http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160923-00000112-mai-soci
中学校の若手教員ですから,過重な部活指導なども負わされたのでしょう。それで精神疾患を発症し,自殺に至ったという因果関係が認められました。
全国の中学校を見渡すならば,このレベルの過重労働をしている教員は少なくないように思えます。月間残業時間160時間ということは,週あたりの残業時間は40時間。法定就業時間(8時間×5日=40時間)との差分で考えると,週80時間以上の就業ということになるでしょうか。
OECDの国際教員調査「TALIS 2013」では,中学校教員の週間就業時間を尋ねています。それによると,日本の20代の中学校教員(フルタイム)のうち,週80時間以上勤務している者の割合は12.9%となっています。およそ8人に1人で,少数派ではありません。
http://www.oecd.org/edu/school/talis.htm
30代では9.4%,40代では6.1%,50代では4.1%,となっています。やはり,若手ほど負荷が大きいようです。この比率を,各年齢層の本務教員数に乗じ,出てきた値を合算することで,冒頭の男性教員と同じくらい働いている,過労死予備軍教員の数を推し量ってみましょう。
計算に使う本務教員数(母数)は,2013年の文科省『学校教員統計』から得ました。同年10月時点の数値です。
中学校の過労死予備軍教員数は,20代が4,280人,30代が4,896人,40代が3,865人,50代が3,312人で,合計すると16,353人となります。
全国の中学校には,週80時間以上勤務(月間残業160時間以上)の過労死予備軍教員が,およそ1万6千人ほどいる計算になります。20~50代のフルタイム中学校教員全体の,およそ7.1%(14人に1人)なり。
以上のことを図解すると,下図のようになります。ブラックが,過労死予備軍教員です。図の横幅で,本務教員の上での年齢層比重を表現しています。
仮に,この1万6千人の1.0%(160人)が自殺を図るとすると,中学校教員の自殺率は69.9人(ベース10万人あたり)となり,国民全体の自殺率(近年は,10万人あたり20人ほど)よりも,段違いに高くなることになります。
次期学習指導要領では,AL授業だの道徳の教科化など,英語教育の早期化など,さらに負荷がかかりますが,人員増員・業務のスリム化などの条件整備がないならば,事態はさらに悪化することになります。
われわれはこの事実を直視し,教員の勤務状態改善に取り組まねばなりません。