2016年3月2日水曜日

妻の就業状態別の年収比較

 女性の社会進出の必要がいわれますが,労働力不足への対応といった,社会的要請だけからそれが求められるのではありません。

 個々の家庭でみても,今後は夫婦二馬力でないと,やっていけなくなるでしょう。随所でいわれていますが,男性の腕一本で家族を養える時代など,とうに終わっています。

 さて,ここで素朴な疑問。妻が働いているかどうかで,世帯の年収はどれほど違うのか。もちろん,妻が就業している世帯のほうが高いに決まっているでしょうが,その程度を数値で可視化してみましょう。

 2012年の総務省『就業構造基本調査』から,夫が有業の核家族世帯(夫婦と子のみ)の年収分布を,妻の就業状態別に知ることができます。子の年齢については制限はないようですが,学校に通っている子が大半とみてよいでしょう。*最近は,成人後も親と同居し続けるパラサイト・シングルも少なくないですが。

 私は,①妻が無業,②妻が非正規雇用,③妻が正規雇用の3群に分けて,上記の核家族世帯の年収分布を明らかにしました。下表は,全国統計です。下記サイトの表82と83から数値を採取して,作成しました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001048183&cycleCode=0&requestSender=search


 3群の世帯数のトータルは1137万世帯であり,妻無業が43%,妻非正規が38%,妻正規が19%という構成になっています。わが国の核家族世帯では,「夫有業・妻無業」の世帯がマジョリティーのようです。

 3群の世帯年収分布をみると,やはり違っていますね。妻が「無業→非正規→正規」となるにつれ,分布の山が高年収のゾーンにシフトします。妻が正社員の世帯では,最頻階級(Mode)が年収1000超です。やはり,二馬力は強し。

 階級値を使って,3つの群の平均世帯年収を計算すると,①妻無業世帯が653.1万円,②妻非正規世帯が694.3万円,③妻正規世帯が927.8万円となります。②と③の断絶が大きくなっています。妻が正規就業できるかどうかは,デカいようです。

 ちなみに,このデータは都道府県別に作ることもできます。47都道府県について,同じやり方で3群の平均世帯年収を出してみました。下の表は,その一覧です。あなたの県では,妻が働いているか(パートか正社員か)によって,核家族世帯の年収がどれほど違うか。ご覧ください。


 どの県でも,「無業<非正規<正規」となっています。これは当然ですが,その程度は県によって異なり,妻正社員世帯が妻無業世帯の何倍かを出すと,東京では1.36倍ほどですが,沖縄では1.68倍にもなります。ゴチは,この倍率が1.5倍を超える県です。

 しかし私が驚くのは,夫婦が正社員で共稼ぎしても(夫は大半が正社員でしょう),東京の「夫のみ就業」の世帯に年収が及ばない県が結構あることです。

 たとえば,私の郷里の鹿児島は,妻が正社員の世帯の平均年収は763.1万円ですが,これは,東京の「夫のみ就業」の世帯(820.6万円)に及びません。こういう県は,他にもあります。薄い青色マークをつけた県です。

 妻の正社員率マックスの島根もそうみたいですが,夫婦共稼ぎでないと,やっていけないのでしょうね。私が県別の共働き世帯率のデータを提示すると,「率が高い県は,共働きでないと子を大学にやれないからだ」という意見がよく出されますが,なるほどと思います。

 こうみると,女性の(正社員)就業チャンスの制限は,子どもの教育機会の制限(格差)にも通じる問題であることがうかがえます。よく知られているように,わが国の教育費はバカ高。子を2人以上大学にやっている家庭の4割は,年収1000万超です。
https://twitter.com/tmaita77/status/673455209901756418

 妻が正規就業することのベネフィットは,小さくないことが分かりました。