2016年3月4日金曜日

オトコが結婚するのに「収入」がモノをいう社会

 長ったらしいタイトルになりましたが,今回の記事で明らかにしたいことです。女性が結婚相手の男性に求める一番の条件は,ズバリ「収入」でしょう。

 これは,女性たちの依存気質への批判につなげるべきではなく,男女の給与格差が大きいこと,女性にすれば結婚・出産が,バリバリ働くことを妨げる足かせになること,という現実と関連して考えるべきです。

 こういうわけから,男性にあっては,収入と未婚率(既婚率)は強く相関しています。それは本ブログでも繰り返し明らかにしました。最近のものでは,ニューズウィークに寄稿した記事のグラフがありますので,興味ある方はご覧ください。下記記事の2つ目のグラフです。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2015/09/post-3882.php

 しかるに,これは日本の現実です。どの国でも,男性の収入と結婚チャンスは関連しているでしょうが,その程度は国によって異なるでしょう。予想ですが,共稼ぎが主流で女性もバリバリ働く北欧では,関連は小さいのではないかと思われます。

 今回は,その関連のレベルを国別に可視化してみようと思います。タイトルに記した,「オトコが結婚するのに,収入がモノをいう社会」はどこかです。まあ,答えは分かり切っていますが,客観的な数値を出してみましょう。

 ISSPが2012年に実施した「家族と性役割に関する意識調査」のデータを使って,25~54歳の未婚男性と既婚男性の年収分布を出し,両者がどれほどズレているかを明らかにします。下の表は,日本のデータです。
http://www.issp.org/page.php?pageId=4


 年収が判明する未婚者73人,既婚者153人の分布です。原資料では,年収区分が階級値で示されています。たとえば,年収250万とは,年収200万円台を意味します。

 当たり前ですが,両群の年収分布は大きく異なっています。相対度数をみると,年収200万未満の割合は,未婚者では54.8%と半分を超えますが,既婚者ではわずか14.4%です(黄色マーク)。年収500万以上の比重は,これとほぼ逆になっています。

 両群の年収分布のズレは,右端の累積相対度数をグラフにすることで「見える化」されます。横軸に未婚者,縦軸に既婚者の年収累積相対度数をとった座標上に,14の年収階層のドットを配置し,線でつなぐと下図のようになります。

 統計学の素養がある方はご存知の,ローレンツ曲線です。ひとまず,結婚ローレンツ曲線を名付けておきましょう。


 この曲線の底が深いほど,未婚男性と既婚男性の年収分布のズレが大きいこと,つまり,結婚に際して「収入」がモノをいう度合いが高いことになります。

 色付きの面積を2倍したジニ係数を出すと,0.535になります。年収と結婚チャンスの関連の強さを教えてくれる数値です。この結婚ジニ係数を,他の目ぼしい国についても出してみました。上記のISSP・2012調査の対象は38か国ですが,計算に手間がかかるので,現段階で算出した9か国のデータを紹介します。


 日本の0.535という値は,9か国の中ではトップです。主要国の比較では,オトコが結婚するのに,収入がモノをいう社会は,わが国であるようです。その次は,お隣の韓国。

 予想通り,共働きが主流の北欧は係数値が低くなっています。既婚女性でもガツガツ稼ぐチャンスが開かれているので,こうなるのでしょうか。中国などは,もっとそうです。この大国では,オトコが結婚するのに収入はほとんど関係ないようです。国民皆労働のお国柄が出ていますね。

 このデータをどうみるかですが,「女性は旦那を頼って,けしからん」などという解釈は筋違いです。同じ仕事をしても給与に性差がある,女性にとって,結婚・出産が仕事の足かせになる…。こういう現実を変えろ,というメッセージを発するデータと読むべきでしょう。

 同じフルタイム就業をしても,給与にジェンダー差があるのは,前にツイッターで発信したところです。
https://twitter.com/tmaita77/status/704133769087717378