2010年12月23日木曜日

学校を休む

 前回は,他殺被害率という指標を使って,現在の社会の危険度を相対化してみました。今回は,学校を長期間休む子どもの比率について,同じことをしてみようと思います。学校に来ない子どもの存在は,教師の頭痛のタネの一つですが,長期欠席の現代的な特徴を浮き彫りにすることで,もしかすると,問題の打開に向けた視点が出てくるかもしれません。

 現在の文科省の統計(『学校基本調査』)では,長期欠席とは,年間30日以上休むことと定義づけられています。1990年までは年間50日以上でしたが,翌年以降,上記のように基準が変更されています。さて,上記調査によりますと,2009年度間の小・中学校の長欠児童生徒数は180,647人です。同年の全児童・生徒数(10,663,929人)に占める比率は1.69%となります。20世紀後半にかけての,この値の推移を折れ線グラフで示すと,以下のようです。


 1975年まで減少し,その後増加に転じています。青少年問題の研究者にはよく知られた,長期欠席率のU字曲線です。このような曲線になるのは,昔と今では,長欠の内実が大きく異なっているからです。


 このことは,長欠の理由の内訳をみると,よく分かります。現在では,理由の大半が不登校です(以前は,学校ぎらいといっていました)。中学校では,長欠の約8割が不登校によるものです。しかし,先ほどのカーブの始点にあたる1952年では,それ以外の理由が目につきます。病気,貧困など。また,当時の「その他」の中には,親の無理解というものがあったようです。学校に行かせる意義を認めず,子どもを働かせて,生計の足しにするなど。

 このように内実をのぞいてみると,上記のU字曲線の意味するところが分かります。つまり,終戦後間もない混乱期から,経済の高度成長期を経る中で,貧困や親の無理解など,外的理由による長欠が減ってきました。変わって,1975年以降,受験競争の激化,いじめや校内暴力などの学校病理現象が噴出する中,今度は,当人が学校を嫌う不登校による長欠が増えてきた,と解されます。いみじくも,20世紀後半期の長欠のターニング・ポイントは,ちょうど中間の1975年であったことが知られます。

 こうみると,どうでしょうか。昔の長欠は,就学条件の是正や学校側の働きかけで,解決できる側面を含んでいました。ですが,今日にあっては,そうしたことをすればするほど,北風と太陽のごとく,問題がこじれていく恐れが多分にあります。社会が豊かになり,情報化も著しく進んだ今日,そもそも子どもたちは,学校で勉強することの意義を見出しにくくなっているのですから。

 近年,学校外の教育施設(フリースクールなど)での学習やIT学習などによって,学校の指導要録上,出席扱いされることが可能になっています。こうした柔軟な対応は,大変賢明であると思います。教育は社会に応じて変わる,これは教育社会学が拠り所とするテーゼですが,成熟社会・情報化社会という,今日の社会状況を勘案するならば,四角い学校空間が教育を独占することは,もはや不可能であるというべきでしょう。

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