困った時はお互い様,助け合いましょう。その術としては,無償で労働力を提供するボランティアのほか,お金を寄付するというのもあります。貨幣経済が浸透した現在では,後者の比重が高まっています。
子どもが難病を患い,海外で高額な手術を受けないといけない。そこで親が募金を手掛け,数千万円もの寄付が寄せられた,というケースは実際にあったこと。日本には1億2千万人の人口がいますが,その100人に1人(120万人)が50円出してくれたら,6000万円のお金が集まります。善意のチカラはもの凄い。
寄付金の額というのは,助け合いのスピリットを「見える化」するのにいい指標だと思います。ググればどっかの団体が調査した数値も出てきますが,時系列変化もみれる公的統計のデータが望ましい。
お金といったら,総務省の『家計調査』です。品目別の支出額の統計表をみたら,品目のカテゴリーに「寄付金」というのがあります。最新の2018年のデータをみると,1世帯あたりの寄付金の年間支出額は4506円となっています(単身世帯は除く)。
普通の家庭の場合,500円の寄付を年間に9回やっている計算ですね。あくまで平均なんで,額が際立って高い世帯に引きずられている可能性もありますが。
はて,この額はどう推移してきているのでしょう。今世紀になってからの推移をグラフにしてみます。
2010年までは3000円近辺を推移してきましたが,2011年には6579円と,ボーンと跳ね上がっています。理由は明確。同年3月に起きた,東日本大震災の被災者への寄付でしょう。私も,コンビニのレジの募金箱に入れさせていただきました。
翌年には元の水準に戻りますが,2015年から上昇に転じ,16年には5000円を超えます。17年には下がりますが18年にはまたアップして4506円。長らく続いた3000円付近から一段上がった水準が定着しつつあります。
返礼品目当てのふるさと納税でしょうか。あるいは,ネット募金やクラウドファンディングが増えているためかもしれません。今では,個人でもこういうことをしやすくなっていますからね。
事態にもう少し迫るべく,どういう層で寄付金の支出が増えているかをみてみましょう。1世帯あたりの年間支出額は,世帯主の年齢層別に知ることができます。最新の2018年と,10年前の2008年を比較してみます。
増えているのは,30~50代となっています。60歳以上の高齢層では減少です。20代は,お金がないためか額は少ないものの,10年間の増加率が高くなっています。
ITの素養がある若年層や壮年層の増加率が高いことから,やはりネット募金やCFの影響の線が強そうですね。余談ですが,2018年の40代(ロスジェネ)で谷ができているのも注目。
昨日,このグラフをツイッターで流したところ,ちきりんさんが「テクノロジーで時代が変わることの好例」と言われてましたが,その通りだと思います。ネットのおかげで,人々の善意を集めやすくなっている。
しからば,他の分野にもこのテクノロジーを適用したらどうか。昨日は参院選の投票日でしたが,投票率は過去最低レベルで50%を割ったそうです。それに寄与しているのは,若年層でしょう。「若者は選挙に行くな,どうせ政治に関心なんてないだろう,お前らは存在しないも同然」。こんなことを言っている,メチャクチャな煽り動画も公開されてましたが,こんなふうに挑発するだけでいいのでしょうか。
投票所に出向き,紙にマルをつけ,四角い投票箱に入れる。こういうアナログなやり方が,時代にそぐわなくなりつつあると感じます。随所で言われていることですが,ネット選挙の導入を検討すべきかと思います。上記のグラフから察せられるように,テクノロジーで事態は変わる可能性は大ありです。
寄付に話を戻すと,ITを介して善意を集めやすくなっているのは,素晴らしいことですね。人々を納得させる有意義なプロジェクトであるならば,その実行に必要な資金を簡単に集めることができます。今は大学も苦しくなっており,研究者も自前で研究費を調達しないといけない時代。自分の研究の意義を,一般人に分かってもらえるよう,分かりやすく説明できるようにならないといけない。科研費の申請書に書くような文書では,とうてい分かってもらえません。
上記の年齢別グラフをもう一度みると,寄付金の支出額が高齢層では下がっています。しかし,貯蓄はスゴイのですよね。ガッツリ溜め込んだところで,振り込め詐欺の被害に遭うこともあるし,自分が死んだあと,相続ならぬ争族(遺族の争い)を引き起こすだけです。はき出すことも考えてほしいなと思います。