昨日,ある方からのリクエストで,小学校校長の女性比率マップをツイッターで発信したところ,結構RTがありました。こういう基本データが意外に知られていないのかな,と思った次第です。
考えてみれば,学校のトップの女性割合がどれほどかに関心をお持ちの方も多いでしょう。今回は,各学校段階の長の女性比率をみてみようと思います。また,過去との比較も交えることにしましょう。
なお長の女性比は,全体の女性比が高まれば,それに比例して自ずと高まります。そこであと一つのジェンダー指標として,女性教員から長が出る確率(輩出率)も計算してみます。巷では100人に1人とか1000人に1人とかいわれますが,どういう値が出てくるでしょうか。
資料は,文科省の「学校基本調査」です。小学校,中学校,高校,大学について,次の3つの数値を採取しました。(a)校長・学長数,(b)女性の校長・学長数,(c)女性の全教員数,です。bをaで除すことで,校長・学長の女性比が出てきます。bをcで割ることで,女性からのトップ輩出率が明らかになります。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
私は,1991年度と最新の2014年度の値を計算しました。各年5月時点の本務教員数をもとにしています。下の表は,結果を整理したものです。
「失われた20年」というように,90年代以降の時期は影の面が強調されがちですが,光の面もあります。男女共同参画に向けた施策が立て続けに打ち出され,施行されたことです。
その成果でしょうか。学校のトップの女性比は,以前と比したら増えてきています。小学校校長の女性比は,4.9%から19.1%へと10ポイント以上も伸びました。ただ中等教育より上では,未だに1ケタであり,絶対水準としてはまだまだ低いことが知られます。トップの女性比が一番低いのは中学校なんだな。あと,大学が中高よりも高いんだ。これも発見。
これは全体の女性割合を反映しますが,視点を変えて,女性からトップが出る確率はどうでしょう。こちらも,90年代初頭に比べて増えています(大学は別)。現在では,下の段階ほど輩出率が高いという構造です。女性からのトップ輩出率は,小学校で68人に1人,中学校で198人に1人,高校で208人に1人,大学で599人に1人なり。
ちなみに男性では,順に10人に1人,16人に1人,37人に1人,206人に1人です。トップになれる確率は,やはり男性のほうが格段に高いようです。
次に,都道府県別の値をみてみましょう。人数的に多い小学校のデータを出してみました。下表は,2014年度の一覧表です。最高値に黄色,最低値に青色のマークをしています。上位5位の数字は赤色にしました。
2つの指標はだいたい相関していますが,校長の女性比が最も高く,かつその地位が女性に最も開かれているのは,北陸の石川です。隣接する富山と福井も高い値。北陸はスゴイですねえ。一方,最低は山梨となっています。私の郷里の鹿児島も,あまり高くないな。女性比は46位,輩出率は39位か・・・。
最後に,校長の女性比(b/a)を地図にしておきます。25%以上,20%以上25%未満,15%以上20%未満,15%未満の4階級を設け,47都道府県を塗り分けてみました。
昨日,ツイッターで発信した図と同じものですが,25%(4分の1)を超えるのは,神奈川,富山,石川,福井,そして広島です。北陸3県は,ヘッドのジェンダーバランスが最もいいようですが,学力テストや体力テストでの高いパフォーマンスの一因は,こういうところにあったりして。校長会など,重要事項を審議する場において,女性の視点からの意見も幅を利かすでしょうし。
オリンピックが開かれる2020年,今から5年後には,マックスの県では50%を超えるか,全国値もせめて25%(4分の1)は超えるか。注目されるところです。
学校経営の善し悪しは,校長のリーダーシップに規定される面が大です。それだけに,校長の社会的属性の解明は,教師の社会学的研究の重要なテーマであるといえるでしょう。