2011年7月13日水曜日

都道府県別のジニ係数

 前回,2010年の『家計調査』のデータを使ってジニ係数を出したところ,0.336という値になりました。この数字は全国値ですが,われわれが身近に感じるところの社会というのは,当然,もっともっと小さいものです。今回は,47都道府県のジニ係数を出してみようと思います。貧富の格差度合いが相対的に大きい県はどこでしょうか。

 総務省『家計調査』からは,収入階層別の世帯数分布と,各層の平均収入のデータを,都道府県別に知ることはできないようです。そこで,同じく総務省が実施している『全国消費実態調査』の結果を使います。

 ただ,この調査は,2人以上世帯を調査対象としていますので,単身世帯が漏れ落ちています。極貧層の多い単身世帯が除かれるわけですから,ジニ係数は,『家計調査』からはじき出される値よりもやや低くなることが見込まれます。

 では,作業を始めましょう。下の表は,2009年の同調査の数字を使って作成したものです。この調査では,調査対象の世帯を年収に応じて19の階層に分け,各層の平均年収の額を明らかにしています。下に掲げるのは,全国のものです。下記サイトの「家計収支編」の表1「年間収入階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出(2人以上世帯) 」から,aとbの数字をハンティングしました。
 http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001037021


 前回の復習ですが,ジニ係数とは,社会を構成する各階層の量の分布と,それぞれの層が受け取っている富の量の分布を比べて,双方がどれほどズレているかに注目するものです。

 表の右欄の累積度数をみると,年収400円未満の階層は全世帯の28%を占めますが,この層が手にしている富の量は,全体の12%でしかありません。反対に,全体の7%を占めるにすぎない,年収1,000万円以上の富裕層が,富全体の18%をもせしめています。富の配分構造には,少なからぬ偏りがみられます。

 右欄の累積度数のデータから,ローレンツ曲線を描くと,下図のようになります。それぞれの階層のドットを結んだものです。


 ジニ係数とは,このローレンツ曲線と均等線(対角線)とで囲まれる部分の面積を2倍したものです。図でいうと,色つきの部分です。この部分の面積は0.155です。よってジニ係数は,これを2倍して0.311となります。前回,『家計調査』の統計から出した0.336よりもやや低くなっています。これは,単身世帯が調査対象から除かれているためです。

 私は,このジニ係数を,47都道府県について出しました。各県の階層別世帯数と平均年収の数字は,上記のサイトの「都道府県別」という箇所から得ることが可能です。各県について,表1「年間収入階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出(2人以上世帯) 」というものが,エクセルファイルでアップされています。

 余談ですが,この作業は,かなり大変そうに思われるかもしれません。なにせ,今たどった計算のプロセスを47回繰り返すのですから。しかし,現代はコンピュータ時代。必要な計算式をプログラミングすれば,あとは,各階層の世帯数(a)と平均年収(b)の数字を47都道府県について打ち込むだけで,直ちに目的を達成することができます。高度な統計ソフトは不要。エクセルで十分です。

 しかし,コンピュータがなかった時代は,こうした膨大な量の計算をすべて手計算でこなしていたわけです。昔の人はすごいなあ,と思います。社会学の祖と仰がれるエミール・デュルケムが名著『自殺論』を刊行したのは,1897年(和暦でいうと明治30年)のことですが,この時代では,当然,電卓もありません。統計局の友人タルドの助力を得たとはいえ,当時のヨーロッパ各国の自殺率を,時期別や属性別に,すべて手計算で明らかにする作業には,とてつもない労力を要したことでしょう。デュルケムの偉大さは,こういうところにも表れています。

 話が脱線しましたが,47都道府県のジニ係数を地図化してみました。下図をご覧ください。各県を0.01刻みで塗り分けています。


 ジニ係数は,最南端の沖縄で0.338と最も大きくなっています。最も小さいのは,京都の0.274です。0.32を超える県は,宮城,福島,大阪,徳島,長崎,そして沖縄です。微差ではありますが,これらの県で,比較的貧富の差が大きいようです。東京は0.310で,全国値(0.311)とほぼ同じでした。

 次なる関心事は,このジニ係数の高低によって,各県の犯罪率や自殺率などがどう違うかです。貧富の差が相対的に大きい県ほど,こうした逸脱行動が多発する,という傾向が観察されるでしょうか。面白い結果が出ましたら,ご報告いたします。

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