18歳人口の減少により,私大の4割が定員割れしている状況ですが,下位ランクの大学の中にはもう,なりふり構わず学生獲得に走っている大学もあるでしょう。志願者が入学に合意すれば合格という「アグリーメント入試」をやっている大学もあるといいます。
首都圏私大の文系学部を例に,現実を可視化してみましょう。
この作業は前に,埼玉県内の私立大学を分析対象としてやったことがありますが,ここでは首都圏(1都3県)に射程を広げます。また,人文・社会系の学部というように,対象を限定します。こうすことで,専攻の影響を除くことができるでしょう。
このほど刊行された読売新聞『大学の実力2017』には,今年春の入学者総数と一般入試経由の入学者数が,各大学の学部別に掲載されています。首都圏私大の人文・社会系学部でみると,両方のデータが分かるのは281学部です。
この281学部の入学者総数は12万3996人で,そのうち一般入試を経た入った者は6万3381人となっています。一般入試経由率は,後者を前者で除して51.1%,ちょうど半分です。逆にいうと,残りの半分は一般入試を経ていないことになります。
今では,首都圏の私大文系学部の半分が,一般入試以外のAO入試とかで入っていると。地方では,おそらくもっと多いでしょうね。
これは全体の値ですが,入試偏差値別にみるとどうなるか。分析対象の281学部を偏差値に依拠して5つの群に仕分けし,今年春の入学者の一般入試経由率を出してみました。
入学者総数は,A群で最も多いですね。マンモス私大が多いためでしょう。入学者の一般入試経由率は,予想通り,偏差値群によって違っています。下に行くほど低くなる,リニアな傾向です。
偏差値60以上のA群では61.6%ですが,45未満のE群ではわずか27.8%なり。7割以上が,学力を問う一般入試を経ないで入ってきていると。
上表のデータをグラフにしましょう。横幅の大小で群ごとの入学者数を表現した,モザイク図にします。
先ほど述べたように,A群にはマンモス私大が多いので,入学者数ではこの群が最も多くなっています(横幅)。
色付きは一般入試の経て入った者の領分ですが,A群でも,残りの4割は一般入試以外なんですね。まあ,付属学校からの推薦組とかでしょう。有力私大は,こうしたエスカレーター組が多し。
これが,ユニバーサル化した大学の入試の「今」です。今後,ますます白色の領分は大きくなることでしょう。それに伴い,リメディアル教育などが重要になってくる。初年次教育学会なる学会もあるようで,大学に入って間もない新入生のカリキュラムについて,活発な議論がされている模様です。
私は,上図でいうE群の大学で6年間教えた経験がありますが,それを踏まえて,思うところはあります。それは,冒頭のリンク先記事で申しています。偏見丸出しの考えに聞こえるでしょうが,興味ある方はお読みくださいませ。