2015年8月25日火曜日

小・中・高校生の読書実施率

 2001年に「子どもの読書活動の推進に関する法律」が制定され,子どもの読書を促す取組がなされてきています。この法律の2条では,次のようにいわれています。教員採用試験でもたまに,空欄補充問題が出ます。
http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/dokusyo/index.htm

 「読書活動は,子どもが,言葉を学び,感性を磨き,表現力を高め,創造力を豊かなものにし,人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないものである」。子どもの読書活動の推進に関する法律第2条)

 いいこと書いてますねえ。「人生をより深く生きる力」ですか。子どもが接する親や教師はありきたりのことしか言いませんが,本にはいろんなことが書いてありますからね。

 では,当の子どもはどれほど本を読んでいるか。今回は,小・中・高校生の読書実施率を取り上げようと思います。前回の料理・菓子作りと同じく,「趣味として」実施するものです。学校の朝の10分間読書で強制されるものは含みません。

 2011年の総務省「社会生活基本調査」によると,調査日(2011年10月1日)から遡った過去1年間において,趣味として読書を実施した者の割合は,小学生で53.1%,中学生で51.3%,高校生で43.7%となっています。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/h23kekka.htm

 青年期は「内」にこもる時期。青年は読書を好む。青年心理学のテキストにはこんなことが書いてありますが,発達段階を上がるにつれ読書実施率は上がるかと思いきや,実態は逆です。とくに中学生と高校生の落差が大きく,51.3%から43.7%へとダウンします。

 おそらく受験のためでしょうが,多感な思春期・青年期に本に触れる機会が少ない,果ては減少するというのは,いかにも問題です。青年期の課題は,自我同一性を確立することですが,その達成を阻む要因にもなるでしょう。

 今みたのは全国の値ですが,都道府県別に出すこともできます。趣味としての読書実施率の都道府県差をみてみましょう。下表はその一覧ですが,右端には変化の型を記号で示しています。発達段階を上がるにつれ率が上がるか,下がるか,山(谷)がどこにあるかに依拠して出した,変化のタイプです。

 > = 小 > 中 > 高 (下降型)
 ▲ = 小 < 中 > 高 (中学生が山)
 ▽ = 小 > 中 < 高 (中学生が谷)
 < = 小 < 中 < 高 (上昇型)

 上の4タイプですが,県によって読書実施率の変化型は多様です。こちらもみていただければと思います。黄色は47都道府県中の最高値,青色は最低値です。


 最高値は小学生は岩手,中学生は神奈川,高校生は香川です。中学生のマックスが,受験塾などが多い神奈川とは,ちと意外です。塾通いの電車の中で,本を読んだりするのでしょうか。香川は,中学生から高校生にかけて,36.0%から60.7%へと激増します。

 青色の最低値はどの段階も九州で,宮崎は,中高生の読書実施率が最も低くなっています。

 次に右端の変化型ですが,全国傾向は「>」なのですが,県別では中学生がピークの「▲」が最多です。ちょっと安堵しました。中学生は青年期の入口ですが,この時期における本へののめり込み(逃避)を咎めるのではなく,大人への必要な道程として,大らかに見守りたいものです。

 ただ,東京や大阪といった大都市では,明らかな下降型(>)となっています。東京は小学生が66.4%,中学生が55.5%,高校生が43.9%というように,ガクン,ガクンと落ちていきます。

 それぞれの段階にて,自県の位置はどこか,という関心もあるでしょう。段階ごとに,読書実施率が高い順に並べたランキング表も示しておきます。


 青線は東京,赤線は郷里の鹿児島の位置変化です。東京は下降型,鹿児島はV字型となっています。この表から,読書実施率の絶対値の変化とともに,全県内でも相対位置の変化も見て取れます。ご自分の県を丸で囲み,線でつないでみてください。

 大都市の神奈川は,がんばっていますね。子どもの読書先進県です。当県の取組については,以下のサイトが参考になるかと思います。
https://www.planet.pref.kanagawa.jp/dokusyo/dokusyo-top.htm

 各県の子どもの読書実施率(趣味)は,都市か田舎か,あるいは住民の所得や階層構成がどうかというような,社会経済指標とは無相関です。各県の政策の影響が大きい,ということでしょう。これは,子どもの読書志向を人為的に変えられるという希望的事実です。

 朝の10分間読書のような「上」からの押し付けだけでなく,学校図書館の利用時間を延ばすなどの条件整備も進めていただきたいと思います。

1 件のコメント:

  1. 表から読むと、小学生で最高なのは岩手県ではなく、宮城県ではないでしょうか。些細なことですが。

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