2013年7月13日土曜日

20代のワープア化・非正規化(2012年)

 昨日,2012年の『就業構造基本調査』の結果が公表されました。「非正規就業者数が過去最高」とか,結果のハイライトが新聞でも報道されている模様です。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm

 私は,20代の若者の変化に興味を持ちます。それをみる視点はいろいろありますが,有業者に占めるワーキングプアや非正規雇用者の比率が,前回調査(2007年)と比してどう変わったか。この点に焦点を当てようと思います。

 「100年に一度の不況」とまで形容された,2008年のリーマンショックをはじめとして,この5年間はいろいろなことがありました。こうした社会状況のなか,おそらくはワープアや非正規雇用が増えているのではないかと推測されます。とくに若者にあっては。

 上記調査結果によると,2012年10月時点の20代の有業者数は982万人です。このうち,年収が200万円に満たないワーキングプアは363万人,非正規雇用者は340万人ほどです。後者は,雇用者(役員除く)から正規雇用者を差し引いた数であり,パート,アルバイト,派遣社員,契約社員,嘱託,その他,という成分からなります。

 この数をもとにすると,2012年の20代有業者のワープア率は37.0%,非正規率は34.7%と算出されます。

 私は,6月3日の記事において,各年齢層のワープア率と非正規率の変化を俯瞰できる図をつくりました。2012年のデータを継ぎ足してみましょう。下図をご覧ください。


 1本目の矢印は,バブル崩壊直後の1992年から2007年にかけての位置変化を表しています。2本目は,最近5年間の変化です。

 90年代以降の「失われた20年」にかけて,有業者のワープア化と非正規化の進行が最も著しいのは,20代の若者であることが知られます。ワープア率は27.4%から37.0%,非正規率は14.0%から34.7%へと増加をみました。バブルの余韻が漂う90年代の初頭において,こうした変化が起きることを誰が予測したでしょう。

 ただ最近5年間に限定すると,位置変化は30代で大きいようです。私の年齢層ですが,これは分かる気がする・・・。

 以上は全国統計ですが,20代の有業者のすがたがどう変わったかは,地域によっても異なると思われます。1992年から2007年の変化は6月4日の記事でみたので,ここでは07~12年の変化に注目します。

 下表は,20代有業者のワープア率と非正規雇用率の県別一覧です。最高値には黄色,最低値には青色のマークをしています。赤色の数字は,上位5位であることを示唆します。


 先の記事でもいいましたが,若者のワープア率・非正規率は,県によって大きく違っています。高いところはすこぶる高く,2012年でみると,沖縄の20代のワープア率は65.8%,非正規率は52.2%にもなります。

 また,最近5年間の変化も一様ではありません。若者のワープア化や非正規化が進んだ県もあれば,その反対の県もあります。山梨は,双方の増減ポイントが赤字になっています。若者の好ましくない状況変化が目立つ県です。製造工場の閉鎖等,何か事情があるのかな。

一方,中国の中枢県の広島では,ワープア率,非正規率とも,この5年間で減少しています。相対差ですが,減少幅は全国で1位です。

 これは両端ですが,47都道府県の若者の状況変化を視覚的にみてとれる図をつくってみました。横軸にワープア率,縦軸に非正規率の増減ポイントをとった座標上に,47県を散りばめたものです。


 お分かりかと思いますが,右上の象限に位置する県は,ワープア率,非正規率ともに増えた県です。左下の象限にあるのは,その逆です。

 若者のワープア化・非正規化が相対的に目立つ県としては,先の山梨のほか,長野,福岡,北海道などが挙げられます。その対極には,広島や島根といった中国地方の県が位置していますね。

 この5年間で事態が好転した広島ですが,何かやったのかしらん。県のホムペをみると,ひろしま若者しごと館における「若者の就職に関する相談,情報提供,職業適性診断など多様なサービス」,若者交流館における「就職活動に踏み出せないニートの支援」,U・Iターン無料職業相談コーナーにおける「広島県への就職に関する相談,情報提供」,というような実践を行っているようです。
http://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/68/1176968923039.html

 以上が,『就業構造基本調査』から分かる,若者の状況変化のあらましです。むろん,ジェンダー差はどうか,業種間の差はどうかなど,分析を深める余地はまだまだあります。加えて,過労自殺が問題化していることから,労働時間という点も見逃せません。

 昨日アップされたばかりのホカホカの統計表をみていると,他にもやってみたいことがわんさと出てきます。今月は,『就業構造基本調査』の分析にかかりきりになるかも。まあ,それもまたよし。

 では皆様,よい連休を。