2017年10月2日月曜日

47都道府県の真正待機児童数の推定

 すっかり知れ渡っている,待機児童問題。待機児童とは,保育所に入りたくても入れず,待たされている児童のことです。

 この数はどれほどか。毎年,厚労省が数値を発表していますが,この統計が「抜け」だらけで,実態を把握し切れていないことはよく知られています。「どうせダメだろう」と,保育所への入所を申し込まなかった場合はカウントされない,母親が求職活動をしなかった場合はカウントされないなど…。

 こういう状況に危機感を持ったのか,野村総研が,就学前の乳幼児がいる母親を対象にした大規模調査をもとに,真正の待機児童数を推し量ってくれました。希望しつつも入れなかった乳幼児の数で,厚労省の狭い定義から外れるものも含みます。その数,34万6千人とのこと。
https://mainichi.jp/articles/20170930/k00/00m/040/133000c

 厚労省発表によると,2016年4月時点の待機児童数は2万3553人。ずいぶん違いますねえ。公的統計の背後には,13倍もの暗数があると推測されます。

 さて,上記の真正待機児童の推定数34万6千人ですが,この数は,2016年10月時点の保育所等在所者(約369万人)の9.37%に該当します。保育所等非在所者とは,0~5歳人口から,認可保育所および幼保連携・保育型認定こども園の在所者数を引いた数です。

 私はこの比率(9.37%)を適用して,47都道府県の真正待機児童の数を見積もってみました。各県の0~5歳の保育所等非在所児の9.37%が,希望しつつも入れないでいる,真正の待機児童である。こういう仮定です。


 真正の待機児童数(c)は,保育所等非在所児数(=a-b)に0.0937をかけることで得られます。東京の場合,出てきた数は3万9620人。厚労省発表の2016年4月時点の数値(8466人)と隔たってますね。

 厚労省統計(d)によると,9の県で待機児童数がゼロという素晴らしい結果が出ていますが,母親の生の声をもとにすると,残念ながら4ケタの待機児童がいると推測されます。

 北海道,埼玉,千葉,東京,神奈川,静岡,愛知,大阪,兵庫,福岡では,5ケタの暗数があると見込まれます(黄色マーク)。cの赤太字は,真正待機児童数が当局発表の100倍以上に上る県で,北海道,群馬,岐阜,愛知,和歌山,佐賀が該当します。

 以上は,9.37%という比率を一律に適用したラフ推計です。保育所不足が深刻な都市部では,もっと高い比を乗じるのが妥当でしょうから,真正待機児童数はもっと多くなると思われます。

 ただ言えるのは,待機児童数を掬う現行の網の目があまりにも粗い,ということ。上表の右端に示された潜在需要数に,各自治体は目を向けてもらいたいと思います。