幸か不幸か,現代の日本社会に生まれ落ちた人間は,2度の大きな選抜を経験します。15歳と18歳の時点においてです。説明は要りますまい。15歳は高校入試,18歳は大学入試の時期に相当します。少子化により入試競争が緩和されてきているとはいえ,15と18の春が人生の大きな節目になっていることは今もそうでしょう。
ところで最近,これらに次ぐ「第3の選抜」とでもいうべき時期が注目されています。いつかというと,22歳です。22歳といえば,大学の卒業年齢です。大学進学率が50%を超えている現在,多くの者がこの時期に学校から社会への移行(Transition from School to Work)を経験します。
別に22歳でなくてもよいのですが,ご存知の通り,わが国は新卒採用の慣行が非常に強い社会です。新卒時の就職に失敗した場合,翌年以降は「既卒」の枠に放り込まれ,就職活動で大きな不利益を被るといいます。
このような事態を避けるため,新卒時の就職に失敗した者の中には,翌年も新卒枠でシューカツを行うべく,自発的に留年する者もいます。多額の学費負担をも厭わずです。文科省はといえば,経団連に対し,「卒業後3年までは新卒者として扱ってほしい」という要望を出す始末。わが国の新卒至上主義は,お上をもひれ伏せさせるほど強固なものであることが知られます。
見方を変えれば,新卒時(22歳時)に「学校から社会への移行(TSW)」が叶うかどうかが決定的に重要である,ということです。現代日本ほど,「22歳」という年齢に対する社会的な関心が強まっている社会はないでしょう。最近,『22歳負け組の恐怖』(中経出版,2012年)という本が出されました。大学研究家の山内太地さんの筆になる本です。「負け組」という言葉が何とも強烈です。
http://www.chukei.co.jp/business/detail.php?id=9784806143239
ここでいう「負け組」は,数でみてどれほどいるのでしょう。文科省の『学校基本調査(高等教育機関編)』から,大卒者の進路状況を知ることができます。設けられている進路カテゴリーは,①進学,②就職,③臨床研修医,④一時的な仕事,⑤左記以外の者,⑥死亡・不詳,です。
これらのうち④~⑥が,しっかりとした行き場のない,いわゆる「無業者」です。この3カテゴリーに該当する者の数が,最近どう推移してきたかを調べました。卒業生全体に対する比率も出してみました。
2011年の3月卒業者でみると,大卒者55万人のうち,無業者は12万人ほど。比率にすると,5人に1人が無業者です。うーん,12万人・・・。この中には,大学院等の受験浪人や最初から就職を希望しなかった者もいるでしょうが,多くは,残念ながら就職が叶わなかった輩ではないかと思われます。12万の7割として,その数,およそ8万4千人なり。
毎年,これほどまでの数の就職失敗者が出ているとすると,これはただならぬ事態です。彼らの多くは,今後の成り行きに対して悲観的な思いを抱いています。絶望のあまり,自らを殺めてしまう者だっています。近年,進路の悩みや就職失敗という理由によって自殺する大学生が増えていることは,3月14日の記事でみた通りです。
さて,ようやく本題ですが,22歳の自殺者数はどう推移してきているのでしょうか。警察庁が発表している,進路の悩み・就職失敗による自殺者数の裏には,かなりの量の「暗数」が潜んでいるものと思われます。たとえば,遺書がなく,理由の分析の仕様がなかった自殺者など。
就職失敗を苦にした自殺であっても,遺書がなかったばかりに,闇(理由不詳のカテゴリー)に葬られたケースは少なくないでしょう。22歳の危機の量(magnitude)を測るには,自殺者の頭数そのものに注目することも必要かと思います。
最近は,厚労省の『人口動態統計』の公表データがとても充実してきており,1歳刻みの詳細な年齢別死因統計をみることが可能です。私は,本資料のバックナンバーをたどって,2001年から2010年までの22歳の自殺者数を明らかにしました。
22歳の自殺者数は,2001年では257人でしたが,その後増加し,2007年には300人を超えます。それからアップダウンを繰り返し,最新の2010年データでは302人となっています。自殺者の頭数という点でみても,最近の22歳の危機状況が強まっていることが明らかです。
なお,この期間中,ベースの22歳人口(a)は減っています。故に,自殺者数を人口で除した自殺率もかなり高まっています。あと一点,全死因に占める自殺の比重がグンと伸びていることにも注目されたし。2010年では,22歳の死亡者(550人)の54.9%が自殺者です。
最後に,22歳の自殺率の伸びを全人口と対比した図を掲げておきましょう。上表にあるように,この期間中,22歳の自殺率は15.7から22.4までアップしました。1.43倍の伸びです。このような伸びは,人口全体の統計では観察されないことをお知りおきください。
自殺統計から知られる危機状況の高まりは,全年齢の中で,22歳が最高なのではないでしょうか。22歳の危機,侮るなかれです。
ところで,近況を観察してみたい年齢がもう一つあります。それは「35歳」です。35を過ぎたら正規雇用は無理,35を過ぎたら結婚できない・・・。「35歳の壁」を強調する言説は数多くあります。この年齢の者が抱く焦燥感は,決して小さなものではないでしょう。奇しくも,今の私は35歳です。自分の状況を客観的に眺める手立てにしたいと思っています。
2012年5月21日月曜日
2012年5月19日土曜日
年齢層別の悩み・ストレス
「現在,悩みやストレスがありますか」と問われたら,あなたならどう答えますか。「ある」と答えざるを得ない方も多いのではないでしょうか。
2010年の厚労省『国民生活基礎調査』では,対象者(入院者除く)にこの質問を投げかけています。本調査のサンプルから推計される,12歳以上の国民の悩み・ストレスの所有状況は,下表のようです。5歳刻みの年齢層別の数値を示しています。
12歳以上の国民全体でみると,悩みないしはストレスがある者の比率は46.5%です。現代日本では,国民の半分近くが悩みやストレスを抱えていることが知られます。
この比率を年齢層別にみると,ピークは40代の後半で56.2%です。この層を中心として,20代後半から50代前半までの働き盛りの層では,比率が5割を超えています。職場環境の歪み,さらにはその剥奪(失業)というような事態が増えています。若年層や中年層で悩みやストレスが多いというのは,首肯できるところです。
上記の統計から,悩みやストレスの原因の多くは仕事関連ではないかと思われますが,それだけではありますまい。
厚労省の『国民生活基礎調査』では,悩みやストレスの原因の選択肢を提示し,該当するものを全て選んでもらっています。私は,選択された悩み・ストレス原因(延べ数)の内訳を年齢層別に明らかにし,結果を俯瞰的に眺めることのできる統計図をつくりました。下に展示いたします。
いかがでしょう。年齢によって,悩みやストレスの内実は多様であることが知られます。10代の子どもでは,学業や受験関連の悩みが多いようです。家族内外の人間関係にまつわる悩みも幅をきかせています。「家族以外の人間関係」の大半は,友人関係であると思われます。
大人になると,仕事関係の悩みがグンと増えます。収入や家計に関する悩みも然り。20代後半以降になると,育児や子の教育関連の悩みも浮上します。成人期の役割期待が肩にのしかかってきます。
50代にさしかかると,病気や介護関連の悩みが広がり,60代になるとそれがさらに加速します。とくに,自分の健康状態に関する悩みが多くなっています。重病になりはしないか,介護を要する身になって家族に負担をかけはしまいか,という心配事が出てくるようです。
国民の悩み・ストレスの全体像は,おおよそ上図のようなものです。まあ,容易に想像できることではありますが,もやもやとしているイメージを,データでもって可視化してみた次第です。
私は「視覚」人間ですので,この種の統計図を描くのが大好きです。作品がたまってきました。武蔵野大学の学園祭の折,会場の一角にでも展示させてもらえないかしらん。
2010年の厚労省『国民生活基礎調査』では,対象者(入院者除く)にこの質問を投げかけています。本調査のサンプルから推計される,12歳以上の国民の悩み・ストレスの所有状況は,下表のようです。5歳刻みの年齢層別の数値を示しています。
12歳以上の国民全体でみると,悩みないしはストレスがある者の比率は46.5%です。現代日本では,国民の半分近くが悩みやストレスを抱えていることが知られます。
この比率を年齢層別にみると,ピークは40代の後半で56.2%です。この層を中心として,20代後半から50代前半までの働き盛りの層では,比率が5割を超えています。職場環境の歪み,さらにはその剥奪(失業)というような事態が増えています。若年層や中年層で悩みやストレスが多いというのは,首肯できるところです。
上記の統計から,悩みやストレスの原因の多くは仕事関連ではないかと思われますが,それだけではありますまい。
厚労省の『国民生活基礎調査』では,悩みやストレスの原因の選択肢を提示し,該当するものを全て選んでもらっています。私は,選択された悩み・ストレス原因(延べ数)の内訳を年齢層別に明らかにし,結果を俯瞰的に眺めることのできる統計図をつくりました。下に展示いたします。
いかがでしょう。年齢によって,悩みやストレスの内実は多様であることが知られます。10代の子どもでは,学業や受験関連の悩みが多いようです。家族内外の人間関係にまつわる悩みも幅をきかせています。「家族以外の人間関係」の大半は,友人関係であると思われます。
大人になると,仕事関係の悩みがグンと増えます。収入や家計に関する悩みも然り。20代後半以降になると,育児や子の教育関連の悩みも浮上します。成人期の役割期待が肩にのしかかってきます。
50代にさしかかると,病気や介護関連の悩みが広がり,60代になるとそれがさらに加速します。とくに,自分の健康状態に関する悩みが多くなっています。重病になりはしないか,介護を要する身になって家族に負担をかけはしまいか,という心配事が出てくるようです。
国民の悩み・ストレスの全体像は,おおよそ上図のようなものです。まあ,容易に想像できることではありますが,もやもやとしているイメージを,データでもって可視化してみた次第です。
私は「視覚」人間ですので,この種の統計図を描くのが大好きです。作品がたまってきました。武蔵野大学の学園祭の折,会場の一角にでも展示させてもらえないかしらん。
2012年5月18日金曜日
年齢層別の就業状態の変化
3月5日の記事では,『国勢調査』(2010年)の栃木県のデータを使って,年齢層別の就業状態を明らかにしました。現在は,産業等基本集計結果が全県分公表されていますので,全国について,同じ統計を作成することが可能です。
『国勢調査』の産業等基本集計の全国結果は,下記サイトで閲覧できます。表1-2から,15歳以上の国民の労働力状態を年齢層別に知ることができます。表5-1からは,就業者の従業上の地位構成(正規,派遣,バイト・・・)を,同じく年齢層別に明らかにできます。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001038689&cycode=0
私はこれらのデータを使って,就業状態で塗り分けた年齢ピラミッドをつくってみました。最近の変化もみるため,最新の2010年ものと,10年前の2000年のものを作図しました。この10年間で,各年齢層の就業状態はどう変わったのでしょう。まずは,男性のピラミッドをみていただきましょう。
図の目盛の単位は万人です。左側は2000年,右側は2010年のピラミッドです。10代や20代前半では学生(通学)が多く,60代以降では,どのカテゴリーにも該当しない「その他」が多いことについては,説明は要りますまい。
両年次のピラミッドの模様を比べると,全体的にみて,青色の正規雇用の領分が減り,代わって赤色の非正規雇用(派遣・バイト)が広がっています。就労の「非正規化」が進行していることがうかがわれます。黒色の状態不詳者(回答拒否者)が増えていることも気がかりです。
この10年間の変化は,女性でみると,もっとドラスティックです。下図は,女性の就業状態ピラミッドです。
女性の場合,オレンジ色の家事(専業主婦)の領分が大きいのですが,それは脇に置いて,赤色の非正規雇用の広がりが男性にもましてクリアーであることに注目ください。現在では,働く女性の半分以上が非正規雇用です。
次に,私の年齢層である30代の後半に焦点を当ててみます。図の点線で挟まれた年齢層の部分を拡大してみましょう。
30代後半人口は,この10年間でかなり増えています。団塊ジュニアの世代がこの年齢層にさしかかっているからです。
その組成の変化をみると,男性でも女性でも,正規雇用が減り,その分,非正規雇用が増えています。女性では,全体の3割近くが派遣・バイトです。女性では,家事(専業主婦)のウェイトが減っていることにも注目。共働きでないとやっていけない状況が強まっていることを教えています。
なお,どのカテゴリーにも該当しない「その他」は,30代後半の場合,いわゆるニートに近い輩と思われますが,このグループの比率は低下しています。しかし,回答を拒否した状態不詳の者の比率が大幅に増えていることを考えると,実態は逆なのではないか,という懸念が持たれます。上表の数字は,30代の非正規化,脱社会化の進行をうかがわせるものとも読めます。
しかし,状態不詳の者(回答拒否者)の増加が気になりますねえ。自分のみじめな状態を知られるのが嫌で回答を拒否するのか,忙しすぎて回答をする暇がないのか。『国勢調査』への回答拒否の深層を知るには,回答拒否率がどういう地域で高いのかを調べることも必要かと存じます。
社会階層による棲み分けが明確な東京都の地域別データを使って,この課題を手掛けてみようと思っております。
『国勢調査』の産業等基本集計の全国結果は,下記サイトで閲覧できます。表1-2から,15歳以上の国民の労働力状態を年齢層別に知ることができます。表5-1からは,就業者の従業上の地位構成(正規,派遣,バイト・・・)を,同じく年齢層別に明らかにできます。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001038689&cycode=0
私はこれらのデータを使って,就業状態で塗り分けた年齢ピラミッドをつくってみました。最近の変化もみるため,最新の2010年ものと,10年前の2000年のものを作図しました。この10年間で,各年齢層の就業状態はどう変わったのでしょう。まずは,男性のピラミッドをみていただきましょう。
図の目盛の単位は万人です。左側は2000年,右側は2010年のピラミッドです。10代や20代前半では学生(通学)が多く,60代以降では,どのカテゴリーにも該当しない「その他」が多いことについては,説明は要りますまい。
両年次のピラミッドの模様を比べると,全体的にみて,青色の正規雇用の領分が減り,代わって赤色の非正規雇用(派遣・バイト)が広がっています。就労の「非正規化」が進行していることがうかがわれます。黒色の状態不詳者(回答拒否者)が増えていることも気がかりです。
この10年間の変化は,女性でみると,もっとドラスティックです。下図は,女性の就業状態ピラミッドです。
女性の場合,オレンジ色の家事(専業主婦)の領分が大きいのですが,それは脇に置いて,赤色の非正規雇用の広がりが男性にもましてクリアーであることに注目ください。現在では,働く女性の半分以上が非正規雇用です。
次に,私の年齢層である30代の後半に焦点を当ててみます。図の点線で挟まれた年齢層の部分を拡大してみましょう。
30代後半人口は,この10年間でかなり増えています。団塊ジュニアの世代がこの年齢層にさしかかっているからです。
その組成の変化をみると,男性でも女性でも,正規雇用が減り,その分,非正規雇用が増えています。女性では,全体の3割近くが派遣・バイトです。女性では,家事(専業主婦)のウェイトが減っていることにも注目。共働きでないとやっていけない状況が強まっていることを教えています。
なお,どのカテゴリーにも該当しない「その他」は,30代後半の場合,いわゆるニートに近い輩と思われますが,このグループの比率は低下しています。しかし,回答を拒否した状態不詳の者の比率が大幅に増えていることを考えると,実態は逆なのではないか,という懸念が持たれます。上表の数字は,30代の非正規化,脱社会化の進行をうかがわせるものとも読めます。
しかし,状態不詳の者(回答拒否者)の増加が気になりますねえ。自分のみじめな状態を知られるのが嫌で回答を拒否するのか,忙しすぎて回答をする暇がないのか。『国勢調査』への回答拒否の深層を知るには,回答拒否率がどういう地域で高いのかを調べることも必要かと存じます。
社会階層による棲み分けが明確な東京都の地域別データを使って,この課題を手掛けてみようと思っております。
2012年5月17日木曜日
若者の死因構成の変化
2010年のわが国の平均寿命は,男性は79.6歳,女性は86.4歳だそうです(総務省統計局『日本の統計2012』)。日本は,世界でも有数,いや最高の長寿社会であるといえます。
http://www.stat.go.jp/data/nihon/02.htm
しかるに,不幸にも若くして命を落としてしまう人間もいます。若い生命を散らしてしまう原因は,どのようなものなのでしょう。私は,20~30代の若者の死因がどういうものかを調べました。現在の特徴を見出すため,戦後の長期的な変化をたどってみようと思います。
まずは,若者の死亡者数,およびベースの人口あたりの死亡率がどう変化してきたかを押さえておきましょう。後者の死亡率は,10万人あたりの比率です。厚生労働省の『人口動態統計』にあたって,1950年(昭和25年)以降の5年刻みの数字を拾ってみました。
若者の死亡者数は,時代とともに大きく減ってきています。2010年の20代の死亡者は6,190人。1950年の10分の1以下です,30代の死亡者数も,この60年間で5分の1近くにまで減じています。
ベースの人口規模を考慮した死亡率も然り。1950年の30代の死亡率は,10万人あたり533人でした。百分率にすると0.53%。当時は,30代の若者であっても,188人に1人が命を落としていたわけです。しかし,その後死亡率はぐんぐん低下し,現在の30代の死亡確率は,1,445人に1人という水準にまで落ちています。
医学の進歩,衛生状態の改善といった社会変化の恩恵が表れています。ですが,今でも年間2万人近くの若い命が失われていることを等閑視すべきではありますまい。
若者の死因の内訳は,どういうものなのでしょう。高齢者の場合,死因の多くは病気なのですが,若者は違っているものと思われます。私は,上記厚労省資料の年齢層別の死因統計(簡単分類)をもとに,この60年間における若者の死因構成の変化を眺めることができる統計図をつくりました。まずは,20代の図をみていただきましょう。
グラフの始点の1950年では,全死因の半分以上が結核でした。当時はまだ,結核が不治の病であった頃です。
その後,特効薬の開発により結核の比重が減少し,他の原因が増加します。1960年代以降,モータリゼーションの進行のためか,交通事故のウェイトが高まってきます。がんや心疾患(心臓病)のような生活習慣病も目立ってきます。私が生まれた1970年代半ばには,こうした「現代型」の死因構造はできあがっていたようです。
しかるに,1990年代半ば以降,さらなる激変が起きます。自殺(suicide)の増加です。ご覧ください。ここ15年ほどにかけて,黒色の膿(うみ)が広がってきています。2010年では,20代の全死因の6割ほどが自殺です。この点については,1月16日の記事でもみたのですが,近年の変化の大きさに改めて驚かされます。
20代といえば,学校から社会への移行期にあたりますが,最近,就職失敗で自殺する大学生の存在が問題になっていることは,周知のところです。
次に,年齢層を1つを上がって,30代の死因構成図をみてみましょう。私の年齢層です。どういう模様が観察されるのやら。
変化の基本型は20代と同じです。30代でも,近年における自殺の比重の増加が見てとれます。なお,30代の自殺率がかつてないほど高まっていることは,3月23日の記事でみた通りです。
20代との相違点はといえば,3大生活習慣病(がん,心疾患,脳血管疾患)の比重が高いことでしょうか。30代といったらバリバリの働き盛りですが,近年の職場環境の歪みを考えると,さもありなんです。ずさんな食生活,運動不足といった要因も,生活習慣病の増加に寄与していることでしょう。私などは危ないなあ。
今回お見せした死因の構成変化図は,子どものものもつくれます。乳児,幼児,青少年というように,発達段階ごとの図をつくったら面白いかも。乳児の場合,虐待死(他殺)のような死因が増えているかもしれません。
この手の統計図がたまってきました。何枚かは,拡大プリントして部屋の壁に貼っています。自宅がもう少し広ければ,ちょっとした展覧会も・・・。また馬鹿げたことを考えています。*いや,学園祭のゼミの出し物としてはいいのではないかなあ。
http://www.stat.go.jp/data/nihon/02.htm
しかるに,不幸にも若くして命を落としてしまう人間もいます。若い生命を散らしてしまう原因は,どのようなものなのでしょう。私は,20~30代の若者の死因がどういうものかを調べました。現在の特徴を見出すため,戦後の長期的な変化をたどってみようと思います。
まずは,若者の死亡者数,およびベースの人口あたりの死亡率がどう変化してきたかを押さえておきましょう。後者の死亡率は,10万人あたりの比率です。厚生労働省の『人口動態統計』にあたって,1950年(昭和25年)以降の5年刻みの数字を拾ってみました。
若者の死亡者数は,時代とともに大きく減ってきています。2010年の20代の死亡者は6,190人。1950年の10分の1以下です,30代の死亡者数も,この60年間で5分の1近くにまで減じています。
ベースの人口規模を考慮した死亡率も然り。1950年の30代の死亡率は,10万人あたり533人でした。百分率にすると0.53%。当時は,30代の若者であっても,188人に1人が命を落としていたわけです。しかし,その後死亡率はぐんぐん低下し,現在の30代の死亡確率は,1,445人に1人という水準にまで落ちています。
医学の進歩,衛生状態の改善といった社会変化の恩恵が表れています。ですが,今でも年間2万人近くの若い命が失われていることを等閑視すべきではありますまい。
若者の死因の内訳は,どういうものなのでしょう。高齢者の場合,死因の多くは病気なのですが,若者は違っているものと思われます。私は,上記厚労省資料の年齢層別の死因統計(簡単分類)をもとに,この60年間における若者の死因構成の変化を眺めることができる統計図をつくりました。まずは,20代の図をみていただきましょう。
グラフの始点の1950年では,全死因の半分以上が結核でした。当時はまだ,結核が不治の病であった頃です。
その後,特効薬の開発により結核の比重が減少し,他の原因が増加します。1960年代以降,モータリゼーションの進行のためか,交通事故のウェイトが高まってきます。がんや心疾患(心臓病)のような生活習慣病も目立ってきます。私が生まれた1970年代半ばには,こうした「現代型」の死因構造はできあがっていたようです。
しかるに,1990年代半ば以降,さらなる激変が起きます。自殺(suicide)の増加です。ご覧ください。ここ15年ほどにかけて,黒色の膿(うみ)が広がってきています。2010年では,20代の全死因の6割ほどが自殺です。この点については,1月16日の記事でもみたのですが,近年の変化の大きさに改めて驚かされます。
20代といえば,学校から社会への移行期にあたりますが,最近,就職失敗で自殺する大学生の存在が問題になっていることは,周知のところです。
次に,年齢層を1つを上がって,30代の死因構成図をみてみましょう。私の年齢層です。どういう模様が観察されるのやら。
変化の基本型は20代と同じです。30代でも,近年における自殺の比重の増加が見てとれます。なお,30代の自殺率がかつてないほど高まっていることは,3月23日の記事でみた通りです。
20代との相違点はといえば,3大生活習慣病(がん,心疾患,脳血管疾患)の比重が高いことでしょうか。30代といったらバリバリの働き盛りですが,近年の職場環境の歪みを考えると,さもありなんです。ずさんな食生活,運動不足といった要因も,生活習慣病の増加に寄与していることでしょう。私などは危ないなあ。
今回お見せした死因の構成変化図は,子どものものもつくれます。乳児,幼児,青少年というように,発達段階ごとの図をつくったら面白いかも。乳児の場合,虐待死(他殺)のような死因が増えているかもしれません。
この手の統計図がたまってきました。何枚かは,拡大プリントして部屋の壁に貼っています。自宅がもう少し広ければ,ちょっとした展覧会も・・・。また馬鹿げたことを考えています。*いや,学園祭のゼミの出し物としてはいいのではないかなあ。
2012年5月14日月曜日
若年教員の離職率の規定要因
4月26日の記事では,2009年度間の小学校教員の県別離職率を計算しました。離職率とは,病気(多くは精神疾患)による離職者,ならびに理由が定かでない離職者が,全教員のどれほどを占めるかを表す指標です。教員の危機や脱学校兆候の量を測る指標です。資料や計算方法の詳細は,上記の記事を参照ください。
47都道府県で最も高いのは鹿児島県です。私の郷里です。その鹿児島県でどの属性の離職率が高いかをみると,20代の若年教員の離職率がダントツで高くなっています(4月28日の記事)。値は169.1‰,百分率にすると16.9%です。20代教員のおよそ6人に1人が,何らかの危機や困難によって教壇を去ったと推測されます。
はて,当県における若年教員の離職率の「異常高」をどう解釈したものかと頭をひねっていたところ,ある読者の方がコメントをくださいました。鹿児島のご出身で,現在,郷里の高校教員を目指して勉強されている方です。ご両親は,当県で教員をされているとのこと。同郷の士がメールにて寄せてくださった見解は,以下のようなものです。いただいたメール本文の記述をそのまま引用いたします。
①:鹿児島県は小学生1人当たりの小学校数が多く,アクセスや生活基盤の充実が乏しい僻地・離島の小学校が多く,若手の先生はそこへの配属を忌む傾向がある。
②:①に伴い小学校1校当たりの生徒数が少なくなり,教師の配属人数も少なくなるが,その分の学校1校当たりの仕事量はあまり変わらないため,教諭1人当たりの仕事量も多くなり,周りの協力も得られにくい。さらに生徒の少ない学校では2つの学年の授業を同時に進める「複式学級」がおおくなり,これにより小学校教諭の負担である授業準備に割く時間が増えてしまう。
③:鹿児島県の小学校教諭は1度離島勤務の義務があり,若手の教師が家庭的な理由,将来設計の理由から配属されやすい。
④:小学校が多いため、能力・モラルのない教師が校長になりやすく,パワーハラスメントの問題が多くなる。
なるほどなるほど。土地勘のある私には,ピンとくるものばかりです。鹿児島は,離島が多い県です。その関係上,当県の教員は,一度は離島での勤務を義務づけられています。いつ行くかといえば,家庭を持っていない(身が軽い)若年教員が配属されるケースが圧倒的に多いと聞きます。
海を渡って降り立った島の学校がどういう学校かは,申すまでもありません。多くが,児童数が少ない小規模校です。当然,1校あたりの配置教員も少なくなります。その結果,②でいわれているように,「教諭1人当たりの仕事量も多く」なり,「2つの学年の授業を同時に進める『複式学級』」という事態も出てきます。こうした負担は,組織の末端にいる若年教員に重くのしかかると思われます。このことは,若年教員の過労やバーン・アウトといった問題の発生条件をなしているといえましょう。
離島でなくとも,へき地を多く抱える鹿児島県では,県内の至る所でこのような事態が起きているのではないでしょうか。
推測をくだくだ述べるのはこれくらいにして,統計データに当たってみましょう。2009年度の統計において,鹿児島県の若年教員の離職率が異常に高い事実が観察されたのですが,同年の小学校の教育条件指標を県別に出してみました。私が計算したのは,1校あたりの教員数と,全学級に占める複式学級の比率です。後者は,公立学校のものです。資料源は,文科省『学校基本調査』です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001024254&cycode=0
鹿児島は,1校あたりの教員数がわずか12.9人です。全国水準(18.8人)を相当下回っています。全県中の順位は45位。一方,複式学級の比率は全国で1位です。当県では,小学校の学級の1割が複式学級です。上記の読者の指摘でいわれている,鹿児島県の状況認識は,データの上でも裏づけられます。
1校あたりの配置教員が少なく,その一方で,複式学級指導のような負担が大きいこと。鹿児島の若年教員の離職率が高いことの要因が見えてきました。はて,この仮説は,マクロな計量分析によっても支持されるでしょうか。
私は,上表で計算した2指標と,各県の20代教員の離職率(2009年度間)の相関関係を調べました。下図は,1校あたりの教員数と,20代の小学校教員の離職率の相関図です。
離職率が高いのは,鹿児島の他,秋田や長崎のような,へき地を多く抱える地方県です。これらの県では,1校あたりの配置教員が少なく,教員,とりわけ若年教員の負担が大きいのではないかと思われます。
全体的にみても,1校あたりの教員数が少ない県ほど,若年教員の離職率が高い傾向です。相関係数は-0.421で,1%水準で有意な相関とみなされます。
上表の複式学級比率と20代教員の離職率は,+0.497という相関関係でした。複式学級が多い県ほど,若年教員の離職率が高い傾向です。このことも,先ほど述べた仮説を支持しています。
なお,今しがた明らかにした傾向は,20代の教員に固有のものであることを申し添えておきます。データの提示は省きますが,1校あたり教員数や複式学級率は,中年層や高年層の教員の離職率とは強い相関関係を持っていません。
小規模校が多い地方県では,若年教員の勤務条件の点検というような作業が求められるかもしれません。
へき地性と若年教員の危機が,こうも強く結びついていることは,私にとって発見でした。若年教員の悩みというと,口うるさいモンスター・ペアレントなどが多い都市的環境と関連が深いようにとられがちですが,それとは真逆の側面があることを知りました。
貴重な見解を寄せてくださった,同郷の士に感謝を意を表します。郷里の教育界に貢献される日がくることをお祈りしております。
47都道府県で最も高いのは鹿児島県です。私の郷里です。その鹿児島県でどの属性の離職率が高いかをみると,20代の若年教員の離職率がダントツで高くなっています(4月28日の記事)。値は169.1‰,百分率にすると16.9%です。20代教員のおよそ6人に1人が,何らかの危機や困難によって教壇を去ったと推測されます。
はて,当県における若年教員の離職率の「異常高」をどう解釈したものかと頭をひねっていたところ,ある読者の方がコメントをくださいました。鹿児島のご出身で,現在,郷里の高校教員を目指して勉強されている方です。ご両親は,当県で教員をされているとのこと。同郷の士がメールにて寄せてくださった見解は,以下のようなものです。いただいたメール本文の記述をそのまま引用いたします。
①:鹿児島県は小学生1人当たりの小学校数が多く,アクセスや生活基盤の充実が乏しい僻地・離島の小学校が多く,若手の先生はそこへの配属を忌む傾向がある。
②:①に伴い小学校1校当たりの生徒数が少なくなり,教師の配属人数も少なくなるが,その分の学校1校当たりの仕事量はあまり変わらないため,教諭1人当たりの仕事量も多くなり,周りの協力も得られにくい。さらに生徒の少ない学校では2つの学年の授業を同時に進める「複式学級」がおおくなり,これにより小学校教諭の負担である授業準備に割く時間が増えてしまう。
③:鹿児島県の小学校教諭は1度離島勤務の義務があり,若手の教師が家庭的な理由,将来設計の理由から配属されやすい。
④:小学校が多いため、能力・モラルのない教師が校長になりやすく,パワーハラスメントの問題が多くなる。
なるほどなるほど。土地勘のある私には,ピンとくるものばかりです。鹿児島は,離島が多い県です。その関係上,当県の教員は,一度は離島での勤務を義務づけられています。いつ行くかといえば,家庭を持っていない(身が軽い)若年教員が配属されるケースが圧倒的に多いと聞きます。
海を渡って降り立った島の学校がどういう学校かは,申すまでもありません。多くが,児童数が少ない小規模校です。当然,1校あたりの配置教員も少なくなります。その結果,②でいわれているように,「教諭1人当たりの仕事量も多く」なり,「2つの学年の授業を同時に進める『複式学級』」という事態も出てきます。こうした負担は,組織の末端にいる若年教員に重くのしかかると思われます。このことは,若年教員の過労やバーン・アウトといった問題の発生条件をなしているといえましょう。
離島でなくとも,へき地を多く抱える鹿児島県では,県内の至る所でこのような事態が起きているのではないでしょうか。
推測をくだくだ述べるのはこれくらいにして,統計データに当たってみましょう。2009年度の統計において,鹿児島県の若年教員の離職率が異常に高い事実が観察されたのですが,同年の小学校の教育条件指標を県別に出してみました。私が計算したのは,1校あたりの教員数と,全学級に占める複式学級の比率です。後者は,公立学校のものです。資料源は,文科省『学校基本調査』です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001024254&cycode=0
鹿児島は,1校あたりの教員数がわずか12.9人です。全国水準(18.8人)を相当下回っています。全県中の順位は45位。一方,複式学級の比率は全国で1位です。当県では,小学校の学級の1割が複式学級です。上記の読者の指摘でいわれている,鹿児島県の状況認識は,データの上でも裏づけられます。
1校あたりの配置教員が少なく,その一方で,複式学級指導のような負担が大きいこと。鹿児島の若年教員の離職率が高いことの要因が見えてきました。はて,この仮説は,マクロな計量分析によっても支持されるでしょうか。
私は,上表で計算した2指標と,各県の20代教員の離職率(2009年度間)の相関関係を調べました。下図は,1校あたりの教員数と,20代の小学校教員の離職率の相関図です。
離職率が高いのは,鹿児島の他,秋田や長崎のような,へき地を多く抱える地方県です。これらの県では,1校あたりの配置教員が少なく,教員,とりわけ若年教員の負担が大きいのではないかと思われます。
全体的にみても,1校あたりの教員数が少ない県ほど,若年教員の離職率が高い傾向です。相関係数は-0.421で,1%水準で有意な相関とみなされます。
上表の複式学級比率と20代教員の離職率は,+0.497という相関関係でした。複式学級が多い県ほど,若年教員の離職率が高い傾向です。このことも,先ほど述べた仮説を支持しています。
なお,今しがた明らかにした傾向は,20代の教員に固有のものであることを申し添えておきます。データの提示は省きますが,1校あたり教員数や複式学級率は,中年層や高年層の教員の離職率とは強い相関関係を持っていません。
小規模校が多い地方県では,若年教員の勤務条件の点検というような作業が求められるかもしれません。
へき地性と若年教員の危機が,こうも強く結びついていることは,私にとって発見でした。若年教員の悩みというと,口うるさいモンスター・ペアレントなどが多い都市的環境と関連が深いようにとられがちですが,それとは真逆の側面があることを知りました。
貴重な見解を寄せてくださった,同郷の士に感謝を意を表します。郷里の教育界に貢献される日がくることをお祈りしております。
2012年5月12日土曜日
学生・生徒の自殺原因構成
前回は教員の自殺原因構成をみましたが,今回は,学生・生徒のそれを観察してみようと思います。3月13日の記事でみたように,学生・生徒の自殺者数は年々増加し,昨年には千人の大台にのりました。
2011年中の学生・生徒の自殺者は1,029人。その内訳は,小・中学生が84人,高校生が269人,専修学校生等が147人,そして大学生が529人なり(警察庁『平成23年中における自殺の状況』)。若き生命を自ら断つ原因というのは,どういうものなのでしょう。
http://www.npa.go.jp/toukei/index.htm
警察庁の上記資料(附録)では,職業別の自殺原因が仔細に明らかにされています。遺書などの分析によって検出された自殺原因(延べ数)の集計結果だそうです。私はこれを使って,小・中学生,高校生,専修学校生,および大学生の自殺原因構成を視覚的に俯瞰できる統計図をつくりました。
太字の原因は,全体でみた場合の構成比が上位5位のものです。1位は学業不振,2位は進路に関する悩みとなっています。学生・生徒さんの特徴が出ていますね。3位はうつ病。発達段階が上がるにつれて,この種の精神の病が多くなります。
4位は就職失敗。最近,この理由で自殺する大学生の存在が話題になっています。大学生では,この理由が全体の1割弱を占めています。5位は恋愛。こちらも,青年期ならではの自殺因という感じがします。
上図からは,学校段階による原因構成の違いが看取されます。小・中学生では,親や友人との不和やいじめといった,対人関係の原因のシェアが大きくなっています。自我が未熟な児童・生徒の場合,身近な「他者」との不仲がダメージになるようです。
学業不振の比重が大きいことにも注目。わが国では,15歳の時点で大きな選抜があります。どのランクの高校に入るかによって,将来の選択可能な進路がある程度決まってしまう面があります。中学生にとって,学業不振が「生」を脅かすまでの脅威になるのは,現代学校のこうした病理的な構造に起因する部分が大きいことでしょう。
なお,学業不振は大学生の自殺原因でも多くを占めます。日本の大学生は勉強しない,勉強に価値を置かないなどといわれますが,一概にそうはいえないのではないかしらん。4月30日の記事でみたように,大学生のマジメ化が進行してきている向きもあります。
大学生にとって,進路の悩みや就職失敗が痛手になっていることについては,コメントは要りますまい。よろしければ,3月14日の記事もご参照ください。
今回明らかにしたことは,まあ巷で繰り返しいわれていることですが,実証データを提示することも,科学の重要な役割であると考えています。
2011年中の学生・生徒の自殺者は1,029人。その内訳は,小・中学生が84人,高校生が269人,専修学校生等が147人,そして大学生が529人なり(警察庁『平成23年中における自殺の状況』)。若き生命を自ら断つ原因というのは,どういうものなのでしょう。
http://www.npa.go.jp/toukei/index.htm
警察庁の上記資料(附録)では,職業別の自殺原因が仔細に明らかにされています。遺書などの分析によって検出された自殺原因(延べ数)の集計結果だそうです。私はこれを使って,小・中学生,高校生,専修学校生,および大学生の自殺原因構成を視覚的に俯瞰できる統計図をつくりました。
太字の原因は,全体でみた場合の構成比が上位5位のものです。1位は学業不振,2位は進路に関する悩みとなっています。学生・生徒さんの特徴が出ていますね。3位はうつ病。発達段階が上がるにつれて,この種の精神の病が多くなります。
4位は就職失敗。最近,この理由で自殺する大学生の存在が話題になっています。大学生では,この理由が全体の1割弱を占めています。5位は恋愛。こちらも,青年期ならではの自殺因という感じがします。
上図からは,学校段階による原因構成の違いが看取されます。小・中学生では,親や友人との不和やいじめといった,対人関係の原因のシェアが大きくなっています。自我が未熟な児童・生徒の場合,身近な「他者」との不仲がダメージになるようです。
学業不振の比重が大きいことにも注目。わが国では,15歳の時点で大きな選抜があります。どのランクの高校に入るかによって,将来の選択可能な進路がある程度決まってしまう面があります。中学生にとって,学業不振が「生」を脅かすまでの脅威になるのは,現代学校のこうした病理的な構造に起因する部分が大きいことでしょう。
なお,学業不振は大学生の自殺原因でも多くを占めます。日本の大学生は勉強しない,勉強に価値を置かないなどといわれますが,一概にそうはいえないのではないかしらん。4月30日の記事でみたように,大学生のマジメ化が進行してきている向きもあります。
大学生にとって,進路の悩みや就職失敗が痛手になっていることについては,コメントは要りますまい。よろしければ,3月14日の記事もご参照ください。
今回明らかにしたことは,まあ巷で繰り返しいわれていることですが,実証データを提示することも,科学の重要な役割であると考えています。
2012年5月11日金曜日
教員の自殺原因構成
前回は,警察庁の自殺原因統計をもとに,年齢層別の自殺原因構成を俯瞰できる統計図をつくりました。同庁の資料では,職業別の自殺原因も細かく明らかにされています。今回は,教員の自殺原因をビジュアルに一望できる図をつくってみようと思います。
警察庁が毎年発行している『自殺の概要資料』によると,教員の自殺者数は,2007年が125人,2006年が128人,2009年が144人,2010年が146人,2011年が125人,というように推移してきています。ここでいう教員には,学校教育法第1条で規定されている正規の学校のほか,専修・各種学校などの教員も含まれます。しかるに,母集団の構成からして,多くが小・中・高の教員ではないかと推測されます。
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/link/keisatsutyo.html
この5年間の教員の自殺原因がどいうものであるかをみてみましょう。それぞれの年について,教員の自殺原因の内訳をグラフ化しました。一人の自殺原因が複数にわたることもあるので,検出された自殺原因の総和は,自殺者の頭数よりも若干多くなっています(たとえば,2011年の原因の総計は149)。よって,下図で表現されているのは,検出された自殺原因の延べ数の構成であることに留意ください。
5か年の統計をつなぎ合わせることで,ある程度恒常的な傾向が読み取れるかと思います。5か年の総計でみた自殺原因の上位5位は,うつ病,仕事疲れ,職場の人間関係,身体の病気,夫婦関係の不和,です。丸囲いの数字は順位を意味します。
教員にあっても,自殺原因で最も多いのはうつ病となっています。どの年でも,全原因のおよそ3割がうつ病です。全体社会と同様,教員社会においても,うつが蔓延していることが知られます。
しかるに,仕事疲れや職場の人間関係のような,勤務関連の原因のシェアが大きいのは教員の特徴です。前回みた人口全体の自殺原因では,これらの原因の比重はごくわずかでしたが,教員の自殺原因では多くを占めています。
教員の過労やバーン・アウトが深刻化している状況です。仕事疲れについてはさもありなんという感じですが,職場の人間関係という原因も大きいのですね。最近,副校長や主幹教諭など,以前にもまして細かい職制が導入されています。教員組織の官僚制化・階層化が進行しているとみられます。また教員評価の導入など,教員間の分裂・差異化を促すような事態にもなっています。このようなことが,職場における人間関係の悩みのタネになっているのではないでしょうか。
それと,夫婦関係という家族面の原因も大きいようです。教員は同業婚が比較的多いといいますが,教員夫婦はお互い多忙で,知らぬ間に夫婦関係に亀裂が入ってしまうこともあろうかと思います。職場のみならず家庭までもが緊張や葛藤の場になったのでは,たまったものではありません。
人間の生活の場は家庭,職場,地域社会などからなりますが,これらの相異なる場の生活のバランスがとれている状態が望まれます。思うに,教員の生活は,こうした理想態からかなり隔たっているのではないでしょうか。生活の領分のほとんどが職場(学校)に侵食されているのではないかと思われます。
総務省の『社会生活基本調査』では,対象者の1日の生活行動を仔細に明らかにしているのですが,職業別の集計もしてほしいところです。教員の1日を観察したら,相当の歪み・偏りが見出されるのではないでしょうか(家族との触れ合いの欠如など)。教員の生活構造のトータルな把握が求められます。教員も生活者です。教員の生活は,職場(学校)だけで営まれているのではありません。
警察庁の資料からは,いろいろな属性について,上記のような統計図をつくることができます。小・中学生,高校生,大学生,失業者・・・。自殺原因を解剖してみたい人種は数多くいます。適宜,図をつくっていこうと思います。
警察庁が毎年発行している『自殺の概要資料』によると,教員の自殺者数は,2007年が125人,2006年が128人,2009年が144人,2010年が146人,2011年が125人,というように推移してきています。ここでいう教員には,学校教育法第1条で規定されている正規の学校のほか,専修・各種学校などの教員も含まれます。しかるに,母集団の構成からして,多くが小・中・高の教員ではないかと推測されます。
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/link/keisatsutyo.html
この5年間の教員の自殺原因がどいうものであるかをみてみましょう。それぞれの年について,教員の自殺原因の内訳をグラフ化しました。一人の自殺原因が複数にわたることもあるので,検出された自殺原因の総和は,自殺者の頭数よりも若干多くなっています(たとえば,2011年の原因の総計は149)。よって,下図で表現されているのは,検出された自殺原因の延べ数の構成であることに留意ください。
5か年の統計をつなぎ合わせることで,ある程度恒常的な傾向が読み取れるかと思います。5か年の総計でみた自殺原因の上位5位は,うつ病,仕事疲れ,職場の人間関係,身体の病気,夫婦関係の不和,です。丸囲いの数字は順位を意味します。
教員にあっても,自殺原因で最も多いのはうつ病となっています。どの年でも,全原因のおよそ3割がうつ病です。全体社会と同様,教員社会においても,うつが蔓延していることが知られます。
しかるに,仕事疲れや職場の人間関係のような,勤務関連の原因のシェアが大きいのは教員の特徴です。前回みた人口全体の自殺原因では,これらの原因の比重はごくわずかでしたが,教員の自殺原因では多くを占めています。
教員の過労やバーン・アウトが深刻化している状況です。仕事疲れについてはさもありなんという感じですが,職場の人間関係という原因も大きいのですね。最近,副校長や主幹教諭など,以前にもまして細かい職制が導入されています。教員組織の官僚制化・階層化が進行しているとみられます。また教員評価の導入など,教員間の分裂・差異化を促すような事態にもなっています。このようなことが,職場における人間関係の悩みのタネになっているのではないでしょうか。
それと,夫婦関係という家族面の原因も大きいようです。教員は同業婚が比較的多いといいますが,教員夫婦はお互い多忙で,知らぬ間に夫婦関係に亀裂が入ってしまうこともあろうかと思います。職場のみならず家庭までもが緊張や葛藤の場になったのでは,たまったものではありません。
人間の生活の場は家庭,職場,地域社会などからなりますが,これらの相異なる場の生活のバランスがとれている状態が望まれます。思うに,教員の生活は,こうした理想態からかなり隔たっているのではないでしょうか。生活の領分のほとんどが職場(学校)に侵食されているのではないかと思われます。
総務省の『社会生活基本調査』では,対象者の1日の生活行動を仔細に明らかにしているのですが,職業別の集計もしてほしいところです。教員の1日を観察したら,相当の歪み・偏りが見出されるのではないでしょうか(家族との触れ合いの欠如など)。教員の生活構造のトータルな把握が求められます。教員も生活者です。教員の生活は,職場(学校)だけで営まれているのではありません。
警察庁の資料からは,いろいろな属性について,上記のような統計図をつくることができます。小・中学生,高校生,大学生,失業者・・・。自殺原因を解剖してみたい人種は数多くいます。適宜,図をつくっていこうと思います。
登録:
投稿 (Atom)














