2014年12月4日木曜日

未婚ジニ係数

 年収と未婚の関連が強いことは,このブログで繰り返し書いてきました。男性の場合,年収が低い者ほど,未婚率は高い傾向にあります。稼ぎのない男は結婚できない,ということです。女性にあっては,その逆です。

 わが国に根強いジェンダー観念を考えるとさもありなんですが,年収と未婚の関連の強度を数値化してみたくなりました。お馴染みのジニ係数は,こういう用途にも使えます。

 私は,2012年の『就業構造基本調査』のデータを使って,20~50代の男性有業者について,有配偶者と未婚者の年収分布を明らかにしました。下表は,両者を照らし合わせたものです。有配偶者の数値は,全体から未婚者を差し引いて出しています。よって離別者や死別者も含まれますが,数の上では少数ですので,有配偶者とみなしてもよいでしょう。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm


 年収が判明する有配偶の男性有業者は1855万人,未婚の男性有業者は953万人です。中央には,全体を1.0とした相対度数分布が示されていますが,言わずもがな,有配偶者は高い側,未婚者は低い層に多く分布しています。年収200万未満のワープアの比率をとると,前者では7%ですが,後者では25%,4人に1人にもなります(赤字)。

 やはり,有配偶者と未婚者には,年収のズレがありますねえ。このズレの程度を「見える化」すべく,ジニ係数を出してみようと思います。そのためには,ローレンツ曲線を描くのでしたよね。横軸に有配偶者,縦軸に未婚者の累積相対度数をとった座標上に,16の年収階層をプロットし,線でつないだグラフです。


 両群の年収のズレの程度は,曲線の底の深さから知ることができます。底が深いほど,有配偶者と未婚者の年収格差が大きい,つまり,「稼ぎがない男は結婚できない」の度合いが高いことを意味します。

 年収と未婚の関連の強度を表すジニ係数は,上図の色つきの面積を2倍することで求められます。算出された値は,0.500ジャストです。ジニ係数は0.0~1.0までの値をとる測度で,一般に0.4を超えると値が大きいと判断されますが,この水準を超えています。ニッポンは,男性の年収と未婚の関連が強い社会であることが,数値から知られます。

 ひとまず,この値を未婚ジニ係数と呼ぶことにしましょう。この指標を使うことで,さまざまな社会について,年収と未婚の関連強度を比較することができます。私は,47の都道府県について,同じやり方で20~50代男性の未婚ジニ係数を計算し,値が高い順に並べたランキング表をつくってみました。


 ほう。男性の年収と未婚の関連強度は,県によってずいぶん違っています。未婚ジニ係数は,奈良の0.607から沖縄の0.414まで,幅広く分布しているではありませんか。

 上位は,「稼ぎがない男は結婚できない」の度合いが高い県ですが,近畿の都市県が多くなっています。都市部では,子どもの教育費がかかる(早期受験…),子どもがいる女性がフルタイムで働きにくい(核家族化,保育所不足…),などの条件がありますしねえ。だから,稼ぎのあるオトコじゃないと困ると。こういうことでしょうか。

 下位の群には,南端の沖縄のほか,東北の農村県が多くなっています。共働き率が高い県ですが,女性もバッチリ働ける,夫婦共に生計を立てればいい,という考えが相対的に強いためではないでしょうか。

 全国レベルのデータにてよくいわれる,男性の年収と未婚の関連強度が,地域によって異なることが分かりました。「オトコが養う」のジェンダー意識は農村部のほうが強いといいますが,その逆の面があるかもしれません。

 最後に,上表の県別の未婚ジニ係数を地図にしておきましょう。


 色が濃いのは,20~50代男性の年収と未婚の関連が強い県,稼ぎがない男は結婚しにくい県です。首都圏や近畿の都市部で多くなっています(東京と大阪は別)。

 都道府県差(地域差)を明らかにすることは,それぞれの部分社会における取組を促し,その集積として社会全体がよくなることを願ってのことです。実務教育出版社の『受験ジャーナル』の連載「データでみる都道府県の今」は,こういう考えのもとで書いています。
http://jitsumu.hondana.jp/book/b182871.html

 どうぞ,ご覧ください。

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