2014年12月11日木曜日

都道府県別の道徳偏差値

 教育の役割は,社会生活に必要な能力を子どもに授けることですが,その能力は一般に「知・徳・体」の3側面から捉えられます。当局の答申や政策文書でも,嫌というほど目にする標語です。

 教育評価の一環として,これらの要素を随時数値化する必要があるわけですが,知と体については,全国学力テストや体力テストにて毎年計測されています。しかるに,あと一つのについては,それを測った客観資料は存在しません。

 そもそも道徳の評価に際しては,「数値などによる評価は行わないものとする」とされていますので(学習指導要領),当然といえばそうですが,この面の資質・能力を定量化することができないわけではありません。今回は,このタブーの領域に足を踏み入れてみようと思います。

 用いるのは,2014年度の文科省『全国学力・学習状況調査』のデータです。本調査は教科の学力だけでなく,対象の児童・生徒(小6,中3)に対する質問紙調査によって,彼らの生活意識も把握しています。
http://www.nier.go.jp/14chousakekkahoukoku/index.html

 私は,以下の5つの問いに対する,公立小学校6年生の回答に注目しました。

 ①学校のきまりを守っているか
 ②友達との約束を守っているか
 ③人の気持ちが分かる人間になりたいか
 ④いじめは,どんな理由があってもいけないことだと思うか
 ⑤人の役に立つ人間になりたいか

 用意されている回答の程度尺度は4つですが,「当てはまる」という最も強い肯定の回答をした児童の比率を拾ってみました。東京でいうと,①は36.2%,②は65.3%,③は74.0%,④は80.3%,⑤は71.3%です。

 これは大都市・東京の数値ですが,他の県はどうでしょう。5つの設問に対する強い肯定の比率を全県について出し,一覧表にしました。黄色は最高値,青色は最低値です。赤色は上位5位であることを意味します。


 ほう,秋田はスゴイですね。全項目とも上位5位に入っており,②~⑤の4つは全国でトップです。子どもの学力がトップの県ですが,徳力もそうだとは。

 ほか,新潟と宮崎が赤字4つ,山梨が赤字3つであり,子どもの道徳意識が相対的に高い県であることがうかがえます。

 では,これら5つの肯定率を合成して,小6児童の道徳意識を図る単一の尺度を構成してみましょう。前回と同様,各県の値を,全分布の中の相対位置を表す偏差値に換算します。平均値が50,標準偏差が10となるような値であり,以下の式で求められます。Xは当該のデータ,μは平均値,σは標準偏差です。

 偏差値=10(X-μ)/σ+50

 東京の①の肯定率を偏差値にすると,10(36.2-41.4)/4.41+50 ≒ 38.2となります。②は39.1,③は46.9,④は35.9,⑤は42.2です。全項目とも平均水準の50をかなり下回っていますが,大都市という地域性の故でしょうか。

 それはさておき,これら5つの偏差値の平均をとると40.5となります。この値をして,子どもの道徳偏差値といたしましょう。学力偏差値ならぬ,道徳偏差値です。

 このやり方で,各県の公立小学校6年生の道徳偏差値を出し,値が高い順に配列したランキング表を作成しました。以下に掲げます。


 最初の表からも予想できますが,トップはダントツで秋田です。道徳偏差値72.4! 2位は山梨,3位は九州の宮崎となっています。

 私の郷里の鹿児島は,ちょうど中間の24位です。もっと上かと思いましたが,こんなとこかなあ。中学の頃はメチャクチャ厳しくて,挨拶を怠っただけで酷い目にあわされたものですが・・・。

 首都の東京は40位であり,神奈川や大阪といった他の大都市県はワースト5位に入っています。やはり都市化度と関連があるみたいで,2010年の人口集中地区居住率との相関係数を出すと-0.501であり,有意な負の相関となっています。都市県ほど,子どもの道徳意識が低い傾向です。

 ちょっと気になるのが,ワースト2位が宮城と福島であることです。2011年の大震災の被災県ですが,このことの影響があるのでしょうか。震災が子どもの健康に影響していることは,昨年の3月29日の記事などでみたところですが,それが子どもの公徳心にも影を落としているとしたら,ただならぬ事態です。

 最後に,計算した都道府県別の道徳偏差値をマップにしておきましょう。50未満,50以上55未満,55以上60未満,60以上の4階級を設け,各県を塗り分けてみました。


 東北の日本海沿岸で色が濃く,都市部で色が薄いのは,学力地図の模様とちょっとばかし似ています。

 さてこれで,各県の学力,体力,そして道徳力を数値化する術を得ました。これらを総動員した,子どもの能力の総合診断という試みもできます。後々,ぜひ手がけてみたい課題です。

 時系列の変化を出すのも面白い。『全国学力・学習状況調査』は2007年から実施されていますが,各県の道徳偏差値は2007年と2014年で比較するとどう変わったか。2008年に改訂された現行の学習指導要領では,道徳教育の強化が目玉にされましたが,その成果を県別に数値化できることにもなります。

 今回は,子どもの徳力の数値化という,タブーとされるかもしれない作業をしてみました。最新の2014年のデータから試算した,都道府県別の値はこうなったというご報告をしておこうと思います。

1 件のコメント:

  1. へええ。これ、それぞれだいたい正規分布になってますね。設問が、それぞれ、それなりの数あるんでしょうかね。

    外れ値になる県がいくつかあるみたいですね。SDとMADが若干違ってくるみたいです。

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