2017年7月31日月曜日

2017年7月の教員不祥事報道

 いやあ,暑くなりました。快晴の日が続きますが,昼食後の散歩は暑くてできません。7月も今日で終わりです。今月,私がネット上で把握した教員不祥事報道は40件です。

 赤字は珍事案。ツイッターでの問題投稿,掲示板への書き込みでわいせつ行為発覚とありますが,SNSをやる先生も多いかと思います。最近の教員採用試験では,不祥事防止の問題がよく出るのですが(大阪は毎年),ネットルールの問題も出るようになるかもしれません。

 埼玉の小学校教諭の「窓から飛び降りろ」発言。私の頃は,「ここ(4階)から突き落としてやろうか」とか「簀巻きにして屋上から放り投げるぞ」とか,ポンポン言われたことを思い出します。世代別に,私が聞いた「先生のトンデモ発言集」みたいのを編集して本にしてほしい…。

 アンケートの書き直し強要事案(兵庫,小学校)。今は評価の時代ですが,児童・生徒のアンケートもやるんですね。指導材料にするため実名制にするのでしょうが,自身の指導改善のための事情聞き取りならいいですが,回答改竄は論外。

 明日から8月,いよいよ夏本場です。ここ横須賀の夏は,前住の多摩市よりも暑そう。でも海辺ですので,心地よい海風が吹き,嫌な暑さではないです。

 今週の木曜(8/3),新刊『データで読む 教育の論点』が晶文社より刊行されます。夏休みの読み物として,広く一般の方々に読んでいただけることを願っております。
http://www.shobunsha.co.jp/?p=4364

<2017年7月の教員不祥事報道>
<忘れ物>多い児童の名前ランキング掲示 教諭に注意 長野
 (7/1,毎日,長野,小,女,50代)
無免許運転の教諭 停職6か月(7/4,日テレ,大分,男,58)
高校教諭が下半身映った動画投稿(7/3,京都新聞,京都,高,男,31)
県立高校教師が書類を不法投棄し 書類送検
 (7/3,朝日放送,滋賀,高,男,31)
強制わいせつ:小学校臨時講師を再逮捕(7/5,毎日,愛知,小,男,29)
懲戒免職:覚醒剤譲受で逮捕 小学教諭を処分
 (7/7,毎日,鹿児島,小,男,35)
23歳女性の服に手入れ胸触る 37歳保育教諭を強制わいせつで逮捕
 (7/9,産経,滋賀,幼,男,37)
「援交募集」女子生徒なりすまし投稿容疑 高校教諭逮捕
 (7/10,朝日,滋賀,高,男,35)
わいせつ行為 中学講師を免職処分 岡山市教委
 (7/11,山陽新聞,岡山,中,男,29)
「首相殺してもらうしかない」ツイッターで高校教諭が投稿
 (7/12,神戸新聞,兵庫,高,男,60)
児童の成績一覧表など挟んだノート紛失(7/13,産経,大坂,小,男,20代)
公然わいせつの男性講師を「停職1か月」の懲戒処分
 (7/13,岩手放送,岩手,高,男,20代)
女性はね死亡させる…県教委が女性教諭処分 男性教諭も別事故で処分
 (7/14,埼玉新聞,埼玉,小女57,高男33)
教師が小4児童に「窓から飛び降りろ」(7/17,日テレ,埼玉,小,男,40代)
中学校男性教師がサバイバルナイフ“所持”で逮捕
 (7/19,テレ朝,青森,中,男,49)
高校教諭が個別指導時に女子生徒の胸触る(7/19,サンスポ,千葉,高,男,26)
2歳娘にかみつく、虐待か=傷害容疑で教員逮捕
 (7/19,時事通信,大阪,小,男,22)
思い込みで無実の児童を平手打ち 宮古島の小学校教諭
 (7/19,沖縄タイムス,沖縄,小,男,50代)
女子中学生に淫行容疑で小学校教諭逮捕(7/20,産経,広島,小,男,26)
酒気帯び運転で男性教諭を懲戒免職処分(7/20,日テレ,長野,高,男,47)
理科実験で爆音、18人病院へ 教頭が水素の量ミスか
 (7/20,神戸新聞,兵庫,小,男,51)
教諭2人を懲戒免職 盗撮、路上で女性の体を触る
 (7/21,日刊スポーツ,山口,盗撮:小男52,わいせつ:特男24)
授業中に児童の骨折る 担任の講師を懲戒処分(7/21,朝日,福岡,小,男,30)
県立高女子サッカー部の顧問 部員名簿なくす
 (7/21,毎日放送,滋賀,高,男,48)
教諭がアンケの書き直し強要か(7/22,神戸新聞,兵庫,小,男,30代)
飲酒運転疑いで教諭逮捕 群馬・渋川(7/22,産経,群馬,高,62)
懲戒処分:免停講習後当日に運転の男性教諭(7/24,毎日,大分,男,58)
女子高生スカート内撮影で逮捕の小学校講師を免職 
 (7/24,日刊スポーツ,奈良,小,男,23)
盗撮で伊勢市の中学教諭を懲戒免職(7/25,CBCテレビ,三重,中,男,34)
男児にわいせつ 臨時講師を逮捕(7/25,CBCテレビ,愛知,小,男,29)
サンダルにカメラで盗撮の中学講師を免職(7/26,産経,福岡,中,男,46)
「事故に遭えばいい」 教諭が児童たちに発言
 (7/26,西日本新聞,熊本,小,男,50代)
住居侵入の疑い 今治西高教諭の男を逮捕(7/26,愛媛新聞,愛媛,高,男,42)
相模原市立中教諭を逮捕=同僚の財布窃盗容疑
 (7/27,時事通信,神奈川,中,男,51)
「一緒に飲みませんか」電車内で男性に痴漢(7/27,産経,東京,高,男,53)
女性教諭1200万円着服で免職 夫にせがまれ 親の医療費のはずが競馬代に
 (7/28,産経,大阪,高,女,29)
小学校教頭、女性下着持ち帰り免職「楽しみになっていた」
 (7/28,サンスポ,長崎,小,男,59)
教諭懲戒処分:女児に手紙「恋愛感情が抑えられなかった」
 (7/28,毎日,埼玉,小,男,28)
体罰で中学教諭を停職3カ月 奈良県教委(7/31,京都新聞,奈良,中,男,53)
女子生徒と淫行容疑、中学校講師を逮捕 書き込みで発覚
 (7/31,産経,大阪,中,男,24)

2017年7月29日土曜日

卑怯者よ

 先ほど更新の記事「相関と因果について」に,以下のコメントが書き込まれました。公開拒否にしてますが,スクショを掲げます。


 画像が見にくいですので,転写しましょう。

**********
舞田先生,いつもブログを楽しみにしています。
また,新刊の発売,おめでとうございます。

さて,1ファンとして,1つ懸念がございます。

舞田先生は,プレジデント社やコンサルの方などについて,ブログで言及していらっしゃいますが,あのような記事は早めに削除したほうがよいのではないでしょうか。

と言いますのも,8月3日になれば,誰でも,アマゾンで新刊のレビューを書くことが出来てしまいます。

舞田先生のお気持ちは分かりますが,できるだけ敵を減らしておいた方が,アマゾンレビューに変なことを書き込まれなくてよいのではないか,と思った次第です。

特に,最近,下記のブログ記事が,少しずつ拡散しているようでございます。
★匿名の誹謗中傷ブログのURL(転写者)

↑のような記事が,アマゾンレビューに掲載されてしまいますと,先生の名誉が地に落ちてしまうのではないか,と危惧いたしております。

そのような理由で,老婆心ながら,先生にとって,まずいことにならないよう,コメントさせて頂いた次第です。

それでは,暑い日が続きますが,お体ご自愛くださいませ。

かしこ
**********

 匿名ですが,発信者が誰かは容易に推測されます。末尾に「かしこ」とつけて女性を装っていますが,何とも滑稽です。

 いやあ,コンサルさん。例の事件の記事で仕事が減って困っているとはいえ,ここまでやりますか。「当該記事を削除しろ,さもなくばアマゾンに誹謗中傷レビューを書き込む」ですか?

 正論で叶わないとなると,陰(匿名)でコソコソ人を陥れるようなことをする。あなたは,どうしようもない卑怯者ですね。

 あなたには何としても,人様に物を教えるような仕事は退いてもらわないといけません。例の記事は永久に公開することといたします。恥を知れ,卑怯者よ!!

相関と因果について

 つまらないことをベチャベチャ言っている人がいますので,私の考えを示しておきましょう。面倒なので,間もなく出る新刊『データで読む 教育の論点』(晶文社)の一部で替えさせていただきます。
http://www.shobunsha.co.jp/?p=4364

 コラム「見かけの相関に注意」のゲラのスクショです。改ページしてますので,行間が空いてますが気にしないでください。


 慎重なのは結構ですが,それが過ぎて何も言わない(言えない),というのはつまらないと思います。生煮えでもいいから情報(アウトプット)を出して,議論のタネにしてもらったほうがいい。私は,こういう考えでいます。

 風変わりな発言をして叩かれる著名人がいますが,そういう人に私は敬意を表します(他人への人格攻撃などは論外ですが)。私は,「面白い人」が好きです。

 「舞田はいい加減なデータで社会を惑わす犯罪者だ」と言われたことがありますが,実に光栄です。お礼に,次の言葉を贈りましょう。「犯罪は,社会にとって有益である」(デュルケム『社会学的方法の規準』)。

2017年7月28日金曜日

学歴社会の可視化

 学歴別の年収・労働時間を,一風変わったグラフで表現してみました。ツイッターで発信したところウケているようですので,元データも添えてブログにも載せておきましょう。

 労働者のお給料を学歴別に知れる公的な資料は,厚労省の『賃金構造基本統計』です。最新の2016年調査には,同年6月の月収と,前年(2015年)の年間賞与額が記載されています。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

 月収(諸手当込)を12倍して年間賞与額を足すことで,年収を推し量れます。この資料には,月の所定内労働時間と超過労働時間も出ていますので,両者の合算を12倍して,年間の労働時間としましょう。

 私の年代(40代前半)の一般労働者について,学歴別の年収と年間労働時間を計算すると,以下のようになります。一般労働者とは,パート等の短時間労働者を除く労働者です。フルタイム労働者に近いとみてよいでしょう。

 10人以上の民間企業に勤務する,一般労働者のデータです。原資料では,学歴は4つの区分になっています。


 バリバリの働き盛りですが,男女とも年収は学歴によって大きく違っています。男性の中卒の年収は449万円ですが,大卒は720万円。女性の中卒と大卒は,倍近くの開きです。学歴社会ニッポン,未だに健在なり。

 性差も大きいですね。男性の高卒(519万円)と女性の大卒(533万円)が同じくらいです。学歴差よりも性差に憤る人がいてもおかしくないでしょう。

 労働時間にも学歴差があります。低学歴ほど長い傾向です。これは知らなかった…。

 高学歴ほど年収が多く,労働時間が短いですので,前者を後者で割った時間給(a/b)は学歴ときれいに比例しています。男性では,大卒であるかどうかで違いが大きくなっています。

 右端は,該当する労働者の推定数です。70年代生まれの私の世代では,中卒はマイノリティです。ただ今ほど大学進学率は高くなかったので,数としては男女とも高卒が最も多くなっています。20代だったら,大卒が最も多い「逆ピラミッド」になっているでしょう。

 さて,上表のデータをグラフにしてみましょう。2次元の平面を駆使して,年収,労働時間,時間給,労働者数の4要素を軒並み表現してみます。


 男女とも低学歴になるほど,労働時間が長く,年収が少ない右下にシフトしてきます。時間給も,男性の中卒は2000円,女性の中卒は1500円を割ります(斜線)。

 アラフォーの学歴格差の可視化ですが,いかがでしょう。高学歴の労働者は生産性が高いのだから,高い給与を得て当然。ベッカー流の人的資本論に基づくコメントがツイッターで多数寄せられましたが,この古典理論を支持する人は今はそう多くないでしょう。

 「大卒なら間違いない,地頭がいいので訓練可能性に富む」。こういう見方をとっている大企業が,人材選抜の(手軽な)シグナルとして学歴を使っているだけのこと。企業が大卒者を好んで雇うのは,彼らが大学で身に付けた知識やスキルに期待してのことではない。訓練可能性を見込んでのこと。こうした「シグナリング理論」が現実を言い当てているように思えます。

 ただ上記のグラフは,学歴格差よりもジェンダー格差を如実に表しているともいえます。同学歴でも,男性と女性のドットの距離が大きい。労働時間を加味した時間給も,男性のほうがずっと多くなっています。諸外国のデータで同じグラフを作ったら,こんなふうになるでしょうか。

 当人の仕事の質(何ができるか)よりも,性や学歴といった属性(何であるか)がモノをいう。近代社会が否定したはずの属性主義が生き長らえることを,われわれは見逃すべきではありません。

2017年7月26日水曜日

強い町田市

 「子どもの転入超過数全国3位,子育てしやすい町田」という記事を見かけました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170725-00000059-minkei-l13

 転入超過数とは,1年間の転入者数から転出者数を差し引いた数で,人口流入の度合いの指標としてよく使われます。町田市は,2016年の15歳未満人口の転入超過数が808人で,全国3位であったとのこと。

 私はこれまで,親年代(25~39歳など)の転入超過数をもとに,「子育てに選ばれる街はどこか?」という主題を考えたことがあります。しかるに,この中には未婚者も含まれますので,事態を読み違える危険もあるでしょう。

 考えてみれば,子ども人口の動きに着眼するのがベストかもしれません。上記の記事に触発され,首都圏(1都3県)の市区町村について,年少人口の転入超過数を拾ってみました。

 資料は,総務省『住民基本台帳人口移動報告』です。最新のデータは2016年のものですが,ちょっと前の2010年との比較もしましょう。もっと前まで遡りたいのですが,年齢別の転入超過数を市区町村レベルで知れるのは,2010年調査からのようです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000000070001

 両年について,1都3県の市区町村の年少人口の転入超過数を採取し,高い順に並べてみました。上位20位までを示すと,以下のようになります。言わずもがな,年少人口とは15歳未満人口のことです。


 子ども人口の流入度を指標とした,「子育てに選ばれる街」の一覧です。ほう,2010年と2016年とも,トップは町田市ではないですか。東京南端のこのエリアは,一貫して強いのですね。

 黄色マークは,両年とも上位10位にランクインしている地域で,安定して子ども人口を吸い寄せていることが知られます。東京の町田と八王子,千葉北西の3エリアです。「母(父)になるなら流山」のフレーズで知られ,駅前保育を展開している流山市も入っています。

 赤字は,両年とも上位20位に入っている地域。黄色マークの最強5エリアには及びませんが,これらも安定して子育てに選ばれている地域といえましょう。さいたま市や,神奈川の茅ヶ崎市が顔を見せています。

 しかし,町田市がこんなに強いとは知りませんでした,一時,ヤンキーが多いとか,都内で少年非行の発生率が最も高いとか言われたことがありますが,ここまで安定して子ども人口を引き寄せているとは。

 冒頭の記事によると,駅チカの子どもセンター,子育て支援サイトできめ細やかな情報発信をし,今年10月には駅から保育所までの送迎サービスも開始するとのことです。来年には小田急線も複々線化し,都心へのアクセスがさらに快適になります。「伸びしろ」も多く残しています。

 1都3県の全市区町村の転入超過数を拾いましたので,それを地図にしておきましょう。最新の2016年のマップです。4つの階級を設け,242の市区町村を塗り分けてみました。


 白色は転入超過数がマイナス,つまり子どもが出て行っているエリアです。東京の都心は,ほぼ真っ白ではないですか。それを濃い色が円状に取り巻いていて,小学校の社会科で習った「ドーナツ化現象」のような模様になっています。

 都心を取り巻く濃い色は,子育てに選ばれる地域で,千葉の北西部,さいたま市,町田・八王子,そして湘南エリアが該当します。

 親年代の転入超過数のマップは都心が濃い色になり,「子育ても都心回帰」という印象を与えるのですが,この中には未婚者が含まれるので,誤解が生じる恐れがあります。子ども人口の動きに着眼した,上記のマップのほうがベターでしょうね。

 冒頭の記事に接したおかげで,認識を改めることができました。今は,ネットでいろいろな記事を読めますので,とてもありがたい。それを参考に,自分が作ったデータを絶えず精緻化させていこうと思っています。

2017年7月22日土曜日

共働き男性のWLB,家事分担度

 昨日,共働き男性の家事・家族ケア時間の国際比較を,ツイッターで発信しました。横軸に5時間未満,縦軸に20時間以上の者の割合をとった座標上に,それぞれの国を配置したグラフです。

 日本の外れっぷりが一目瞭然。横軸の値(≒妻ワンオペ率)が飛び抜けて高く,縦軸は最も低し。見てくださる方が多いようです。

 しかるに,男性の家事・家族ケア時間だけを切り取ってみるだけでは不十分でしょう。男性の生活時間の多くを占める仕事時間(①),またパートナーとの分担度という点から,女性の家事・家族ケア時間(②)との対比もしないといけません。

 ①との対比から男性のワークライフバランス度,②との対比から妻との家事分担度が分かることになります。この点のデータも見たいという要望が多数でしたので,それを作ってみることにしましょう。

 ISSPの『家族と性役割の変化に関する意識調査』(2012年)では,各国の成人男女に対し,週間の家事・家族ケア時間と仕事時間を問うています。

 本調査のローデータを加工して,子がいる共働き男性の家事・家族ケア時間(A),仕事時間(B),同じ条件の女性の家事・家族ケア時間(C),の週間平均時間を計算しました。この3つから,以下の指標を割り出すことができます。

 男性のワークライフバランス度=A/(A+B)
 男性の家事・家族ケア分担度=A/(A+C)

 単位は%で出しましょう。下表は,37か国の結果の一覧表です。黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。カナダ,インド,韓国は共働き男性(女性)のサンプル数が50人に満たないので,分析対象から外したことを申し添えます。


 日本の共働き男性の家事・家族ケア時間は8.6時間で,飛び抜けて低くなっています。仕事時間は51.9時間で,中国に次いで長し。家事・育児時間が短く,仕事時間が長いので,WLB度は14.1%と低くなっています。37か国で最低です。

 同じ共働き女性の家事・家族ケア時間との対比により,妻との分担度を推し量るとわずか16.0%(6分の1)で,こちらも世界で最低です。

 日本の男性の生活構造の歪みが数字で表れていますねえ。共働きといっても,日本の女性は多くがパートで,就業時間が短いということもあるでしょうが,これはヒドイ。

 算出された,共働き男性のWLB度と家事・育児分担度の布置図を描いてみましょう。下図は,横軸に前者,縦軸に後者をとった座標上に,37の社会を配置したものです。点線は,37か国の平均値です。


 ぐうの音も出ません。日本のパパは,自身のワークライフバランス(仕事と生活の調和)が悪く,妻との家事分担もできていない。

 この要因を,日本の男性の長時間労働だけに帰すことはできますまい。日本国内の共働き男性のサンプル(63人)でみると,就業時間と家事・家族ケア時間に相関関係は認められません。長時間労働の男性ほど家事・育児時間が短い,という傾向はない。

 当人の家事スキル,妻の意識など,いろいろな要因が交じり合っていると思われますが,平均値でみた国際的な位置は上記のようになるのは事実です。これでは少子化に歯止めがかかりません。日本の「働き方改革」,待ったなしです。

2017年7月17日月曜日

ワンオペ家事

 「ワンオペ」という言葉が流布しています。人手不足のファーストフード店の夜勤を,店員1人で切り盛りする。こういう状況を問題視したフレーズです。

 しかるにワンオペは,職場だけではなく家庭でも蔓延っています。よく聞かれるのは,ワンオペ育児です。夫が育児をせず,もっぱらその負担が妻に課せられる。現在,日経デュアルでこの問題の特集が組まれており,読者の関心を集めています。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=10851

 私も同Web誌で連載を持っていますので,この問題に関するデータを提示できないかと前から思っていました。基本事項として,共働き夫婦のうち,妻のワンオペ育児の状態にある夫婦が何%くらいか。ワンオペ育児の量を可視化したい。

 こういう関心のもと,『社会生活基本調査』の統計表を細かくみたところ,ワンオペ家事の夫婦の比率を捻り出せることを知りました。2011年の同調査の生活時間統計によります。

 生活時間統計(A)の表64では,共働き世帯の数が,夫と妻の家事関連時間(1日あたり)の階級別に集計されています。家事関連時間とは,家事と買い物時間の合算です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001040666&cycode=0

 手始めに,0歳の乳児がいる共働き夫婦のクロス統計表をみてみましょう。下表は,カテゴリーを簡略化した「5×5」のクロス表です。表側(タテ)は夫,表頭(ヨコ)は妻の家事関連時間(平日1日あたり)の階級です。各セルには,該当する世帯の数(千世帯)が示されています。


 合計30.5万世帯ですが,夫の家事時間がゼロの世帯が多いですねえ(一番上の行)。夫の家事時間がゼロで,妻がそうでない「妻ワンオペ家事」世帯は,黄色マークのセルに該当します。その数13.4万世帯で,全体の43.9%に該当します。

 妻はパートないしは時短勤務という世帯が大半でしょうが,これは酷い。手のかかる赤ちゃんがいる共働き世帯の半分弱が,妻ワンオペ家事の世帯であると。せいぜい2~3割くらいかと思ってましたが,ここまで多いとは驚きです。

 これは平日のデータですが,土曜や休日になると,さすがに少しは比率が下がります。しかるに,子どもが大きくなるにつれ,事態は悪化してきます。

 私は同じやり方で,共働き世帯に占める「妻ワンオペ家事」世帯の割合を,曜日別,末子の年齢別に計算してみました。下図は,結果をグラフにしたものです。


 子どもが大きくなるにつれて,妻ワンオペ家事世帯の比率が高くなっていきます。平日でみると,末子が学齢(6歳)に達した以降は,およそ8割で推移します。土曜は6割,休日は半分ほどです。子どもが加勢するようになるからかもしれませんが。

 これは共働き世帯のデータです。夫婦ともフルタイム勤務の世帯では状況は違うでしょうが,妻が一手に家事を担っているワンオペ世帯がここまで多いとは,看過できることではありません。

 ここでみたのはワンオペ家事の世帯割合ですが,ワンオペ育児の世帯量も,同じようなものかもしれません。

 最新の2016年調査のデータでは,何%くらいになるでしょう。2016年の生活時間調査の結果は,9月に公表されます。はて,ここ数年のワークライフバランス政策の効果が実証されるかどうか…。

 その前に,国際比較もやってみたいところ。ISSPの「家族と性役割の変化に関する意識調査」(2012年)で,家事・育児時間を訊いていたような。「夫ゼロ,妻その他」のワンオペ世帯率が国によってどう違うか。日本の位置はどうか。あまりやりたくない分析ですが,避けては通れない課題です。