2016年9月10日土曜日

教員養成大学 VS 一般大学

 新規採用教員に占める,国立教員養成大学出身者の割合が低下しているそうです。公的資源の投入を受けて,教員を輩出することを使命とする教員養成大学にとって,これは看過できないこと。

 曰く,「国立の教員養成大学は未だに研究重視の風潮があり,社会の変化を見据えた教育ができていないのではないか」。むう,関係者にとっては,耳の痛い指摘ですね。

 危機感を持ったのか,文科省内に,国立教員養成大学の改革の方向を議論するチームが立ち上げられている模様です。

 2015年度の公立小学校教員採用試験のデータでみると,試験を突破した採用者のうち,教員養成大学出身者は33.2%となっています。およそ3人に1人ですが,過去最低です。一方,一般大学出身者の比率は58.3%で,こちらは過去最高となっています。

 しかるにこれは,一般大学からの受験者が増えているためとも考えられます。近年,私立大学の教職課程が増えていますからね。「教員免許を取得できますよ」は,学生獲得のための格好のアピールになります。

 ゆえに,教員養成大学が劣勢になっているかを判断するには,受験者(ベース)の構成変化を考慮する必要があるでしょう。小学校教員採用試験の受験者・採用者に占める,教員養成大学出身者,一般大学出身者の割合を推移をとると,下表のようになります。記録のある,1980年代以降のデータです。

 観察期間中の最大値には黄色,最小値には青色のマークをしています。


 採用者に占める教員養成大学出身者の割合は下がっていますが,受験者でみてもそうです。ピークの99年度試験では受験者の半分でしたが,2015年度では24.8%,4分の1にまで萎んでいます。

 対して,一般大学出身者は受験者でも採用者でも増加傾向。先に述べたように,私立大学の教職課程が増えているためです。

 受験者での割合(A)と採用者での割合(B)を照合すると,まだ,教員養成大学出身者のほうが優位ですね。受験者では24.8%だが,採用者では33.2%いる(2015年度)。この群からは,通常期待されるよりも1.34倍多く採用者が出ていることになります。

 BをAで除した採用者輩出率という指標を出し,推移をグラフにしてみましょう。この数値が1.0より大きい場合,通常期待されるよりも高い確率で採用者が出ていることになります。1.0を下回る場合は,その反対です。


 どの時期でも,教員養成大学出身者の輩出率は1.0を超えており,受験者の比重から期待されるよりも高い確率で採用者が出ています。一般大学出身者はその逆です。

 今から10年前の2006年には,2つの曲線がかなり接近しましたが,それ以降,再び乖離しています。関係者の杞憂といいますか,採用試験における国立教員養成大学学生の出来は落ちてはいないようです。上記は小学校試験のデータですが,中高でみても同じです。

 ただ,教員養成大学では採用試験の受験者が減っている,ということはあり得るかもしれません。試験の受験を希望するという時点で,それなりに質がセレクトされていると。ゆえに,卒業での割合を勘案した輩出率だと,カーブは違った型になるかもしれません。

 データがないのでこの点は検討できませんが,仮にそうだとしたら,教員養成大学の機能不全の問題が提起されます。

 新規採用教員の多くは,教員養成大学出身者で占められるべき。関係者はこう考えているのでしょうが,私はそうは思ってません。新規採用教員の組成は,できるだけ多様化したほうがいいと考えています。それこそ,「開放制」というわが国の教員養成の趣旨が具現されるというもの。

 大卒の教員就職者が,大学で何を学んだか(専攻)の内訳をみると,下表のようになります。2015年春の大学学部卒業者のデータです。


 教員就職者のうち,理学部や工学部などで理系の学問を学んだ者は少なくなっています。小学校では,ほぼ皆無です。

 教育専攻の中に,教育学部の理科教育専攻の学生がいるでしょうが,バリバリの理系畑出身の教員がもっと増えてもいいのではないか,と思ったりします。次期学習指導要領の目玉は「アクティブ・ラーニング」ですが,AL型の理科教育を行うに際して,こういう専門性のある教員は力を発揮してくれるでしょう。

 教員養成大学出身と一般大学出身で,教員としての力量にどういう違いができるか。こうしたパフォーマンスの比較研究に興味を持ちますが,そういう研究ってあるのかしら。それなりの資源を投入して,長期的な追跡調査をやってみる価値はあると思います。

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