「47都道府県の子どもたち2012」プロジェクトの3回目です。前々回は発育,前回は逸脱の側面を取り上げましたが,今回は能力に注目しようと思います。
子どもの能力といっても多種多様ですが,ここでは「知・徳・体」という枠組みに依拠して,小・中学生の学力,体力,および道徳意識の3側面を計測してみることにしましょう。
まず学力ですが,文科省『全国学力・学習状況調査』(2012年度)の教科テストの平均正答率を使います。東京都でいうと,公立小学校6年生の各教科(科目)の平均正答率は,国語Aが83.5%,国語Bが58.2%,算数Aが74.7%,算数Bが62.3%,理科が62.9%です。公立中学校3年生のほうは,国語Aが75.9%,国語Bが64.4%,数学Aが63.9%,数学Bが51.3%,理科が50.0%です。
http://www.nier.go.jp/12chousakekkahoukoku/index.htm
これら2学年・10科目の平均正答率を均すと64.7%となります。各県の小・中学生の学力を総合的に測るメジャーとして,この数値を用いることにします。
体力は,2012年度の文科省『全国体力・運動能力,運動習慣等調査』の実技テストにおいて,総合評価(5段階)がAの児童・生徒がどれほどいるかに注目します。調査対象の公立小学校5年生,公立中学校2年生の児童・生徒のうち,実技の総合評価がAの者の比率(%)です。
http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/kodomo/zencyo/1332448.htm
最後の道徳意識については,2012年度の文科省『全国学力・学習状況調査』の生徒質問紙調査にて,以下の問いに「当てはまる」と答えた者の比率を出し,平均してみました。
①:学校のきまりを守っていますか
②:友達との約束を守っていますか
③:近所の人に会ったときは,あいさつをしていますか
④:人の気持ちが分かる人間になりたいと思いますか
東京都でいうと,調査対象の公立小学校6年生,中学校3年生のうち,上記の各項目に「当てはまる」という強い肯定の回答をした者の比率は,①が46.9%,②が61.0%,③が57.3%,④が73.6%です。この4つを均した59.7%という数値でもって,大都市・東京における子どもの道徳意識のメジャーといたしましょう。
それでは,前回までと同様,3指標の県別一覧表をご覧ください。右欄は,順位に基づいて出した相対スコアです。1~5位を10点,6~10位を9点,11~15位を8点,16~20位を7点,21~25位を6点,26~30位を5点,31~35位を4点,36~40位を3点,41~45位を2点,46~47位を1点。としています。
まず実値の欄にて,47都道府県のレインヂ(極差)を取り出すと,学力は69.1%(秋田)~55.9%(沖縄),体力は28.5%(福井)~9.3%(大阪),道徳意識は67.4%(山梨)~57.1%(京都),というようになっています。結構差がありますね。
次に,相対スコアの欄にて,上位県の顔ぶれをみてみましょう。1~5位を意味する10点は赤色にしていますが,学力は北東北と北陸の県で占められています。トップは秋田,2位は福井です。
しかし,この2県はスゴイですね。秋田は,学力,体力,道徳意識ともマックスの10点です。福井もそれに近し(10,10,9)。学力上位常連として注目される2県ですが,それだけではないのですね。「知・徳・体」の調和のとれた人間形成がなされていることが知られます。
表の右端は,3指標のスコアを均した値です。「知・徳・体」の能力の総合メジャーですが,上位5位は赤字の通り。秋田,福井,富山,宮崎,そして茨城です。
では,3側面の能力の平均スコアを地図化してみましょう。6点未満,6点以上7点未満,7点以上8点未満,8点以上,という4つの階級を設け,青色のグラデーションで塗り分けてみました。
濃い色は点在していますが,首都圏の1都2県,近畿圏が軒並み白色であるのがちょっと気になります。前回の逸脱マップの裏返しともとれるような・・・。都市部における人間形成の有様を点検してみる必要もありそうです。
これまで3回かけて,子どもの発育,逸脱,および能力の3側面(9指標)を診てきました。次回は,これらを総動員した総合診断をいたします。具体的には,9指標の相対スコアを使って,各県の子どものすがたを多角的に見てとれるカルテをつくってみようと思います。乞うご期待。