2019年5月20日月曜日

4~5万円台で借りられる賃貸の広さ

 私は,横須賀市の長井という地域にて,賃貸アパートに住んでいます。相模湾に面した西海岸です。

 隣のアパートの若いファミリーが,近くに念願のマイホームを建て,ニコニコ顔で引っ越して行きました。引っ越し作業を見守っている旦那さんと立ち話しましたが,「舞田さんも,安い中古のマンション買ったらどうですか,年をとったら賃貸も借りにくくなりますよ」と言われました。

 うう,私が抱いている懸念を言い当ててくれました。孤独死を恐れてか,高齢者に部屋を貸すのを嫌がる家主が多いですからね。しかし今は奨学金を返済中ですので,叶いそうにありません。まあ近未来は,孤独死保険が普及したり,ITを使った安否確認網が発達したりと,事態は変わるのではないか。こう楽観しています。

 賃貸(借家)の統計といえば,総務省の『住宅土地統計調査』です。最新の2013年調査にて月家賃の分布をみると,4~5万円台の階級が最も多くなっています。私が今住んでいる部屋も,この階級に属します。

 想像がつくでしょうが,この家賃でどういう部屋を借りれるかは,地域によって大きく違います。私の郷里の鹿児島なら,そこそこのマンションを借りれますが,東京ではユニットバスの1ルームがやっとでしょう。

 上記の調査の公表統計をみると,家賃と延べ面積のクロス表が地域別に出ています。これを使えば,今申したことを数値で可視化できます。私は,月家賃が4~5万円台の借家世帯を都道府県別に取り出し,延べ面積の分布を明らかにしました。4~5万円台の家賃で,どれくらいの広さの部屋を借りれるか? 47都道府県の比較をやってみます。

 手始めに,私が住んでいる神奈川県の分布表をみてみましょう。4~5万円台の借家世帯(約33万世帯)の延べ面積分布です。


 最も多いのは20~29平米で3割,次に多いのは20平米未満の狭小住宅です。これらの広さの部屋(30平米未満)で,全体の56%を占めます。さすがは首都圏です。

 ただこれは,全国屈指の大都市の横浜市を反映しているでしょうね。神奈川といっても広いですが,三浦半島の横須賀市や三浦市は分布がもっと下に垂れています(後でお見せします)。

 上表の分布を簡易な代表値にまとめましょう。平均値よりも中央値(Median)がベターです。累積相対度数が50ジャストの中央値は,20~29平米の階級に含まれます。按分比を使って,これを割り出しましょう。

 按分比=(50-25.3)/(56.1-25.3)=0.8007
 中央値=20平米+(10平米 × 0.8007)=28.0平米

 神奈川県では,4~5万円台の家賃で借りれる部屋の広さは,ざっくり28平米ですよ,と言い表すことができます。ちょっと広めの1ルームというところです。

 当然,この値は県によってかなり違っています。私は同じやり方にて,47都道府県の家賃4~5万円台の借家世帯について,延べ面積の中央値を計算しました。下表は,高い順に並べたランキングです。昨日,ツイッターで流した表と同じです。
https://twitter.com/tmaita77/status/1130040550286012416


 予想通り,最も狭いのは東京都ですね。家賃4~5万円台では,24.2平米の狭い1ルームというのが相場です。次が古都の京都で,その次が先ほど取り上げた神奈川県,私の居住県です。下位5位には,大都市の都府県が見事に位置しています。

 表の左上に目をやると,この家賃で最も広い部屋を借りれるのは九州の宮崎県のようです。49.7平米,同じ家賃であっても,東京の倍以上の広めのマンションに住めちゃいます。私の郷里の鹿児島は43.5平米,さもありなんです。

 誰もが感じていることでしょうが,数値にするとインパクトありますね。ツイッター上でかなり注目されているようです。リプでも言われていますが,地方移住を促す「地方創生」のパンフに,こういうデータを載せるといいと思います。白々しいPRよりも,客観的な事実のほうが吸引力は強いでしょう。「宮崎いいな」「宮崎に移住しようかな」という声もあり。

 どこで働いても収入は一緒という,身の軽いフリーランスの皆さん,ぜひ参考になさってください。ただ,都会に勤務先がある勤め人の方は,そうはいかないかもしれません。しかし移住といってもバリエーションがあり,東京から九州への高跳びもあれば,近郊県の郡部へというようなプチ移住もあります。

 私は,このプチ移住を選択した人間の一人です。現住地は横須賀市の南西,三浦半島の西海岸で,畑と漁港の街です。街といっても,農村的な雰囲気がただよっています。それゆえ,家賃も安いです。『住宅土地統計』では市区別の「家賃×面積」のクロスもとれますので,三浦半島の横須賀市と三浦市の統計もご覧に入れましょう。比較対象として,都内23区と横浜市の分布も添えます。


 大都市の23区や横浜市では,4~5万円台の家賃では,20平米に満たない狭小住宅がマジョリティです。対して横須賀市と三浦市では,2段上がった30平米台が最も多くなっています。ちょっと足を延ばすだけで,ずいぶん違うもんです。

 「赤い弾丸」と形容される京急が通ってますので,都心へのアクセスは良好。横浜だったら,横須賀中央から20分ほどで行けます。

 私などは,たまに横浜や新宿に出る程度なので,今の賃貸暮らしにとても満足しています。2017年の春に多摩市から横須賀市に移り住んで,本当によかった…。

 移住といっても,大げさに考える必要はありますまい。ちょっと目を凝らせば,それほど遠くない穴場はあるでしょう。よくPRされていますが,三浦半島はおススメです。都心の文化を享受でき,かつ落ち着いた(海のある)暮らしができます。都会と地方のいいとこどり!

 身の軽いフリーランスの方は,ここでお見せしたようなデータを参考に,移住を検討されてもよいでしょう。どこに住んでも収入は一緒,それでいて家賃が安くなるなら,暮らしはかなり楽になります。私は,この特権を行使してよかったと思っています。