2012年2月23日木曜日

教員給与の相対水準(続)

1月29日の記事では,公立学校の教員の給与が,同学歴(大卒)の労働者全体と比してどうかを明らかにしました。その結果,教員の給与は,比較対象より低いことが判明しました。

 しかるに,そこで比較したのは月収です。ボーナス等の各種の手当を含めた年収で比べたら,違った結果になるかもしれません。公務員は,この種の手当の支給が,民間に比して多いと思われます。

 また,年齢構成にも注意する必要があります。先の記事では,性別と学歴という要因は統制したのですが,年齢を揃えた比較は行っていません。厳密な比較を期すならば,同性,同学歴,さらには同年齢の者同士を比べることが求められるでしょう。

 このような欠陥をクリアするには,かなり細かい統計が必要ですが,厚労省の『賃金構造基本統計調査』に,それがあることが分かりました。この資料には,職種別・年齢層別に,①「決まって支給する」月収額と,②「年間賞与その他特別給与額」が掲載されています。①を12倍した値に②を足せば,年収額が出てきます。

 職種の中に「高校教員」というカテゴリーがありますので,このデータを,大卒労働者全体のものと比べてみます。また,大企業(従業員数1,000人以上)に勤める大卒労働者の数字とも比べてみようと思います。一口に大卒労働者といってもいろいろでしょうが,大企業には,いわゆるランクの高い大学の出身者が多いと推察されます。出身大学のランクも考慮すると,高校教員との比較対象としては,大企業の大卒労働者が望ましいと思われます。

 なお,2010年の上記厚労省調査のサンプル構成によると,大企業勤務者が大卒労働者全体に占める比率は,男性で42.4%,女性で38.6%です。およそ4割。ごくわずかのエリート集団というわけではないことを申し添えます。

 それでは,高校教員,大卒労働者,そして大企業大卒労働者という3グループについて,年齢層別の年収額を比較してみましょう。下表は,2010年の上記厚労省調査から作成した,男性の統計です。上述のように,年収=(月収×12)+諸手当 です。


 私の年齢層(30代後半)の年収をみると,高校教員は653万円,大卒労働者は613万円,大企業大卒労働者は715万円,です。高校教員の年収は,大卒労働者全体よりは高いのですが,大企業の大卒労働者よりは低くなっています。

 この順位構造は,他の年齢層でも同じです。表の右端には,高校教員の年収額を1.0とした指数を掲げていますが,大卒労働者では,20代後半を除いて,指数が1.0を下回っています。大企業の大卒労働者の場合,指数は軒並み1.0以上です。

 各種の条件を考慮した,厳密な比較対象(大企業大卒労働者)と比べると,高校教員の給与は高くはないようです。これは男性の結果ですが,女性だとどうでしょう。2月8日の記事では,女性教員の給与は,民間よりかなり高いことを明らかにしました。はて,条件をより厳密に揃えた比較でも,同じ結果になるでしょうか。

 下図は,男性と女性に分けて,年齢層別の年収額の折れ線グラフを描いたものです。年収曲線とでも名づけておきましょう。


 男性では,年齢を問わず,大企業大卒労働者>高校教員>大卒労働者です。年齢を上がるほど,差が開いてきます。しかし女性では,様相が違っています。20代までは男性と同じ順位構造ですが,30代以降,高校教員の給与が最も高くなります。40代以降,その差はぐんぐん広がり,定年間近の50代後半では,高校教員と大企業大卒労働者では,年収に180万円ほどの差が出るに至ります。

 女性では,年齢や出身大学のランクといった要因を考慮しても,教員給与は高いと判断されます。しかるにそれは,民間において給与の男女差が激しいためです。上図から明らかなように,教員では給与の性差が小さいのに対し,他のグループでは,それが甚だ大きくなっています。教員給与の高さではなく,民間の女性労働者の給与が低いことに注視すべきかと思います。

 男性の場合,各種の条件を考慮した年収比較でみても,「教員給与>民間給与」という通説は支持されませんでした。1月29日と2月8日の記事と,ほぼ同じ結果になったことをご報告いたします。

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