2013年5月7日火曜日

東大・京大合格者の組成の変化

 『サンデー毎日』には,毎年春の有力大学合格者数が高校別に掲載されています。昨日,都立多摩図書館に行って,当該雑誌の古い号をコピーしてきました。1980年(昭和55年)4月20日号に載っている,同年春の有力大学合格者数の記事です。


 集計対象となった1,300高校の東大・京大合格者数は4,822人です(過年度卒業生も含む)。この4,822人の出身高校の内訳をみると,国立が8.2%,私立が31.4%,公立が60.4%,となっています。当時は,公立校出身者が過半数を占めていたのですね。

 この組成は,30年を経た2010年春の合格者ではどうなっているのでしょう。サンデー毎日特別増刊号『完全版・高校の実力』(2010年6月12日)から同じ統計をつくって,比較してみました。


 合格者の実数は,4,882人から5,928人へと増えています。しかし,増分はもっぱら私立高校出身者によるものです。私立校からの東大・京大合格者数は1,534人から2,896人へと増え,全体の中での比率も31.4%から48.9%へと大きく伸びました。

 一方,多くの生徒が通う公立校はというと,合格者の実数は2,949人から2,683人へと減り,全体の中での比重も60.4%から45.3%へと減じているのです。

 現在では,東大・京大合格者の半分以上が国・私立校出身者です。国・私立高校による有力大学合格者の寡占傾向が強まっていることが知られます。これがどういう問題を含んでいるかは,申すまでもありますまい。

 まあ,この点については前から指摘されていますが,30年間の変化を都道府県別に観察してみるとどうでしょうか。国・私立校による寡占傾向が強まっている県もあれば,その逆の県もあるでしょう。こういうデータは,これまで提示されていないようです。

 私は,東大・京大合格者を県別に分けて,各々の出身高校の構成を明らかにしました。1980年と2010年春の合格者を比べてみましょう。


 大都市の東京をみると,国・私立校出身者の占有率が72.8%から89.3%へと高まっています。東京に限ると,東大・京大合格者の9割近くが国・私立校から出ています。

 お隣の神奈川では,こうした変化がもっと顕著です。国・私立率は37.3%から81.3%へと激増しています。国・私立からの合格者は91人から247人へと増え,公立からの合格者は153人から57人へと大きく減っているのです。

 黄色のマークをしているのは,合格者の国・私立出身者率が10ポイント以上高まり,かつ公立校からの合格者の実数が減少している県です。最有力大学合格チャンスの(階層的)閉鎖性が強まっている県と評されます。首都圏の1都3県では,軒並みこういう傾向が強まっています。

 幼少期からの受験勉強も含めて,入学に多額の経費を要する国・私立高校出身者による,最有力大学合格者の寡占傾向の強まり。地域ごとに観察すると,それがひときわ顕著なケースも見受けられますね。

 合格者の構成を卒業生のそれと照合することで,合格チャンスの国公私間の偏りを測るジニ係数を計算することができます。この値を47都道府県について出した場合,一番高いのはどこになるでしょう。また,以前と比した伸び幅という点では如何。神奈川かしらん。

 この点を明らかにし,各県の関係者の参考に供するのは,後の課題といたしましょう。