前回は,結婚・出産というイベントを経験することで,25~34歳女性のすがたがどう変異するかを明らかにしました。全国の統計図に加えて,大都市の神奈川と北陸の福井の図も提示しました。
この記事をみてくださった方のツイッター・コメントを拝見すると,他の県ではどうなのか,という関心が結構多いようです。わが国では,結婚して子どもができることで職を辞す(ことを強いられる)女性が少なくありませんが,その程度には地域差があります。今回は,全県分のデータをお見せしようと思います。
私は,6歳未満の幼子がいる25~34歳女性の労働力状態を,都道府県別に明らかにしました。資料は,2010年の総務省『国勢調査』です。どういうデータを使っているかについてイメージを持っていただくため,前回比較した神奈川と福井を事例にして,ローデータを提示しましょう。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/index.htm
『国勢調査』の産業等基本集計結果のデータから,以下のような統計表をつくることができます。
幼子を抱える25~34歳女性のうち,労働力状態が判明する者は,神奈川では14万4千人,福井では1万5千人ほどです。内訳をみると,両県とも,非労働力人口の家事というカテゴリーが最も多くなっています。いわゆる専業主婦です。
その次が正規雇用就業,そして3番目に多いのはパート・バイトといった非正規就業です。しかるに,順位構造は同じですが,分布の様はこの2県ではかなり違っています。専業主婦率でいうと,神奈川では65.6%にもなりますが,福井は37.6%にとどまっています。
私は,同じデータを全県分収集し,分布を帯グラフで表現してみました。上表の10カテゴリーを4カテゴリーに簡略化した図です。①正規雇用就業,②非正規雇用就業(ハケン+パート・バイト),③家事(主婦),および④その他の4カテゴリーの分布図です。
全体的にみて,ピンクの専業主婦の領分が幅を利かせていますね。ですが,専業主婦の割合は地域によってかなり違っています。上位5位は,神奈川(65.6%),大阪(65.0%),奈良(64.5%),兵庫(64.4%),千葉(64.2%),です。
いずれも首都圏や近畿圏の都市県です。一方,東北,北陸,そして山陰の県では,割合が比較的小さくなっています。最低は山形で33.3%です。神奈川の半分ほどです。
あと一点,各県の専業主婦率の都道府県地図を掲げておきましょう。上図のピンク色の領分を地図化したものです。
よくいわれるように,こうした地域差は,幼子を預かってくれる保育所がどれほどあるか,ということと関連していると思われます。上の地図と関連させていうと,都市部では保育所が不足していることはよく知られています。
また,前回の記事へのツイッターコメントにありましたが,親と同居している三世代家族の量とも相関していることでしょう。上記地図をみると,日本海沿岸部の専業主婦率が低いようですが,子の面倒をみてくれる親との同居が多いのかもしれません。
私は,『国勢調査』のデータを用いて,25~34歳の有配偶女性の親同居率を県別に計算しました。また,認可保育所定員を,幼子がいる同年齢女性で除すことで,各県の保育所供給率を明らかにしました。
はて,上図の専業主婦率と強く相関しているのは,親同居率か。それとも,保育所供給率か。相関分析は,次回行うこととしましょう。