2011年2月24日木曜日

大学の退学率の規定要因③

 前回の記事では,2010年における,各大学の専任教員一人あたりの学生数(TP比)を明らかにしました。こうした教育条件指標と,学生の退学率との間には,どういう相関関係があるのでしょうか。

 常識的には,TP比が高い大学ほど,マスプロ教育になりがちで,個々の学生へのケアが行き届きにくいと思われます。そういう大学では,不満を感じる学生が多くなり,ひいては退学率も高くなるのではないでしょうか。

 前回,読売新聞教育取材班『大学の実力2011』中央公論新社(2010年)より,全国563大学のTP比を計算しました。このうち,退学率も同時に知ることができるのは,554大学です。退学率とは,2006年春入学者のうち,2010年3月までの間に,どれほどのものが退学したかを表す指標です。つまり,在学期間中にどれほどの者が辞めたか,ということです。分析対象とする554大学の退学率の平均値は8.4%ですが,最大の32.8%から最小の0.0%まで大きな開きがあります。こうした退学率の違いは,各大学のTP比と関連があるのでしょうか。


 上図は,両変数の相関図を描いたものです。対数の回帰曲線を入れていますが,傾向としては正の相関です。相関係数は0.250とあまり高くはないですが,554というサンプル数の多さを考慮すると,統計的に有意であると判定されます。

 TP比が高い大学ほど,辞める学生が多い,という統計的事実は,一応は確認されます。むろん,この相関関係が因果関係であると言い切るには,他の要因をも考慮した重回帰分析の結果を待たねばなりません。図をみると,TP比が同じくらいの大学でも,退学率が大きく異なるケースが多々ありますので。

 ひとまず,上記の関係が因果関係であると仮定して,コメントを添えるならば,やはり条件整備が重要である,ということでしょう。昨今,専任教員の数を削減し,安上がりの非常勤教員への依存度を高める大学が多いようですが,そうした姿勢には,退学率の増加という副作用が伴う可能性がある,ということを申したいと思います。

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