(以下,著述家)の「時代×年齢」のマトリクスです。『国勢調査』の職業中分類統計より作成しました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL02100104.do?tocd=00200521


 1985年の20代前半は,5年後の90年には20代後半になり,さらに5年後の95年には30代前半…となります。同一の世代(コーホート)は,このように表を右ナナメ下に進んでいくわけです。

 黄色は1961~65年生まれ世代ですが,この世代でいうと,フリーの著述家は40代前半まで増加を続けます。20代後半から30代前半,30代前半から30代後半にかけての増加幅が大きいようですね。何年か出版社などで勤め,「フリーでやるぞ!」と独立する人が出てくるのでしょう。

 しかし40代前半から後半にかけて,5768人から4650人へと2割近くも減ります。30代で気概を持って独立する人が多いが,40代になると淘汰が始まる。こんな感じでしょうか。

 まさに「恐怖の40代」ですが,より上の世代では,この時期ではまだ淘汰は始まりません。一回り上の1951~55年生まれ世代(青色)でみると,40代前半の3655人から後半の4015人へと増えています。減少が始まるのは,50代になってからです。

 最近の世代になるほど,淘汰の時期が早まっているようです。一つ下の世代(緑色)になると,30代後半から減少が始まります(4626人→4510人)。

 出版不況もあって,生き残り(サバイブ)が厳しくなっているのでしょうか。もう一度黄色の世代に目をやると,40代のステージで淘汰が始まるのですが,減り方の度合いは男女で違っています。この世代について,フリーの著述家の数の変化を性別に跡付けると,以下のようになります。


 40代での減少幅は,男性と女性ではかなり違っています。男性は2507人から2300人の減(8.3%減)ですが,女性は3261人から2350人と3割近くも減っています。

 絶対数は女性が多いですが,サバイブ率は男性の方が高い。女性の場合,育児や介護等による店仕舞いもあるでしょうが,仕事の受注で力関係が生まれることもあるのでしょうか。

 クラウドソーシングなど,フリーのクリエイターと企業を結ぶIT技術が進化してきていますが,フリーの著述家の世界はやはり甘くなく,淘汰が始まるのも早い。先に述べたように,最近の世代ほどその傾向は顕著です。

 同じやり方で,職業ごとのサバイバル状況を可視化するのも面白いですね。たとえば,多くの若者が憧れる美容師はどうでしょう。この職業の「時代×年齢」マトリクスを,『国勢調査』の職業小分類統計より作ってみました。


 この職業の場合,どの世代も20代から減少がスタートします。1981~85年生まれ世代(赤字)でいうと,20代前半では81156人だったのが,20代後半になると47500人にまで減ります。4割以上の減です。これはスゴイ。

 若者の人気職業ですが,カリスマ美容師なんてほんの一握り。離職率メチャ高,40歳定年の業界…。こんなふうに言われますが,世代統計でもそれをうかがえます。

 他の職業はどうですかねえ。女性の医師,歯科医師,バーテンダー…。サバイバル状況が気になる職業はいろいろあります。若き青少年の諸君,自分が志望する職業の見通しをつけるのにもいいのではないでしょうか。高校の総合的な学習の時間などで,この手の作業を生徒にさせるのもいいかもしれません。『国勢調査』のバックナンバーは,政府統計の総合窓口(e-stat)で誰でも見れます。

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