2012年2月5日日曜日

同棲率

広辞苑によると,同棲とは,「一つ家にいっしょに住むこと」,「特に,法律上の婚姻関係にない男女が同じ家に住んで生活を営むこと」という意味だそうです。

 「結婚もしてない男女が居を共にするなんて」と,かつては蔑みの眼差しを向けられていましたが,今日ではそういうことはなくなってきています。交際中のカップルが相手を試すために同居する,配偶者と別れた熟年男女が互いに寄り添うなど,いろいろなケースを想起できます。このような行いに対し,蔑視の眼差しを向けることはできますまい。

 西欧では同棲が非常に多いと聞きますが,わが国ではどうなのでしょう。同棲世帯(者)の量的規模を把握してみようと存じます。

 総務省統計研修所は,『国勢調査』のデータを特別集計し,同棲世帯の数を明らかにしています。ここでいう同棲世帯とは,「非親族の男女同居世帯」だそうです。それによると,2000年の同棲世帯数は172,800世帯,2005年のそれは236,500世帯です。この5年間で1.4倍に増えています。
http://www.stat.go.jp/training/2kenkyu/sanko3.htm


 上表は,一般世帯に占める同棲世帯の比率を算出したものです。2000年は3.7‰でしたが,2005年では4.8‰となっています。千世帯あたり4.8世帯ということですから,約分すると,およそ208世帯に1世帯が同棲世帯ということになります。

 次に,同棲者にどういう年齢の者が多いかを明らかにしましょう。まあ,若年者が多いであろうことは予測できますが,数字を出してみようと思います。

 上記サイトの参考表2-2から,2005年の同棲者の年齢構成を知ることができます。私の年齢層(35~39歳)は,男子の同棲者では9.9%,女子の同棲者では7.0%を占めています。男女とも,同棲者の数は同棲世帯の数と同じですから,この年齢層の同棲者数は,以下のようにして計算できます。

 男子は,236,500 × 0.099 ≒ 23,414人です。女子は,236,500 × 0.070 ≒ 16,555人です。両者を足して,35~39歳の同棲者数は39,969人となります。このようにして,各年齢層の同棲者数を計算しました。下表の左欄には,各年齢の同棲者数を掲げました。

 右欄の数字は,同棲者の数をベースの人口で除した出現率です。2005年の30代後半人口は約874万人ですから,この年齢層の同棲者出現率は,先ほどの実数をこれで除して,4.6‰と算出されます。


 まず同棲者の実数をみると,2005年では,20代の後半が112,338人と最も多くなっています。予想通り,若年層です。右欄の出現率をみても,ピークはこの年齢層にあります。2005年の20代後半の同棲者出現率は13.6‰です。74人に1人という計算になります。5年前は116人に1人でした。率が上昇しています。

 なお,この5年間において同棲者出現率の伸びが最も大きいのは40代前半のようです。2010年の12月17日の記事でみたように,最近,30~40代の離婚率が上がってきています。配偶者と離婚した者同士が同居するケースが多いことと思われます。

 同棲者の配偶関係がどうなっているかをみてみましょう。下図は,2005年の同棲男性の配偶関係構成を図示したものです。男女で差はないので,男性のデータのみ掲げています。上記サイトの参考表5-2の統計を使って作図しました。


 未婚者が全体の7割を占めますが,その次に多いのが離別者で17.4%を占めます。同棲といったら,若年者に固有のものと思われがちですが,今後,同棲者の高齢化が進んでいくものと推測されます。

 ところで,同棲男性の中には,有配偶という者もいます。つまり,奥さんがいるにもかかわらず,他の女性と同居している人です。実数にすると,236,500 × 0.065 ≒ 15,373人。これって・・・

 それはさておき,今後,わが国においても,同棲という形態が増えていくものと思われます。このようなライフ・スタイルを選択した人間が,不利益を被ることのないような制度の構築が考えられて然るべきでしょう。婚姻関係にない男女の間に生まれた子(婚外子)に対する差別や偏見の問題も看過できません。

 婚外子の統計は,厚労省の『人口動態統計』に出ているのではないかしらん。こちらも分析してみようと思います。