2012年10月23日火曜日

学校でのICT利用の国際比較

 10月19日の記事でみたように,わが国高校生の場合,自宅でのコンピュータを使ったICT利用度が国際的にみて著しく低くなっています。ケータイやスマホが普及していることの影響もあるでしょう。

 しかし,この種の小型機器では,社会で求められるところのICTスキルが身につかないとも考えられます。自己評価の結果ではありますが,わが国の生徒は,画像編集やマルチメディア資料作成といったスキルの水準が国際的にみて最下位です。

 そうである以上,教育機関としての学校によるテコ入れが要請されるかと思いますが,わが国の生徒は,学校において各種のICTにどれほど親しんでいるのでしょうか。前回までと同様,国際調査のPISA2009に依拠して,データをみてみましょう。

 PISA2009の生徒質問紙調査では,対象の15歳の生徒に対し,「次のことをするため学校でコンピュータをどれくらい利用していますか」と問うています。日本の場合,対象となっているのは高校1年生です。


 私が高校生だったのは20年ほど前のことですから,自分の経験に照らすことはできませんが,今の生徒さんは,学校でこういうことをどれくらいやっているのでしょう。まあ,大学生ならかなりの頻度かと思いますが,15歳の高校1年生は如何。

 9つの項目への反応を個別にみるのは煩雑ですので,選択された数値の合算値でもって,学校でのICT利用度を測る尺度(measure)といたしましょう。この場合,それぞれの生徒のICT利用度は,9点から36点までのスコアで計測されます。全部4に丸をつける猛者は36点となります(4点×9=36点)。全部1を選ぶような,全くの無縁者は9点です。*いずれかの項目に無回答ないしは無効回答がある生徒は分析から除外します。

 対象の生徒から,上記の設問への回答を得ているのは45か国です。主要国の米英仏は含まれていませんが,ここでの目的は日本の位置を明らかにすることですから,まあよしとしましょう。私は個票データを使って,45か国,29万6,348人について上記の利用度スコアを計算しました。下図は,45か国全体と日本の生徒のスコア分布を描いたものです。


 45か国全体でみても日本でみても,9点の生徒が最も多くなっています。9点ということは,①から⑨の全項目で1(まったくか,ほとんどない)を選んだことになります。わが国の場合,9点の生徒が57.2%もいます。ほぼ6割。高校生の5人に3人が,学校においてコンピュータにほとんど触れていないことが示唆されます。

 他国との一元比較を行うため,上図のスコア分布を平均値の形に要約しましょう。わが国の場合,以下のように算出されます。

{(9点×3,228人)+(10点×685人)+(11点×786人)+・・・(36点×5人)}/5,648人 ≒ 10.2点

 学校でのICT利用度平均は約10点なり。わが国の生徒の平均的な回答は,8項目で1(まったくか,ほとんどない),残りの1項目で辛うじて2(月に1~2回)ということになります。

 ちなみに,45か国全体のアベレージは14.4点です。日本の値は,これよりもかなり低くなっています。またしても嫌な予感がこみ上げてきました。あまり気乗りがしませんが,各国のスコア平均を高い順に並べ,わが国の位置がどこにあるかをみてみましょう。


 相対的な差ですが,ここにおいても日本は最下位です。わが国の生徒は,自宅のみならず学校においても,コンピュータを介したICT利用が最も少ないことが知られます。

 前回の記事では,わが国の生徒のコンピュータスキルが国際的にみて最も低いことをみました。自己評定ですので怪しいかなとも思いましたが,自宅でも学校でもコンピュータに接していないことを汲むと,真実性があったりして・・・。

 むーん。教育の情報化の必要がいわれ,学校においても,ICT環境の整備が急ピッチで進んでいるといいますが,そうしたインフラは生徒にはほとんど利用されていないようです。わが国の場合,学校の各種ICTは,教員が授業で用いるためのものなのでしょうか。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/main18_a2.htm

 まあ,上図の結果は,各国の学校にどれほど教育用のコンピュータが設置されているか,ということとも関連していると思います。次回は,そうした条件面の比較を行うつもりです。

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