内閣府の『国民生活世論調査』の中に,「これから先,生活はどうなっていくと思いますか」という設問があります。社会の希望の多寡を測る大変重要な設問であり,今後とも,継続して設けていただきたいものです。
去る2月2日の記事では,「悪くなっていく」と答えた者の比率を,10歳刻みの年齢層別にみてみました。ここでは,もっとレンズをしぼって,5歳区分でみてみようと思います。期間は,1990年代以降とします。この時期にかけて,日本社会に暗雲が立ち込めてきたことは,誰もが認めるところでしょう。1991年から隔年のデータをとってみます。
「生活がこれから悪くなっていく」と答えた者の比率は,1991年では9.6%でしたが,2009年では32.3%にもなっています。社会に蔓延する展望不良の総量が3倍に増えたわけです。年齢層別に細かくみると,今世紀以降の50代から60代の部分にブラックゾーンが広がっています。2009年の50代後半では41.9%です。
この層の展望不良の内実は,老後の生活不安というものが大半と思われます。年金制度の崩壊,孤族化が進むなか,老後の生活を頼れる家族がいないなど,不安因子は数多くあります。
とはいえ,展望不良の問題は,こうした中高年層に限られるものではありません。図をよくみると,高率ゾーンが次第に下の年齢層に伸びてきています。2009年の値を1991年の値で除した増加倍率をとると,最も高いのは20代後半で6倍です(2.7%→16.1%)。
若者が希望を持てない社会というのは,何ともさびしいものです。子どもと高齢者の狭間に位置する,若者に関連する施策にも,力が注がれることを欲します。