2011年9月25日日曜日

発達障害児の数の推計

 障害のある子どもの教育は,現在では,特別支援教育と呼ばれています。文部科学省の定義によると,特別支援教育とは,「障害のある児童生徒の自立や社会参加に向けて,その一人一人の教育的ニーズを把握して,その持てる力を高め,生活や学習上の困難を改善又は克服するために,適切な教育や指導を通じて必要な支援を行うもの」だそうです。

 この特別支援教育の主な場は,視覚障害や肢体不自由などのハンディを負った子どもを受け入れる特別支援学校です。軽度の障害のある子どもは,通常の学校に設けられている特別支援学級で学ぶこととされています。

 しかるに,通常の学校の通常学級にも,特別な支援を要する子どもが在籍しています。いわゆる,発達障害のある子どもたちです。よく知られたものとして,学習障害(LD),注意欠陥多動性障害(ADHD),および高機能自閉症があります。新たに誕生した特別支援教育では,この種の発達障害を抱えた子どもたちに対しても,各人のニーズに応じた,特別な支援を行うこととされています。

 はて,通常の学校の児童・生徒のうち,発達障害の兆候のある者はどれほどいるのでしょうか。2002年に,文科省の研究会が行った実態調査によると,全国の公立小・中学生のうち,「知的発達に遅れはないものの,学習面や行動面で著しい困難を持っている」と判断される子どもは,6.3%いるそうです。調査対象校の児童・生徒を,担任教師が判断した結果によります。6.3%といえば,およそ16人に1人です。だいたい,1学級に1~2人ほど,発達障害のある子どもがいることになります。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/toushin/030301i.htm

 これは2002年の調査結果ですが,最近の統計調査の数字を使って推し量ってみると,どういう数字が出てくるでしょうか。文科省の『全国学力・学習状況調査』では,調査の対象となった学校に対し,「通常学級に在籍している児童・生徒のうち,発達障害により学習上や生活上で困難を抱えている」児童・生徒の数を尋ねています。最新の2010年調査の回答分布は,下表の左欄のようです。


 小,中学校とも,「1~5人」という回答が最多です。でも,41人以上いると答えた学校も,わずかながら存在します。この回答分布から,各階級に含まれる学校の数を推し量ることができます。2010年5月1日時点の小学校の数は22,000校です(文科省『学校基本調査』)。よって,発達障害児の数が「1~5人」と答えた小学校の数は,この数字に0.421を乗じて,9,262校と算出されます。同じようにして,それぞれの階級に含まれる学校の実数を出したのが,表の右欄です。

 発達障害児の数に依拠した,学校単位の度数分布が明らかになりました。この結果を使って,発達障害児の頭数を推計することを試みてみましょう。下の表をご覧ください。


 階級値の考え方に依拠して,各階級の発達障害児の数を一つの数字で代表させてしまいます。「1~5人」の階級の学校には,中間をとって,一律に3人の発達障害児が在籍しているものとみなします。「6~10人」の階級に含まれる学校は,一律に8人の発達障害児が在籍している学校であるとみなします。以下,同様です。このような仮定をおくと,発達障害児の数を計算することが可能です。小学校の場合,以下のようになります。

 (0人×4,356校)+(3人×9,262校)+…(80人×88校)=164,384人です。

 同じようにして,中学校の発達障害児の数を割り出すと,54,076人となります。合算すると,218,460人です。2010年5月1日時点の小・中学生数に占める比率は,2.1%です。2002年の全国調査の結果(6.3%)のちょうど3分の1になりました。なお,小学校と中学校で分けて出すと,小学校の出現率は2.4%,中学校は1.5%です。

 うーん。やっぱり,幅のある階級を中間の階級値に置き換えるという操作が乱暴すぎたかなあ。ひとまず,最新の公的調査の数字を,一応の統計的手続きに基づいて加工した結果,2.1%という数字が出てきたことを報告いたします。およそ48人に1人です。

 まあ,問題のある推計方法ではありますが,推計のやり方を一度定式化しておくと,いろいろな可能性が開けてきます。文科省の『全国学力・学習状況調査』の結果から,学校の種別(国,公,私)や都道府県別に,発達障害児の出現率を出すことも可能です。また,過去の調査結果を加味することで,時系列の変化も観察することができます。

 次回は,そうした応用作業の第一歩として,発達障害児の出現率を都道府県別に明らかにしてみようと思います。

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